TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「一年でいちばん暗い夕暮れに」ディーン・クーンツ



 クーンツらしからぬ詩的なタイトルで目を惹く新刊は、“オッド・トーマス・シリーズ”の間にリリースされた“犬”への愛に満ちたサスペンス・ストーリー。

 ドッグ・レスキューとして虐げられた犬の保護施設を運営するエイミーが、ある日、恋人の建築家ブライアンとともに不思議なゴールデン・レトリーバーを助ける。自ら2頭のゴールデン・レトリーバーを飼っているエイミーは、ニッキーと名付けられたその犬も仲間に加えた。
 その夜帰宅したブライアンは、突然ニッキーの肖像画を描く衝動に駆られ、一昼夜にも及びデッサンする手が止まらなくなるという奇妙な体験をする。
 同じ頃、邪悪な男女一組がある計画を実行に移そうとしていた。
 そして、孤児だったエイミーの隠された過去を掘り起こそうとする二人の探偵や、謎の殺し屋らが現れるのだが…………。

    ◇

 ストーリーはダークな人物設定満載のチェイス物として楽しめるのだが、ラスト数頁は驚異の展開。読んだものたちの読後感を混乱させる強者クーンツの面目躍如というか、とにかく、凄いと云う言葉しか形容できない。クーンツ節を堪能できる快作である!

 エイミーとブライアンと犬のニッキーら善に対し、彼らに絡んでくる悪党たちのキャラクターが相変わらずイカレていて面白い。
 恐ろしくヴァイオレンスなムーンガールとハロー。ヴァーチャル世界に嵌る探偵ヴァーノン・レスリーと若い相棒ボビー。徹底した非情ぶりを見せる殺し屋ビリー・ピルグリムと葬儀屋ジュリエットとの短いエピソードなど、ここ10数年のクーンツらしい比喩的表現が盛り込まれた無意味な会話の数々が冴えている。

 バラバラと思われる登場人物が終盤につれてひとつの環となるのだが、ただ、収拾のつかないエピソードが放りっぱなしの山となるところはご愛嬌。ご都合主義なところがクーンツらしいのだからここは目をつぶるとして、一気呵成ノンストップで突っ走るクーンツのストーリーテリングは、やはり凄いのだ。
 クライマックスは、サム・ペキンパーの映画のスローモーションを思い浮かべるシーン描写で、迫力と、哀切と、そして……………混乱。
 常にクーンツらしさを忘れない最終章まで、心して読め。と云ったところだろう。

    ◇

一年でいちばん暗い夕暮れに/ディーン・クーンツ
訳:松本依子、佐藤由樹子
【ハヤカワ文庫】
定価 1,029円(税込)


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