TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

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「無理」奥田英朗



 「最悪」「邪魔」につづく奥田流クライム・ノヴェル第3弾。
 閉塞感に包まれた地方都市を舞台に、鬱屈した暮らしを強いられ追い詰められていく人々の視点で語られる群像劇である。

 町村合併で生まれた北国の街・ゆめの市。

 県庁職員だが出向でゆめの市の社会福祉事務所でケースワーカーとして勤務する32歳の相原友則は、生活保護の不正受給者や身勝手な市民に嫌気がさしている。妻の浮気で離婚した彼は、ある日、大型パチンコ店で主婦売春の現場を目撃し、思わぬ深みにはまっていく……。

 県立高校2年の久保史恵は、退屈なこの町を出て東京の大学に進学し、イケメンで金持ちの彼氏をつくることを決めている。ある日、予備校の帰りに何者かに拉致され………。

 暴走族上がりの加藤裕也は、詐欺まがいの商品を売り付ける23歳のサラリーマン。生活保護の不正受給をしていた別れた妻から1歳になる息子を引き取らされるが、先輩に触発され、成績をあげて社長に認められることに面白さを感じ始めてきた………。

 夫と離婚、子供たちも独立して一人暮らしをしている堀部妙子は、スーパーの保安員として毎日万引き犯を捕捉している48歳。生活は苦しく、孤独な彼女は新興宗教にすがっている………。

 父親の地盤を引き継いだ市議会議員の山本順一は、地元の土地開発会社の社長でもある45歳。県政に進出するつもりで、父親の代から癒着のある業者と産業廃棄物処理場の建設に奔走している………。

    ◇

 相変わらずリアルな人間描写で読み応えのある奥田作品は、5人の登場人物の不条理な出来事が、それぞれに増幅していく経過に目が離せなくなる。

 ただ、ドツボに嵌っていく様、そして、諦めていく人間の心情が、読んでいて辛くてしょうがない。どうしようもなく救いのない話で、暗い展開である。
 生活保護、老人介護、非正規雇用、悪徳商法、新興宗教、引きこもり………問題は蓄積されていくばかりで、どこにも出口が見えないまま転がっていく。
 身勝手な市民や万引きする人間に正義を振りかざすことで優越感を感じる人間の心の空洞化。宗教にすがったり、他人を貶めながら生きていても、ひずんでしまった社会の中では立ち位置は変わらず、どこまでいっても序列から抜けることができないのが現実なんだろう。

 小説は、唐突に終わる。その解決のない終わり方だからこそ、社会の問題点が浮き彫りにされたと思う。
 このラストシーンをプロローグにして、そこに集結した5人の暮らしを遡り直せば、『無理』というタイトルの深さと、装丁の“交差するタイヤ痕”の意図に気付くのだろう。 
 
    ◇

無理/奥田英朗
【文藝春秋】
定価 1,995円(税込)


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Comment

Iris says... "No title"
私も先日読み終わりました。

面白かったというか、リアルでした。リアルすぎて辛くて、凄くて、怖くて・・・
ラスト、或る事で人々が結びつく。あの、終り方好きです。
2009.11.13 23:14 | URL | #- [edit]
mickmac says... "Re: No title"
Irisさん

ホント、身に迫ると言うか、身にしみる話でしたね。
とてもじゃないけど、他人事ではないような。今の世の中では、身近に転がっていても不思議ではないエピソード。
読んでいて、痛かったです。ぼくも辛かったな。

あのラスト、唐突な終り方が不自然と賛否両論があるようですが、ぼくもあれで正解だと思います。嫌いじゃない終り方です。
2009.11.14 00:42 | URL | #- [edit]

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