TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「祭りの準備」*黒木和雄監督作品

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監督:黒木和雄
原作・脚本:中島丈博
出演:江藤潤、馬渕晴子、ハナ肇、浜村純、竹下景子、原田芳雄、杉本美樹、真山知子、犬塚弘、絵沢萠子、桂木梨江、芹明香、阿藤海、原知佐子、森本レオ

☆☆☆☆★ 1975年/日本・ATG/117分

    ◇

 青春期に観た黒木和雄作品として、一番印象深い映画であり、優れた青春映画として記憶に残っている作品。
 南国土佐を背景に、シナリオライターになる夢を秘めた主人公が、家族・地縁のしがらみにまみれ苦しみながら悶々と身を焦がす姿を描いたもので、脚本家中島丈博の自叙伝的色合いの濃い作品である。

 舞台は昭和30年代の高知県中村市辺り。町の信用金庫に勤める楯男(江藤潤)は、東京へ出てシナリオライターになることを夢見る二十歳になる真面目な男だが、青春期に誰もが抱える家族や日常の問題に悶々としていた。
 父親(ハナ肇)は無類の女道楽で愛人の家で暮らしている。そんな夫を見限った母親(馬渕晴子)は楯男を溺愛する。
 楯男が仄かに恋心を抱いている幼馴染みの涼子(竹下景子)は左翼運動のオルグに夢中だ。
 隣家の盗人兄弟の弟トシちゃん(原田芳雄)は、刑務所にいる兄の代わりに嫁の美代子(杉本美樹)を抱いている。トシちゃんの妹タマミ(桂木梨江)は、大阪でヒロポン中毒に犯され頭がおかしくなって帰ってきた。村の男たちの慰みものになるタマミを、楯男の祖父茂義(浜村純)が囲い女房のように面倒をみている。
 数ヶ月後、タマミが妊娠。楯男の祖父茂義(浜村純)は自分の子だと言いふらすが、楯男も一度だけタマミを抱いたことがあった。タマミが赤ん坊を産んだ。その途端タマミが正気に戻り、一緒に暮らす茂義を嫌悪し、末に茂義は首を吊ってしまう。
 トシちゃんがはずみで人を殺してしまい、男に捨てられた涼子は楯男にセックスを迫る。
 次々と起こる身の回りの変化に、楯男はついに閉鎖的世界から出て行く決意をする………。

 黒木監督の人物描写はあらゆる登場人物に深い情を吹き込んでいるので、すべてに人間臭く、悩み多き者の稚拙さや欲望が暑苦しく感じるくらいに画面全体に漂っている。
 母親の溺愛ぶりは半端ない。母を捨てて家を出ることができない楯男は、母親を犯す夢で目を覚ます。足の悪い洋服屋の菊男が近親相姦に至るように、母親の呪縛をどこでどう解けば男の自立が始まるのか。マザーコンプレックスは青春の傷跡でもある。

 この猥雑な村のなかで生きる者たちの悲喜劇を、リアルに演じる俳優の個性が強烈である。
 女狂いのハナ肇が素晴らしい。愛人のノシやん(真山知子)が脳溢血で突然死したらノコノコと妻のトキ子の元に戻ってくる図々しさや、手に余るトキ子がもう一人の愛人イチやん(絵沢萠子)のところへ面倒をみてくれと頼みに行く場面では、ハナ肇の情けなさと可愛らしさを見せる独断場。閉鎖的村の奇妙な男と女の関係の中での軽妙な芝居がいい。
 愛人ふたりが真っ昼間に男を取り合う騒動も、兄の代わりに弟と寝る兄嫁も、性にあけすけな村の日常描写という感じ。そして、閉鎖的村社会にどん詰った女の性と、したたかに生きる杉本美樹に注目したい。
 正気に戻ったタマミに捨てられる浜村純の熱演も見逃せない。老いらくの恋として“人生の祭り”を思い出し、大平洋の大きな海原をポツンと眺める姿に郷愁を感じる。
 粗暴だが楯男とタマミにだけは優しいトシちゃんを演じる原田芳雄は、相変わらず強烈な個性をムキ出しにして画面をさらっていく。
 
 惨めで、苦く、切ない青春の旅立ち。殺人犯として追われるトシちゃんひとりが「バンザイ」の声援で見送る印象的なラストシーンは、原田芳雄の魅力が光る名場面。
 重いベース音を奏でるテーマ曲に乗り、トンネルに入る列車の行き着く先には、新しい祭りが始まろうとしているのか。楯男の表情が印象的だ。


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Comment

村石 太5253号名古屋 says... "映画と純文学"
黒木和雄監督 初めて聞いたかなぁ 44歳
女狂いの父親 貧乏子沢山 コンドームの復旧率時代
趣味とか教養とかない時代 ゴメン
2010.04.23 14:11 | URL | #F1luMobE [edit]

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