TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「資金源強奪」*深作欣二監督作品

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監督:ふかさくきんじ
脚本:高田宏治
音楽:津島利章
出演:北大路欣也、梅宮辰夫、室田日出男、川谷拓三、太地喜和子、渡辺やよい、小泉洋子、芹明香、名和宏、安倍徹、今井健二、山城新伍、松方弘樹

☆☆☆☆ 1975年/東映/92分

    ◇

 『仁義なき戦い』シリーズ全5部作の実録群像路線が終わったあとの、1974年から1977年の間に深作監督は10タイトルの作品を撮っている。なかでも1975年は、2月公開の『仁義の墓場』4月公開の『県警対組織暴力』といった大傑作がつづき、6月に公開された本作も優れた犯罪映画の1本となっている。

 チンピラの清元武司(北大路欣也)は、暴力団羽田組幹部・国吉(名和宏)の命令で敵対するやくざ組織の組長を射殺し、8年の刑を務め上げた。出所した武司は煙たがる組関係者に対し、やくざの足を洗うと告げる。実は、武司は刑務所生活中に羽田組の金を強奪する計画を立てていたのだ。
 仲間は刑務所で知り合ったふたりの銀行強盗。ひとりは爆弾製造の腕を持つ別所哲也(川谷拓三)。もうひとりは妻子持ちの貧乏不動産のおやじ小出熊吉(室田日出男)。3人は羽田組が主催する花会を襲撃し、3億5千万の大金を奪い去った。
 羽田組は停職中の大阪府警第4課の刑事・熊代文明(梅宮辰夫)を雇い、3人の行方を追うのだが…………。

    ◇

 欲得ずくな男と女が入り乱れるストーリーを、スピーディな展開で92分を痛快に掛け抜けるクライム・ムーヴィーの傑作である。

 現金強奪は前半20分ほどであっさり成功する。果たして、物語はここからが本番で、案の定仲間割れ。追う者と追われる者の思惑がぶつかり合い、騙し騙され、奪い奪われるといった二転三転するサバイバル・ストーリーが軽妙に語られていく痛快さと、全編に流れる軽快なマーチ風メロディが60年代の泥棒映画、特に『黄金の七人 レインボー作戦』のスコアを連想させるところにも洒落っ気を感じさせてくれる。
 そしてこの作品は、監督名のクレジット表記を平仮名で《ふかさくきんじ》としたことでも有名。あまりに過酷な撮影スケジュールと低予算に対する会社への抗議だと云われるが、実録路線の呪縛から解き放された深作監督が肩の力を抜き、クールなハードボイルド調とコミカルな泥棒映画的な趣をチャンプルーした作品への、大いなる遊び心と受け取った方が相応しいだろう。

 「帰っておくんなはれ」
 主人公のハードボイルドぶりはフランスのフィルム・ノワールというよりも、強面のリー・マーヴィンやジョン・カサベテスのようなタフさを見せるのだが、心底本音を見せないダーティ・ヒーロー北大路欣也は、仕草や口調に独特の色気が滲み出ているのだからまさに嵌り役。昔の女(太地喜和子)に未練を持たないクールさと、行きずりの女(小泉洋子)に見せる粋な行いがなんとも格好いい。

 「警察官が拳銃使うて怒られるのは、日本だけやで」
 対する悪徳刑事の梅宮辰夫は、北大路とは対照的に若い女房(渡辺やよい)に振り回される男の滑稽さをコミカルに演じるが、ところどころで格好いい男になったりするところがイカしている。クライマックスの北大路との対決ではさすが主役を喰った。煮ても焼いても喰えないでっかい存在感である。

 同じように、脇を固めた登場人物のキャラクターも楽しい。
 牛乳瓶のようなレンズの眼鏡をかけた川谷拓三と、借金まみれの小心なおっさん室田日出男のコンビネーションは、当時一番ノリに乗っていただけあってピカイチ。ふたりとも報われないところが魅力なのだ。
 友情出演したおネエ言葉の松方弘樹と競艇予想屋の山城新伍。「前科いっぱん人」のギャグは山城新伍らしい笑いの取り方で、ワンシーンながら場を盛り上げる。

 梅宮の若い女房役の渡辺やよいのハイテンションぶりは、後年『いつかギラギラする日』('92)の荻野目慶子の原型となるのだろう。男にだらしなく、梅宮に高級マンションを買ってもらうことしか頭になくて、マンションのチラシを「3LDK、みなみむき、ベランダ、にっとうよし」と読む女。すかさず梅宮が「ひあたり、って読むんやけどな」とは、なんとも絶妙な間だ。
 この渡辺やよいも、短い出番ながら重要なヒロインとなる小泉洋子も、川谷拓三と絡む芹明香も、グッとくるイイ女に見えるてしまうのは、ひとりウェットな芝居をする太地喜和子がいるからだろう。
 北大路欣也と名和宏に翻弄される太地喜和子は、その艶かしさで情感たっぷりに“おんな”ぶりを見せているのだが、最後、北大路を追ってコケるシーンに哀切感を漂わせている。

 そして、日本のクライム・ムーヴィの中にあってとても爽快感あるラストシーンは、ドライでライト感覚で突っ走ってきた映画だからこその結末で、最後に観客をも騙される楽しさにあふれている。

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