TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「終着駅」白川 道



 「終着駅」と云う言葉からは「哀愁」とか「郷愁」といった、何か物悲しいものを感じる。
 特にこの時期は、奥村チヨが歌った歌詞とメロディがそこはかとなく浮かんでくるだろう。

 この人生の機微を感じさせる「終着駅」という言葉、実は、ぼくが産まれる前にはなかった。イタリア映画の名作『Stazione Termini』に付けられた邦題『終着駅』が起原だ。映画のタイトルから一般的に使われるようになった新しい言葉で、実に巧いネーミングである。映画は、アメリカ人の人妻とイタリア人青年との離別を描いたメロドラマだった。

 結城昌治の小説「終着駅」にはこんな記述がある。
 「終着駅なんて、以前は終点といっていたのに映画の影響だな、きっと。『終着駅』という映画、あれはいつごろ見たのだろう。ローマ駅構内のようすを憶えている。混雑している構内で男女が別れるシーンだ。監督がデ・シーカで、主役はモンゴメリィ・クリフトだった。けれど女優の名前は、顔は浮かんでいるが、名前が思い出せない。あの女優、なんといったっけ、確かにあの女優だったけれど…………。」
 結城氏の体験をもとに、敗戦直後の焼跡にうごめく人たちの“生”と“死”を描いたこの小説は、最終章の〈現代〉の時代背景に使われていた。

    ◇

 さて、白川道の「終着駅」。
 アウトローとして暮らしてきた男と盲目の少女との純愛を、ハードボイルド・タッチで描いた極上の恋愛小説だ。
 もう随分と前に読んだのだが、最近、この小説の映画化の話を耳にしたので、引っぱり出してみた。

 盲目のかほると出会い、私は、命を張った愛の始発駅に降り立った。〈惹句より〉

 男の名は岡部、49歳。十代の終わりに父親と恋人を死に追いやり、以来やくざの世界に足を踏み入れた。関東を制覇する広域暴力団の幹部にまでなった彼は、虚無に包まれた生活をしながらも死地をくぐり抜け、いつしか人は彼のことを“死に神”と囁いていた。
 ある日、亡くした恋人に似たかほるという盲目の娘に出会った岡部。娘くらいに年の離れたかほるの懸命に生きている姿に触れ、自分の何かが変わっていく………。

    ◇

 高倉健と池上季実子の『冬の華』('78)を彷彿とさせる物語である。「足長おじさん」を下敷きにした倉本聡脚本の『冬の華』は、やくざと彼が殺した兄貴の娘の成長を見守りながら、男が再び死地に出向く話。
 ムズ痒くなるような展開が同じで、そう云えば石井隆監督の『黒の天使 vol.2』('98/主演:天海祐希)も同部類。結構こういった話が好きなのだ。

 「終着駅」のタイトルからその結末を想像できるものの、その終末までの男の生きざまに感情移入できれば、涙あふれること間違いない。
 センチメンタリズムの極致といえるくらい甘くあま~い話だが、男が男らしく……命を賭けてまで守りたいものがあるオトコの生き方に泣くだろう。
 男とて、清々しい涙を流したいものなのだ。

 俳優Hと脚本家I氏が企画するこの「終着駅」の映画化だが、アウトローの設定といい、ピュアな恋愛ものとしても、いまの彼にはお似合いな題材といえる。
 映画の企画ほど当てにならないと前にも書いた。某氏が誰なのかをいま書いてしまうと、何だか企画が断ち消えそうだから書くことを控えておこう。
 正式に発表され檜舞台に上がるまで、相手役の女優を想像しながら、楽しみに待っている。

    ◇

終着駅/白川 道
【新潮社】 定価 1,995円(税込) 2004年10月初版
【新潮文庫】定価 860円(税込)

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Comment

s-f says... "No title"
未読なんですが、ああ、読みたい。いや、読みたくない(笑)。ちぢに乱れるこの思い(爆)。

・・・mickmacさんがレビュー書いてくださったので、気持ちが落ち着きました。
2009.11.07 01:45 | URL | #- [edit]
mickmac says... "Re: No title"
s-fさん

早速レヴューしてみたのですが………

>ああ、読みたい。いや、読みたくない(笑)。

よ~く、お気持ちが判りますぅ。

脳内キャスティングするのもイイかもよ(笑)。
2009.11.07 23:52 | URL | #- [edit]
愛車との出会い says... "No title"
ブログを読ませていただきありがとうございます。
来年も良い年になりますように。
2009.12.25 16:44 | URL | #UzsS.eyA [edit]

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