TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「あるいは裏切りという名の犬」



36 Quai des Orf?vres
監督:オリヴィエ・マルシャル
脚本:オリヴィエ・マルシャル、フランク・マンキューソ、ジュリアン・ラプノー、ドミニク・ロワゾー
音楽:エルヴァン・ケルモンヴァン、アクセル・ルノワール
出演:ダニエル・オートゥイユ、ジェラール・ドバルデユー、ヴァレリア・ゴリノ、アンドレ・デュソリエ、フランシス・ルノー、カトリーヌ・マルシャル、ミレーヌ・ドモンジョ

☆☆☆☆ 2004年/フランス/110分

    ◇

 1980年代のフランスで実際に起こった話をベースにしたフィルム・ノアールで、原題をパリ警視庁の所在地「オルフェーヴル河岸36番地」と名付けられたこの作品は、ふたりの刑事の宿命の物語で、邦題も見事な傑作ハードボイルド。そして、監督が元刑事というのも、ある意味凄い。

 パリ警視庁のBRI[探索出動班]は荒くれ者の集まりだが、主任警視レオ・ヴリンクス(ダニエル・オートゥイユ)の下で厚い信頼関係に結ばれたチーム。一方、BRB[強盗鎮圧班]は主任警視ドニ・クラン(ジェラール・ドバルデユー)の厳しい統制下に置かれるチームで、何かとヴリンクスらと対立している。
 かつて親友だったふたりは、同じ女性カミーユを愛し、カミーユはヴリンクスを選んだ。以来ふたりの友人関係は崩れ、宿敵という名の繋がりになっていた。
 マシンガンを使用した現金輸送車襲撃事件が多発。ふたりの確執が泥沼状態となる。
 ヴリンクスが情報を得るためにある一線を越えてしまったことで、クランの卑劣な行動を呼び、ヴリンクスが逮捕され収監。そして、ヴリンクスの愛する妻カミーユも、犯罪捜査に執拗なクランによって命を落とすことになった………。
 7年後。刑務所を出たヴリンクスは、かつての仲間たちの情報によってカミーユの死の真相を知り、彼の復讐が始まるのだが………。

    ◇

 荘厳な音楽に貫かれ、イエローオーヴァーな映像に悲劇と宿命がリアルに描かれる、寡黙な映画である。
 登場人物たちに余分な台詞がなく、そのひとつひとつに人物造型を形作る洒落たスパイスが効いている。フランス映画を感じる重要なファクターである。

 現金輸送車を襲撃するシーンや中盤の警察と強盗団の銃撃戦も見事だが、例えば、ヴリンクスの知り合いの元娼婦が暴行を受け、その報復をする森のシーンなどは、かつてのジャン・P・メルヴィル作品に流れていたフィルム・ノアール然とした寒々しさが見られ、印象深いシーンとなっている。そして、彼らのこの行為が、後々大事な伏線となる。
 
 その元娼婦でバーを経営するマヌーを演じるのが、本当に久しぶりにスクリーンに登場したミレーヌ・ドモンジョだ。66歳という年齢に往年の可愛らしさが影を潜めたとはいえ、年齢に見合う貫禄はついており、ただただその存在感に魅了される。
 出所後のヴリンクスがマヌーのマンションを訪ねるのだが、その時のドモンジョ様の迎え方や、ヴリンクスの気持ちをよく理解する友人関係の描き方が見せ場。
 2005年第30回セザール賞において主演男優賞(ダニエル・オートゥイユ)と助演男優賞(警視庁長官を演じたアンドレ・デュソリエが渋い!)に並んで、ドモンジョ様が助演女優賞を獲得しているおまけつきだ。

 このドモンジョ様をはじめ、脇を固める場所にどれだけ魅力的な登場人物がいるかで作品のトーンも決まるのだが、これに関しても申し分ない配役となっている。
 特に愛すべきはヴリンクスの部下のティティ。全編通して実に魅力的なキャラクターであり、重要な役回りになっている。誰もが驚愕する結末に絡んでくるのだから、最後まで目が離せない存在だ。
 ついでに、ワンシーンだけ登場するマヌーの亭主で前科者のクリストに扮しているのが、オリヴィエ・マルシャル監督自身だという。

 映像も素晴らしい。
 カミーユと情報屋が車で走る田園風景と、その後のフラッシュのような残光が残酷なほど美しい。

 そしてラスト。クランがヴリンクスに投げかける言葉から、かつてのふたりの関係が浮かび上がり、哀切の結末を迎える。


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