TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「つばくろ越え」志水辰夫



 『小説新潮』に掲載されていた志水辰夫の時代小説第3弾となる「蓬莱屋シリーズ」が先月発刊された。

 幕末を疾走するクールな飛脚屋たちの物語で、第一話のみ掲載時に読み、単行本になるのを愉しみにしていた連作だ。 

    …………………

 燕の通う尾根を ひとり疾駆する影 飛脚問屋・蓬莱屋シリーズ開幕!

 売りは秘密厳守とスピード
 あえて難路を選び 単独で列島を横断する脚力
 火急の金品を守り抜く状況判断力
 修羅場をくぐった男たちを束ねる蓬莱屋には
 そこを見込んでの注文が絶えない

 時は風雲急を告げる幕末
 行く手を阻む影に目を凝らしながら
 峠を越える男たちの物語四話
  (惹句より)

    …………………

 江戸時代の飛脚には大名飛脚と町飛脚のふたつがあり、一般の武士や商人とか町民は民間の飛脚問屋を利用していた。街道や宿場の整備によって二人ひと組で宿駅と呼ばれる区間を引き継ぎながら走るのが普通だろうが、目的地までたった一人で走りきる“通し飛脚”と云う専門職もあったらしい。

 ここに登場するのが、その“通し飛脚”の者たち。
 たった一人の道中で大金を運んだりするのだから、途中、賊に襲われないよう街道を外れ、独自の路を走ることになる。それはかなり過酷だ。だからして、ここにハードボイルドなストーリーが生まれる。これまで、小説の題材などにはあまり取り上げられなかった職業だからして、新鮮な人物像として描かれている。
 請け負った“ワケアリ”を抱え走る主人公、彼に絡む登場人物として蓬莱屋の親方勝五郎も、行き先ざきで関わる者たちも、実に魅力的だ。

 道中、山間の情景描写、木々の匂い、鄙びた村あいの空気や彩り、人間たちの息遣いは、まさにシミタツ節である。
 
    ◇

つばくろ越え/志水辰夫
【新潮社】
定価1,785円(税込)
2009年8月初版


スポンサーサイト

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://teaforone.blog4.fc2.com/tb.php/567-ecd0f105