TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「暴走パニック 大激突」*深作欣二監督作品

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監督:深作欣二
脚本:神波史男、田中陽造、深作欣二
音楽:津島利章
出演:渡瀬恒彦、杉本美樹、室田日出男、小林稔侍、川谷拓三、渡辺やよい、風戸裕介、三谷昇、林彰太郎

☆☆☆ 1976年/東映/85分

    ◇

 70年代の中盤、深作欣二監督が撮った犯罪アクション映画の傑作『暴走パニック 大激突』は、奇抜なストーリーながら結構練られた脚本だった『資金源強奪』に対し、3つの話が交差するストーリーやアクションはかなり大雑把だ。しかし『バニシングポイント』や70年代のパニック&カーアクション・ムーヴィーに倣えと企画された映画だけに、面白さでは他に引けをとらないカースタント映画となっている。カーアクションとして「東洋レーシング・チーム」の名前が一枚看板でクレジットされたのも初めての作品。
 3人連名の脚本はヴァイオレンスの深作欣二、エモーショナルな田中陽造、アナーキーな神波史男といったところだろうか。
 
 スナックのバーテン渡瀬恒彦と店の常連小林稔侍は、ブラジルを夢見る2人組銀行強盗。その手口は鮮やかで、行内に入るなり拳銃をぶっ放し、警察が駆けつけるまでの短時間で集められるだけの札束をかっさらう。名古屋・大津・京都で仕事をしたあと、神戸の仕事を最後にいよいよブラジルへ高飛びする計画だ。
 強盗に入られる銀行名が「第一勧業銀行」とか「住友銀行」とか、実名(当時)で画面に出てくるのには驚く。
 深作欣二お得意の手持ちカメラで描かれる荒々しい銀行襲撃は、『いつかギラギラする日』のショーケンたちにも同じ画があったが、渡瀬恒彦が銀行のカウンターを飛び越えたりする姿は、やはりショーケンたちオヤジ軍団には無理だったよな。クライマックスのカーアクションはもちろんのこと、当時の渡瀬恒彦はスタントマンを使わず、全シーンに自分の身体を張っていた(大体が東映の大部屋俳優の皆さんはそうだったが)。ただそのスタントなしが徒となり、翌年の『北陸代理戦争』では瀕死の重傷を負うことになったのだが。

 さて最後の銀行強盗は失敗に終わり、逃走中に小林稔侍が轢死する。映画は始まってまだ20分。
 逃走する渡瀬を追うのは、昼間から婦警の渡辺やよいとSEXしている落ちこぼれ警官の川谷拓三と、小林稔侍の兄を名乗る室田日出男が渡瀬の強奪金を奪おうと執拗に追ってくる。出世した同僚エリート刑事曽根晴美(!)にアゴで使われたり、不満たらたらと自転車で渡辺やよいのアパートにしけ込む愛嬌たっぷりの川谷は絶品である。

 逃げる渡瀬にまとわりつくのが混血児の杉本美樹だ。渡瀬が働くスナックで、市役所戸籍係を免職になった三谷昇と杉本美樹が痴話喧嘩したことで知り合うのだが、毛皮を見ると万引きしたくなる癖があり、いつも豆スープばかり作る少し頭の足りないオンナ。杉本美樹の虚無感に満ちた表情がいい。渡瀬に思いを募らせる表情が切なく哀れ。そんな杉本を捨てることも出来ない渡瀬だ。

 ドラマの中盤は田中陽造らしい情念の世界。高級スポーツカーを傷つけ自分で修理する屈折した自動車修理工(風戸裕介)と同性愛者でサディストの整形外科医(林彰太郎)との愛憎劇や、三谷昇の見事な変態ぶりエピソードが挿入され、いよいよ渡瀬と杉本の逃避行へと繋がっていく。
 自殺未遂した杉本のために、急遽、住友銀行を襲う渡瀬。しかし室田に待ち伏せされ、川谷も同僚を見返すためにひとりでパトカーを発進させる。ここから終盤、20分ものカーチェイスが始まる。
 杉本が渡瀬を待つ郊外のレストランには林彰太郎を殺した風戸裕介がいて、川谷のパトカーは民間人の車に衝突して、風戸裕介も跳ね飛ばされる。

 「あんな警察の暴走、許しとったらアカンやないけ。警察からゼニ取ったる」

 タクシー運転手やホステスやヤクザが乗った車や、果ては暴走族や国営放送の中継車といった群衆が入り乱れてのバトルは、かつて主人公とパトカーの追いかけっこを群衆が遠巻きにしていた『赤い鳥逃げた?』とは大きく違い、深作らしい権力への抵抗となって爆発する。
 衝突・炎上と、群衆が警官たちに襲いかかっている間に、渡瀬と杉本はモーターボートでゲッタウェイ。
 テロップがブラジルで日本人男女の銀行強盗の噂を告げて終わる。いやはやハチャメチャな映画だが、十二分に楽しめる。

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Comment

showken-fun says... "ギラギラは"
無理したもんだから、千葉さん骨折しちゃった、ってショーケン言ってましたね。
ショーケンも病み上がりで、アクション作品とはなかなかいきませんでしたね。
前々から、この作品が「いつかギラギラする日」の元ネタ(とは言わないのか 笑)と聞いているので見てみたいですが。なかなか機会がありません。
2010.03.20 22:16 | URL | #- [edit]
mickmac says... "Re: ギラギラは"
showken-funさん どうもです。

ショーケンをはじめメジャー級を揃えてしても、70年代の深作映画の疾走感にはかなわなかったですが、それでも、あの個性派揃いを束ねた『いつギラ』は、一級の犯罪映画でしたね。

>この作品が「いつかギラギラする日」の元ネタ(とは言わないのか 笑)

いや、その通りですよ。
この『大激突』と、先に紹介した『資金源強奪』の2本を見てみれば納得するはずです。
ショーケンのアウトローぶり、そのクールさとしぶとさとは、北大路欣也さんの色気に通じるものがあります。
両作品とも長い間ソフト化されていませんでしたが、2008年に待望のDVD化がされました。
レンタルもされていますので、どこかで見つけて、是非ご覧ください。
2010.03.21 23:09 | URL | #- [edit]

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