TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「弁護側の証人」小泉喜美子

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 この『弁護側の証人』は、1963年に書かれたミステリーの古典的名作のひとつで、長い間絶版状態だったものの復刊である。

    ◇

 ストリッパーのミミィ・ローイこと漣子は、八島財閥の御曹子と恋に落ち、結婚した。しかし幸福な日々は長くは続かなかった。義父である八島財閥の当主が殺されたのだ…………。

    ◇

 同年代のミステリーファンにはお馴染みであり、解説に“隠れファン”には複雑な心境だと書かれているくらい、読んだことのある者だけの愉しみな秘密といったことは、まさに同感。クリスティやクイーンなど正統派推理小説を読み耽っていた十代のころに、すっかり騙され驚かされた作品だ。

 ミステリー小説(映画)の紹介において、「どんでん返し」とか「意外な犯人」という言葉は、本来禁句である。
 当たり前の話だが、「意外」は何も知らないからこそ「意外」だし、「どんでん返し」は最後の最後まで白紙の状態だからこそ一撃を喰う快感に浸れるわけだ。
 しかし宣伝する側に、その面白さを伝えるためにこの「どんでん返し」「意外な犯人」という言葉が許容範囲に入っているのも仕方がない。惹句はその一文に惹かれてこそ伝わり、多くの読者や観客を生んでいくのだから、なかなか難しいものだ。
 
 さて、この復刊の惹句帯にも「伝説の“どんでん返し”がいまよみがえる……」と、堂々と印刷されている。
 1993年に発刊されていた紹介文にはトリックが施されていた。結末を知った読者が後で読むとなるほどと感心してしまうのだ。いろんなトリックがあると知るべしである。
 今回せめて「ミステリー史上に残る不朽の名作」程度でいいと思ったりしたのだが、新作でなく古典だから許すとして、小泉喜美子を知らないミステリー好きなひとにはどんな「どんでん返し」が用意されているのか、それを楽しみに読んでくれていいのかもしれない。

 初版が40年以上前でもまるで古さを感じることなく、ミステリーとしてとても洒落たものがある。
 「キノコのソースをあしらった肝臓料理を前にしたネロ・ウルフのように、義妹を眺めていた。」
 安楽椅子探偵で美食家の名前が出てくるなんて、いかにもミステリーを愛した小泉喜美子らしい一節だ。

    ◇

弁護側の証人/小泉喜美子
【集英社文庫】
定価 580円(税込)

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