TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「竜の道 飛翔篇」白川 道



 おまえは光をつかめ! おれは暗黒を支配する。

 これから、おまえとおれは、太陽と月だ。
 おまえは常に世間の脚光を浴びる生き方をしろ。
 おれは夜の世界に君臨する。
 暗く、どこまでも深い底なし井戸のような夜。
 昼の太陽が輝いてこそ、夜はその深みを増す。
 深みを増した暗さは、やがては漆黒の輝きを帯びるだろう。 〈惹句より〉

 赤ん坊の時に廃品回収業者の家に捨てられた双児の兄弟竜一と竜二は、世間からは蔑まれ養父母からは虐待を受けて育った。この悲惨な環境のふたりには、天がこの世に生きる意味を与えたかのような、ずば抜けた頭脳を授けていた。兄弟は、クソのような人生にオサラバするために完全犯罪を決行し、頭脳ひとつで世間をひざまづかせる人生を歩み出した。
 弟の竜二は運輸省のキャリア官僚になり、兄の竜一は己自身を抹殺し裏社会の力を味方につけていく。
 ふたりの秘めたる復讐は、某巨大企業を潰すこと。
 双頭の竜の修羅の幕が上がった……。

    ◇

 これは面白い! 単行本568ページを一気に読了した。

 ハードボイルド作家白川道の新作はクライム・ノヴェルの第1章。著者がもっとも得意とする投機株や先物などの相場に蠢く人間模様である。

 兄弟に唯一手を差し伸べていた家族が巨大企業の犠牲になり、残された盲目の少女を救うために兄弟二人の復讐が始まるのだが、その目的のために必要な資金づくりや、対等に渡り合うための地位や権力を得る話がじっくり描かれていくので、かなりの長篇になる作品と思われる。

 まずこの第1章は、バブル景気に入る前の1980年代を舞台に、兄の竜一が裏社会で権力を握るまでが描かれる。
 やくざ組織まで操る頭脳明晰な竜一は、目的を完遂するためには邪魔な人間を次々と抹殺する徹底した非情な主人公なのだが、その破滅的美学に感情移入させられる。

 弟の竜二は第2章で詳しく描かれるだろうから今回の出番は少ないが、盲目の少女・美佐や、竜一たち兄弟と同じ匂いを漂わす美女・咲などの登場が今後の展開に関して興味深いところ。裏社会の絶対的権力として後ろ楯となる曽根村の迫力もいい。これは『ゴッドファーザー』のマーロン・ブランドってところ。読んでいる時は北大路欣也を思い浮かべていた。
 竜一にハメられた幾人もの人間たちも、次篇にどんなかたちで登場するのか楽しみである。
 
 株の仕手戦など素人には想像できない部類の話でありながら、読んでいて凄いリアリティを感じられるのは、著者の経歴を知っているから生まれてくるものか。
 49歳で作家デビューした無頼派の白川道は、投資顧問会社を経営していた時代には豊田商事などに関わったり、逮捕され服役の経験もある作家。
 50億100億の金が簡単に動く世界を、こんなにもリアルに描くことができる作家はそうそういないでしょう。
 白川道の経験や生きざまが集約された一冊である。

    ◇

竜の道 飛翔篇/白川 道
【講談社】
定価 1,995円(税込)

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