TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「霧の旗」*西河克己監督作品

監督:西河克己
脚本:服部佳
原作:松本清張
出演:山口百恵、三浦友和、三国連太郎

☆☆☆★  1977年/東宝/95分

    ◇

 松本清張原作のミステリーで、映像化は映画とドラマで4回あるが、これはやはり1977年の山口百恵版だろう。
 アイドル山口百恵が8作目に出演した映画が社会派ミステリー。アイドル映画の範疇を超える出来上がりで、百恵映画の中では一番好きだ。(もちろん原作が好きだと云うこともあるが……)

 東京の有名な弁護士大塚欽三(三国連太郎)のもとに、九州から柳田桐子(山口百恵)という女性が尋ねてくる。桐子の兄正夫(関口宏)が金貸しの老婆殺害で無実の罪を着せられているという。大塚は高額の弁護料を理由に弁護を断り、失意の中桐子は故郷に帰ることになる。
 その後、死刑判決が下った正夫が刑務所内で病死。
 桐子からの恨みがましい手紙でそのことを知った大塚は、何かこころに感じるものがあり、九州から事件の記録を取り寄せ独自に調べてみると、やはり冤罪の可能性を見つけることになった。
 一方、上京をした桐子は、銀座のバーで働く同郷の信子(児島美ゆき)と同居しながら、同じバーで働いていた。信子が恋焦がれているマダムの弟健次(夏夕介)は、大塚の愛人・河野径子(小山明子)が経営するレストランで働いていて、健次は径子を愛していた。
 ある夜信子から健次の尾行を頼まれ、あるマンションに赴いた桐子は、そこで健次の死体と怯える径子を見つける。径子から証人を頼まれる桐子はその場で快諾はするものの、ある考えが頭に浮かぶ………。
  
 松本清張の作品は犯人探しよりも日常の中から生まれる犯罪、人間のこころの中に潜む闇の部分に焦点を当てたものが多く、この原作も、孤立した人間の影の部分をじっくり描いている。

 山口百恵の役者としての資質も本物で、今、二十歳そこそこのアイドルがここまでの役を演じることができるかどうか。この時百恵は確か18歳。銀座のホステスと場末のホステスを演じ分ける風格さえある山口百恵だ。
 雑誌記者の阿部(三浦友和)が場末のバーで働く桐子を救い上げるかのように雨中でプロポーズをするが、桐子はそれを振り叩き、彼からもらった唯一の信頼関係を保つ手紙を静かに破りすてるシーンは、復讐だけに生きる女の情念の炎を百恵の眼のなかに見ることができる。

 それにしても桐子の恨みが凄過ぎる。同じ苦しみを弁護士に与え失脚させるまでの要因が、たったひとりの兄を愛していただけのことなのか。拘置所にいる径子は生きていて、愛する兄は死んでしまっている不公平さだけなのか。 ストーリー(原作)としての問題点はある。たったひとりの女が企てる理不尽な制裁では弁護士もおちおちと仕事を選べないし、大体、地方の警察とはいえ、単純な捜査ミスで早々と死刑判決がでるのかどうか……。しかし、それがどうした、と言えるだけの説得力もある。

 ちなみに、もう一本ある映画化は1965年の山田洋次監督の倍賞千恵子版。 
 テレビドラマ化は、1997年に仲代達矢と若村麻由美の子弟共演と、2003年に古谷一行と星野真理で制作されている。
 それぞれ、女の恨みの怖さが十分に表れた作品だった。 若村麻由美は美し過ぎるが貫禄はGood。

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