TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「やがて復讐という名の雨」



MR 73
監督:オリヴィエ・マルシャル
脚本:オリヴィエ・マルシャル
音楽:ブリュノ・クーレ
出演:ダニエル・オートゥイユ、オリヴィア・ポナミー、カトリーヌ・マルシャル、フランシス・ルノー、ジェラール・ラロシュ

☆☆☆☆ 2007年/フランス(日本未公開)/125分

    ◇

 『あるいは裏切りという名の犬』のオリヴィエ・マルシャル監督と主演のダニエル・オートゥイユが再び組んだサスペンス・ミステリーは、“贖罪”をテーマに、前作以上に暗く重たいフィルム・ノワールに仕上がった傑作である。
 この作品も、マルシャル監督自身が経験した実話が元にあるという。

 ある事故で娘を亡くし、妻が植物人間になったことで自分を責め酒浸りになった初老の刑事シュナイデル(ダニエル・オートゥイユ)は、ある夜酩酊して不祥事を起こしてしまい、刑事課から夜間警務の勤務に回されるが、担当だった連続猟奇殺人事件の捜査を独自に続行し犯人を追い続けている。
 25年前に両親を惨殺されたジュスティーヌ(オリヴィア・ポナミー)は、収監されている犯人が模範囚として仮釈放されることを耳にして、不安な日々を送っている。ある日ジュスティーヌは、その25年前の異常殺人者を逮捕したのがシュナイデルだと知る。
 一方、連続猟奇殺人事件の犯人を見つけ出したシュナイデルは、刑事課の相棒ジョルジュと逮捕に出向くのだが…………。

    ◇

 開巻、モノクロの暗い画面のなかで「神なんかクソだ。いつか殺してやる。」と呟く初老の男。暗転後、ひどく酔ったその男シュナイデルがバスのなかで煙草をくゆらし、ジャジーでアンニュイな歌声が流れるタイトル映像から惹き込まれてしまう。
 そして、初っ端の猟奇殺人現場のリアルな死体や、収監されている全身刺青の老レイプ犯の不気味さにも目を見張るものがあるが、全体には『あるいは裏切りという名の犬』同様にスタイリッシュな映像で紡がれており、派手な銃撃戦もなく、人間の内面を深く掘り下げていく作劇で重厚さを醸し出している。

 原題の『MR73』とは、70年代のフランス警察が使用していた銃器マグナム口径のMR73リボルバーのことを指しており、確かにこの原題には深い意味が含まれているのだが、前作につづきハードボイルドだからこその叙情的な邦題も秀逸である。
 重要なところで雨が降り出し、また降っている。
 ハードボイルドは、センチメンタルなのだ。メロドラマなのだ。

 この映画、どこか石井隆の作品を連想する。オリヴィエ・マルシャル監督の作風が、ローアングルで映る風景、雨の情景や画面の色調、流れる空気感、そして人間に対するクールで非情な視線……。どれも同じ肌合いでぴったりした感覚を得る。

 どこにも正義はないと絶望しているジュスティーヌと、シュナイデルの上司でありかつての不倫相手のマリーのやるせなさ。このふたりの女とシュナイデルとの関係を、饒舌すぎない演出で見せるところは見事。説明過多の映画が多くなった昨今、こうした寡黙な映画を理解できない観客も増えたのだろうな。
 マリー役のカトリーヌ・マルシャルは監督の奥方で、素晴らしく存在感がある。

 さて終盤。友を失い、警察内部の行いに誇りをも奪われたシュナイデルが見せる行動には、人生の不条理にきっちりカタをつけるという意味で強いカタルシスを覚える。
 冒頭のシュナイデルの言葉に重なるように、修道院のキリスト像にかかる血しぶきが印象的だ。

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