TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「透光の樹」*根岸吉太郎監督作品



監督:根岸吉太郎
脚本:田中陽造
原作:高樹のぶ子
撮影:川上皓市
音楽:日野皓正
出演:秋吉久美子、永島敏行、平田満、吉行和子、寺田農、田山涼成、戸田恵子、うじきつよし、村上淳、松岡俊介、唯野未歩子、高橋昌也

☆☆☆ 2004年/日本・シネカノン/121分

    ◇

 原作は、谷崎潤一郎賞を受賞した高樹のぶ子の同名小説。

 ドキュメンタリー番組の制作会社社長の今井 郷(永島敏行)は、25年ぶりに金沢の鶴来に立ち寄った。かつて取材をした高名な刀鍛冶・山崎火峯(高橋昌也)を訪ねるが、火峯は寝たきりとなり、離婚して出戻った娘の千桐(秋吉久美子)が看病をしていた。郷の脳裏には高校生だった千桐の姿が浮かぶ。娘と老人を抱え、借金に追われる毎日を送っている千桐にたいして、郷は援助を申し出る。
 「あなたの身体が欲しい」と云う郷に躊躇をしながらも、「わたしを買ってください」と申し出を受ける千桐。逢瀬を繰り返すごとに、ふたりの身体は求め合わずにはいられないものとなっていく。
 そんなある日、郷に末期となる大腸癌が見つかる…………。

    ◇

 秋吉久美子と永島敏行が濃厚なセックスシーンを繰り広げるR-18指定のこの作品は、萩原健一の降板劇もあり大いに騒がれたものだが、なんと言っても主演女優秋吉久美子に尽きる。

 萩原健一と共演した『夜汽車』('87)以来に見る秋吉久美子。
 その存在感は、70年代の藤田敏八の3部作『赤ちょうちん』『妹』『ヴァージン・ブルース』('74)からして大胆な脱ぎっぷりで他を圧倒していたし、この作品と同じ根岸吉太郎が監督した『ひとひらの雪』('85)での艶かしさは久美子31歳の時。
 しかしこの作品の久美子は50歳だ。
 とてもその年齢には見えない肌とプロポーションで、このあと何度も全裸と性愛のリアルな表情をさらけ出すのだが、その美しさとキュートな雰囲気は、あらためて同年齢の他の女優との格差を見せつけるものだ。

 主演男優云々など、どうでもいい。
 確かにショーケンだったらと想像をしてみると、デカダンな男の色香では永島敏行など到底足もとにも及ばないだろうが、あの時期のショーケンは声帯の問題もありやはり無理だったと思う。
 無骨な永島敏行も何だかなぁと想像はしたものの、神代辰巳の『噛む女』('88)や石井隆の『人が人を愛することのどうしようもなさ』('07)など見ていると、今は彼でもアリだなと思えてくる。強面ながら繊細さも合わせ持つ不思議な男優である。

 日野皓正のトランペットが流れる以外には自然音しか聞こえないくらい静かな進行と、心に残るいくつかの台詞が文学作品の格調を保っている。

 「この辺り寒いから、一気にくるんです。春が……。 だから、みんな狂っちゃう」

 平泉寺のカタクリの花を見せる千桐が、郷にお金を渡して初めて抱かれるシーン。何年もひとりでいた女の身体の初々しさを、秋吉久美子の表情は見事に応えている。

 最後の逢瀬をする民宿でのゆったりとした夕食シーンが、実はとても艶かしい。
 甘エビを食する永島敏行の台詞と、久美子が発する「すけべ………」という一言。その久美子の表情はとても妖艶だ。

「この右の耳は、ぼくの耳で、右の乳房は、ぼくの右胸で、この右目で見ているものは、ぼくの目で見ている」

 鄙びた駅舎と二両電車の中での最後の別れは、中年男女の狂おしいまでの熱情が伝わってくるシーンだが、大げさな音楽で感情を高ぶらせるようなこともなく、淡々と進んでいくところが根岸監督の巧さ。

 「あなたの身体の半分は僕なんだ。勝手に殺したりしないでくれ。」

 情念だけで生きようとしている久美子に、永島敏行が投げかける言葉の冷静さが切ない。

 ただ、「老い」と「性」がテーマになっていることで、永島が逝ったあと15年後の久美子の恋慕の濃さを表すラストシーンは、今時の59歳にしては老け過ぎたメイクの久美子に興醒めする。

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Comment

showken-fun says... "No title"
「脚本がいい」と絶賛していたショーケン。
降板の一報を目にしたとき、最初に浮かんだのは「声か」ということでした。
この降板は、今後を占って余りある・・・ショーケン自身に大打撃を与えていたと推察しています。
それから1年、大きな事件にまで発展していく・・・本当に地獄絵図を見たようでした。

そんなこんなで見そびれている作品です。
見たいような、見たくないような・・・・
2009.12.12 16:59 | URL | #- [edit]
mickmac says... "Re: No title"
showken-funさん

>「脚本がいい」と絶賛していたショーケン。

そうでしたか………かなり深い恋愛劇ですからね

>降板の一報を目にしたとき、最初に浮かんだのは「声か」ということでした。

当時、結構冷めた気持ちで降板劇の一報を受け止めていました。
結果的に、あの状態だったのなら出演しなくてよかったと思います。

ショーケンが起こした事件は庇うことができないですが、降板劇に関して問題は、スポンサーとのことが大でしょう。これからも起きるだろう、日本映画界を巣食う問題ですよね。

>見たいような、見たくないような・・・・

この作品は、どこをどう観ても秋吉久美子の映画です。
密かに観るような作品ですから、あまりお勧めもできない……ってか(笑)。
2009.12.14 00:26 | URL | #- [edit]

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