TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「女教師 私生活」*田中登監督作品



監督:田中 登
脚本:安部真理
出演:市川亜矢子、風間杜夫、梢ひとみ、島村謙次、鶴岡修

☆☆☆ 1973年/にっかつ/73分

 本文は、単行本 【映画監督・田中登の世界】に掲載された作品紹介を加筆修正したものです。

    ◇

 一般公募による女性ライターの脚本で撮られた“女教師”もの(シリーズとなる1作目となる)は、70年代に流行した自分自身に忠実に生きる女性像を、性の欲望に浮遊する孤独な女性教師の奔放でスキャンダラスな日常(性生活)としてクールに描いている。
 初々しい風間杜夫と、存在感で魅せる梢ひとみが光っている。

 高校教師のなおみ(市川亜矢子)は、ひとり暮らしの寂しさを癒すために教え子の啓二(風間杜夫)と同棲している。若い啓二をペットのように扱い、身体を貪ることで孤独を癒している。愛欲生活に嫌悪を抱きながらも離れることができない啓二。そんな啓二に想いを寄せている同級生の和子(梢ひとみ)は、自暴になる彼の心を癒すために処女を捧げた。
 なおみに後ろめたさを感じる啓二だが、なおみは淫らな本能のままに同僚教師(島村謙次)や啓二の兄(鶴岡修)との関係を始める……。

    ◇

 映倫審査の最も厳しい時期の作品でボカシの程度は滑稽なほど広範囲にわたるのだが、特異な映像美を好む田中監督は、登場人物の心象風景を数々のモチーフとシュールな画面構成で楽しませてくれる。
 風間杜夫と梢ひとみの初体験シーンで天井を漂う色とりどりの風船も、流れるアグネス・チャンの「ひなげしの花」も、シーツに残された血の上を滑空する模型飛行機も、映画的風景として観客を飽きさせない。
 なかでも、花々に囲まれた緑地公園のなかで行われる市川亜矢子と風間杜夫のファックシーンは奇異を極める。大量の桜吹雪が舞うなか、ふたりを見つめる赤い風船を持った少女の目の前には、画面半分を覆う真っ赤なボカシが大きく揺れている。官憲を嘲笑うかのようにシュールな画面である。

 ホテルで同僚とセックスをする市川亜矢子と、同時間軸で市川亜矢子の部屋のなかでフルーツを食い散らかす風間杜夫をシンクロさせた画面構成は、ふたりが躰を重ねる以上に官能的である。

 そして物語は、風間杜夫の感電自殺未遂と失踪となる。
 「死にたいとか、殺したいとか、殺されたいとか、どれにも当てはまらない女なの」と、うそぶく市川亜矢子。

 街を彷徨い渋谷駅前の鳩の群れのなかに佇む市川亜矢子には、『白い指の戯れ』の伊佐山ひろ子の姿がだぶって見えるものの、その眼差しの先にあるものが、決して若くない女の孤独だということでは大きな違いがある。

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