TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「新宿乱れ街 いくまで待って」*曽根中生監督作品

shinjukumidaremachi.jpg

監督:曽根中生
脚本:荒井晴彦
音楽:樋口昌之
主題歌:「きめてやる今夜」内田裕也
出演:山口美也子、神田橋満 、 日夏たより、中田彩子、 絵沢萠子 、堀礼文 、五條博 、青木真知子 、あきじゅん 、結城マミ、 清水浩一 、大矢甫 、影山英俊 、渡辺護 、内田裕也(ノンクレジット)

☆☆☆☆ 1977年/日活/81分

    ◇

 『赫い髪の女』『もどり川』『嗚呼!おんなたち 猥歌』『噛む女』『盗まれた情事』など神代辰巳監督作品や、『遠雷』『時代屋の女房』『Wの悲劇』『ひとひらの雪』『ヴァイブレーター』など、名作・傑作を世に送りだした脚本家荒井晴彦のデビュー作。日本版『グリニッチ・ビレッジの青春』('76年 ポール・マザースキー監督)のような荒井氏の自伝的作品でもあり、全共闘世代の挫折感も滲んでいる。

 新宿ゴールデン街を舞台に、吹きだまりにたむろする若者たちのほろ苦い哀感を描いた青春群像は、センチメンタルな感覚と男の情けなさが身に沁みる傑作青春物語である。

 女優志願のミミ(山口美也子)は、姉(絵沢萠子)が営む新宿ゴールデン街の小さなバーで働き、脚本家志望の沢井(神田橋満)と同棲中。
 酒場には様々な青春の姿がみえる。近くのバーで働く通称“淫乱姉妹”(日夏たより、中田彩子)と、ふたりの恋人でフリーの助監督正平(堀礼文)と小説家志望のシゲ(大矢甫)、自殺マニアのノコ(青木真知子)やカメラマン見習いのヒロシ(影山英俊)。
 劣等感と嫉妬、そして挫折感。愚痴ばかりの危なっかしい夢を吐露する若者たちが、酒を飲んで語らい、いちげんの客の無粋な話には鼻白み、泣いたり、笑ったり、ケンカしたりの日々。ある日、ミミに映画出演の話が持ち上がり、ミミと沢井の間に大喧嘩。ミミは密かに堕胎手術を行い、沢井は別の女と寝る。
 新宿に別れを告げる夜、閉店パーティーのバーのカウンターでストリップを踊るミミの精一杯の笑顔と、女を寝取られた若い男に街角で刺される沢井の呻き。

 「痛えなぁ~、女のことなんかで………くだらないじゃないか」
 
    ◇

 夢をくすぶらせ、反骨と自虐、気怠く退屈な日々を生きる男と女。身悶え、もがき苦しむ男には傷があり、女の傷も深い。

 自由劇場で鍛えてきた山口美也子は主人公の健気な生き方を鮮烈に、そしてキュートに好演。
 厚い唇がいい。
 「もういや~、こんなんじゃ嫌だよっ。わたし若いんだからーっ」と泣き叫ぶ顔がいい。
 「青春て凧だと思うんです。自由自在に空飛んでるみたいだけど、本当は糸がず~と伸びていて。女が凧なんですね。あの、凧って糸が切れるとどうなっちゃうんですかね。」女優への道を決め、吹っ切った女の顔がいい。
 ロマン・ポルノにおける山口美也子の代表作と云っていい。素晴らしい存在感である。

 沢井がバーで客にからまれる場面。
 「あの上映運動の総括はどうなっているんです。カッコいいことアジるだけアジっといてさ、何が企業映画粉砕だよ。いまじゃ、企業映画に涎垂らしてる助平な無節操野郎じゃないか。自分の女を売り飛ばしてでも運動続けるべきだ」と罵られても「あの頃は若かったんだ」としか反論できず、ミミには「言われっぱなしで我慢して………バカよ……」と云われるこのシーンは、荒井晴彦の自虐的ユーモアだろう。

 酒場で無粋な話をする客として内田裕也がワンシーンに登場。
 「…………この街は青春列車。誰もが乗り合わせ、出世した奴から降りてゆく。」
 ユーヤさんらしい口調で、長い台詞をシナリオ通りには喋らない。

 そのユーヤさんの「きめてやる今夜」がタイトルバックに使われ、ゴールデン街には百恵ちゃんの「イミテーション・ゴールド」、ジュリーの「勝手にしやがれ」、岡林信康の「がいこつの唄」が流れる。
 自殺を繰り返す女が口ずさむ「時の過ぎゆくままに」、彷徨う男女の背景にはショーケンの「酒と泪と男と女」、石川セリの「八月の濡れた砂」は時代性をもってシラけた若者たちへの讃歌となる選曲だ。

 

スポンサーサイト

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://teaforone.blog4.fc2.com/tb.php/588-189a7e1c