TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「黄金の腕」



The Man With The Golden Arm
監督:オットー・プレミンジャー
原作:ネルソン・アルグレン
脚本:ウォルター・ニューマン、ルイス・メルツァー
音楽:エルマー・バーンステイン
タイトル・デザイン:ソウル・バス
出演:フランク・シナトラ、エレノア・パーカー、キム・ノヴァク、グレン・マクギャヴィン、アーノルド・スタング、ロバート・ストラウス

☆☆☆☆ 1955年/アメリカ/119分

    ◇

 50年代当時のハリウッドでは、絶対的タブーとされていた麻薬問題を初めて題材にした作品で、麻薬中毒者を主人公に薬物の恐ろしさを描いた社会派ドラマ。
 二枚目歌手のシナトラがシリアスな演技派として認められ、「地上より永遠に』('53)につづきアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた作品でもある。

 映画は、エルマー・バーンスタイン作曲のクールなモダン・ジャズの主題曲と、“腕”を幾何学模様にデザイン化した印象的なタイトル・バックではじまる。
 映画音楽にジャズが使用された初めての作品であり、映画のなかで流れる楽曲も、暗黒街シカゴの雰囲気を歯切れのいいリズムで伝えているのが素晴らしい。中学の頃にNHKテレビではじめて見て、ジャズが格好イイと思った作品でもある。
 グラフィック・デザイナーのソウル・バスが手がけたタイトル・デザインも秀逸。ソウル・バスは、この作品以外にも『北北西に進路を取れ』『サイコ』『めまい』『ウエスト・サイド物語』と、強烈な印象を残しているものが多い。

 フランキー・マシーン(フランク・シナトラ)は、仲間内から“黄金の腕を持つ男”と呼ばれるポーカー賭博のディーラーだったが、麻薬中毒に陥り長い入院治療を終え、シカゴに帰ってきた。
 アパートでは、フランキーの飲酒運転事故がもとで不自由な身体になった妻のゾシュ(エレノア・パーカー)が、車椅子の生活で待っていた。フランキーはそんな妻のために、入院中にドラムの練習をし、ミュージシャンとしてまともな生活を送るためにとプロダクションへの紹介状を持っていた。しかしゾシュは、フランキーが“黄金の腕”を棄て、今さら新米ドラマーの貧乏な暮らしになるのに反対だった。実は、ゾシュの脚は完治していて、負い目のあるフランキーに金を稼がせるために嘘をついているのだ。稼ぎのいいディーラーに復活させようと画策する、そんな女だった。

 美しいエレノア・パーカーは、本来なら男をつなぎ止めておきたい女の気持ちが痛々しい悲劇のヒロインだが、裏の顔を映画が始まってすぐに観客に明かしてしまう展開によって、身勝手でわがままなイヤな女として描かれる。そこは、大女優としての貫禄で演じている。

 ふたたび、フランキーのカード配りの生活がはじまる。そんな生活のなかで、唯一の憩いは大衆キャバレーで働くモリー(キム・ノヴァク)。だが、不自由な妻を捨てモリーを愛することはできない。

 キム・ノヴァクは当時22歳。愛人関係にあったシナトラのお陰で出演したとはいえ、ハリウッドが作りあげたミューズとして、妖艶な姿とハスキーな声に魅了される。

 苛立ちと不安が“黄金の腕”のフランキーの手に震えをもたらすようになり、これが最後の一度だけと、麻薬売人のルイ(グレン・マクギャヴィン)の許を訪れる。
 賭博の胴元(ロバート・ストラウス)から大きな仕事を請け負い、一昼夜をかけたゲームがはじまるのだが、フランキーにとって次の日は、念願のドラマーへのオーディションが控えている。
 裸電球ひとつぶら下がった部屋で、小さなテーブルを囲んだマラソン・ポーカーのシーンは、疲れ切った男たちの熱気を、クローズアップの多用で臨場感を生み出している見せ場のひとつだ。

 過酷な時間がフランキーにヘマを導き、金がないことで麻薬の注射を拒否したルイを殴り倒してしまう。あげくの果て、オーディションは失敗。フランキーは、麻薬を買う金を求めて家を飛び出していく。
 入れ違いにルイが仕返しに部屋にやって来た。突然ドアを開けた部屋には、両足で立っているゾシュ。彼女の秘密をバラすと脅迫するレイを、ゾシュは階段の踊り場から突き落とし殺してしまった。嫌疑はフランキーにかかった。

 モリーだけが頼りのフランキーは、もう一度生き返ることを決意し、彼女の部屋で苦しい荒治療をはじめる。
 禁断症状に苦しむフランキーの壮絶な姿は迫力があり、クスリを求めるあまり何もない部屋で無理からにゴムバンドで腕を縛ってしまう姿は、見事にジャンキーの生態を捉えている。暴れ、泣き叫び、震え、眠る。その繰り返しの恐怖。ワンシーン・ワンカットによるシナトラの熱演である。

 献身的な愛情を見せるモリーがいたことで、禁断症状を収め、正常な意識に戻ることに成功したフランキーは、妻のゾシュに別れを告げに帰る。
 車椅子から思わず立ち上がり彼を追いかけるゾシュは、戸口でフランキーを追ってきた刑事の姿を確認し、身を翻しベランダから外へ飛び降りるのだった。

 原作では、フランキーがルイを殺し自殺する話になっているらしいのだが、それではあまりに悲惨すぎる。映画はハリウッドらしく、立ち直った主人公と恋人が街を去るところで終る。ただし、決してハッピーエンドではない。いつまた麻薬に溺れる日々がやってくるのか永遠にわからないのだから………。

スポンサーサイト

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://teaforone.blog4.fc2.com/tb.php/558-24c0ac1a