TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「0課の女 赤い手錠〈ワッパ〉」*野田幸男監督作品



監督:野田幸男
原作:篠原とおる
脚本:神波史男、松田寛夫
音楽:菊池俊輔
主題歌:「0のバラード~女の爪あと」杉本美樹
出演:杉本美樹、郷暎治、室田日出男、三原葉子、荒木一郎、小原秀明、菅原直行、遠藤征慈、岸ひろみ、森祐介、関山耕司、戸浦六宏、丹波哲郎

☆☆☆★ 1974年/東映/88分

    ◇

 『女囚さそり』の原作者篠原とおるの劇画『0課の女』の映画化で、警視庁捜査課のいずれにも属さない裏警察として、法を無視して行動する特殊任務の女捜査官が主人公。任務遂行のためなら殺しもいとわず、自らの肉体を武器に犯罪者を追い詰めていくクールビューティーなヒロインである。

 女捜査官・零(杉本美樹)は、黒人の友人エミィを殺し外交官特権で逃げていた白人をホテルに誘い、抵抗する男の首を赤い手錠で締め男の裸の下半身に銃弾を浴びせ射殺し、所轄の留置場に入れられる。
 同じ頃、神奈川刑務所を出所した仲原(郷暎治)は仲間を引き連れカップルを襲撃し、ゲバ学生の男の方を撲殺し、女は場末の淫売バーに売り付けようと連れていく。バーのママ(三原葉子)が、その娘が次期総理候補の南雲(丹波哲郎)の娘だと告げたことで、男たちは南雲に身代金3,000万円を要求する。

 南雲は、警視官(戸浦六宏)と特命担当の日下(室田日出男)に極秘のうちに娘を救出し、証拠隠滅のため犯人全員を抹殺するよう言い放つ。日下は留置場の零に人質救出を命令。身代金の受け渡し時に仲原の逃亡を助けアジトに潜入した零だったが、身代金代わりの紙屑の束を見た他の男たちが零を警察のイヌではないかと疑いリンチを加える。が、口は割らない零。逆に1億を要求してみろと煽る。

 零の素性を知っていたビッグ・バッド・ママを鮮血のバスタブに沈め、次の取引現場に罠を張り犯人の仲間を葬る零。そして、人質を逃がそうとした弟に激高した仲原は、残忍にも弟を撲殺してしまう。
 追い詰められた犯人たちは、監視下のバーを抜け出し横須賀の米軍ハウスに押し入るが、狂人となった仲原に恐れをなした仲間のひとりが逃げ出し、日下らに捕まり残虐な拷問を受ける。
 
 クライマックスは、無人のドブ板横丁での銃撃戦。マカロニ・ウエスタンよろしく砂塵舞う代わりに大量の紙クズの風塵の中、零の赤い手錠が宙を舞い、犯人ふたりと口封じのために零と人質を抹殺しようとする日下の息の根を止める。
 権力を守るためなら自分の娘まで抹殺しようと画策した南雲。命令通りに任務を遂行した零は、無事に人質を生還させマスコミの前に曝した。南雲の政治生命を断った零は、警察手帳を破り捨てるのだった。

    ◇

 B級プログラム・ピクチャーとして勢いづいていた「スケバン」映画も徐々に翳りを見せてきた70年代半ば、東映ピンキー映画の最終章としてスクリーンに放たれたハード・ヴァイオレンスなアナーキー映画の傑作である。

 どこまでも無表情でクールな杉本美樹は何もアクションを起こさない女優。演技ベタを隠す演出ではあったろうが、『女囚さそり』と同じように沈黙するヒロインにすることでオーラを発しているのだから、これは女優としての存在感以外の何ものでもない。これぞ杉本美樹なのである。
 
 赤い警察手帳と赤い手錠、真っ赤なコートに緑のミニのワンピースといった派手な衣装がどこまでも劇画世界なのだが、杉本美樹以外の俳優たちのハイパーテンションも、この映画の見どころ。
 
 郷暎治のエキセントリックな演技は凄すぎ。弟を殺してしまった後の号泣姿は悲哀より狂気。室田日出男の大きく眼を剥き、ある時はグっと押さえる表情のオーヴァーアクトこそ虚構の世界に相応しいと見せつける俳優ふたりである。
 三原葉子は毎度のことながら場をかっさらっていく。『女囚さそり』での隈取りメイクも見事だったが、ここでは何とも下品なだけの商売女。ド派手な衣装とウイッグで豊満な身体を見せつけるが、その後ろ姿はエロい。
 当時、杉本美樹の事務所の社長だった荒木一郎は、全編に出演しているのに台詞はワンシーンだけ。サングラスにヒゲ面で顔を隠し、ワザと変装しているのかというような姿で印象を残すあたり、役者である。

 さて、『さそり』に続けとシリーズ化を目論んでいただろう東映だったが、杉本美樹はこの作品後に一時映画界を去り途切れてしまった。カムバック後は、ATG作品『祭りの準備』('75)と『黒木太郎の愛と冒険』('77)で、助演ながら無常感を漂わす女優として目を惹く存在だったのだが、1978年に完全引退してしまった。



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