TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「真夜中の男」結城昌治

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 かねてから惚れていた女と一夜を共にした元刑事の久保は、昨晩のことが忘れられず女のアパートを訪ねた。しかし、そこで見たのは全裸の女の死体だった。
 被害者の佳代子は刑事時代に面倒を見ていたチンピラ隆夫の姉で、昨晩偶然に再会し、誘われるまま関係を持ったのだった。隆夫とのことで理不尽にも免職になった久保は、警察に通報せず逃走したことなどで、無実の罪を着せられ7年の実刑を受けてしまう。
 満期の7年後。出所した久保は、惚れた佳代子が本当はどんな女だったのか知りたいと、7年前の関係者を次々と訪ね歩く………。

    ◇

 男は破滅に追い込まれた魔性の女であっても、その存在を忘れることができない性を背負っているもの。これは、幻の女ならぬ謎の女“ファムファタール”を探る冷たい男の執念の話だ。

 訪ね歩く佳代子の関係者たちは一応に口が堅く、佳代子と関係した男たちも、佳代子が勤めていたバーの女たちも、彼女のことを良く云う者はいない。しかし、一度喋りだすと佳代子のことを話さずにはおけないくらい、佳代子の幻影に縛られている。その関係者たちの会話で、佳代子の真の姿が浮かび上がってくる構成が見事で、久保に関わるすべての者たちの人物造型が素晴らしい。
 それは刑務所で知り合った三村という男にも言えることで、ほんの少ししか登場しないその人物像がしっかりと目に浮かんでくるし、久保との関係に余韻を残すあたりが非常に巧いのだ。

 明らかになる事件の真相も、佳代子の暴かれた真の姿も、結城昌治ならではのビターでクールな感覚が全編に漂う、極上のハードボイルド・ミステリーとなっている。

 「とにかく生きていれば、また会うこともあるだろう。そしたら、またサヨナラを言うだけさ。」

    ◇

結城昌治コレクション
真夜中の男/結城昌治
【光文社文庫】
定価 533円(税別)

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