TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「さらば愛しき女よ」内田裕也


“Farewell, My Lovely”

 1982年にリリースされた内田裕也&トルーマン・カポーティ・ロックンロール・バンドのアルバムは、タイトルをご覧のようにハードボイルド作家レイモンド・チャンドラーの世界を描いたコンセプト・アルバムになっており、稲越功一撮影のモノクロ・ジャケからもクールな香りが漂ってくる名盤。

    ◇

[Criminal Side]
プレイバック
PLAYBACK 作詞:東海林良/作曲:井上大輔
雨の殺人者
KILLER IN THE RAIN 作詞:東海林良/作曲:宇崎竜童
さらば愛しき女よ
FAREWELL, MY LOVELY 作詞:東海林良/作曲:大野克夫
かわいい女
THE LITTLE SISTER 作詞:東海林良/作曲:ジョニー大倉
真珠は困りもの
PEARLS ARE A NUISANCE 作詞:東海林良/作曲:沢田研二

[Detective Side]
赤い風
RED WIND 作詞:礼 門土/作曲:梅林茂
湖中の女
THE LADY IN THE LAKE 作詞:田口道明/作曲:BORO
大いなる眠り
THE BIG SLEEP 作詞:東海林良/作曲:井上堯之
長いお別れ
THE LONG GOODBYE 作詞:礼 門土/作曲:大野轟二
ローリング・オン・ザ・ロード
ROLLING ON THE ROAD 作詞:東海林良/作曲:大野克夫

    ◇

 作品提供の作家陣は裕也さん所縁の豪華な面々で、作詞が東海林良・礼門土・田口道明、作曲が井上大輔・宇崎竜童・大野克夫・ジョニー大倉・沢田研二・梅林茂・BORO・井上堯之・大野轟二ときたもんだ。井上堯之、井上大輔、BOROらは演奏にも参加している。

 一度CD化はされているのだが現在は廃盤で、中古でもめったに出回らない。出てきてもかなりの高値が付くのだろうから、早く紙ジャケCDで再発して欲しいアルバムのひとつなのだが、せっかくA面を[Criminal Side]犯罪篇、B面を[Detective Side]探偵篇と題しているのだから、アナログ盤で片方づつ聴くのもいいものである。
 (2013年9月タワーレコード良盤発掘隊により、デジタルリマスタリングされリイシューされた。)

 「雨の殺人者」は、宇崎竜童主演の『TATTOO〈刺青〉あり』のオープニングに使用された曲で、「長いお別れ」同様にシングル・カットされている。
 レイモンド・チャンドラーの書籍と曲を照らし合わせてみると、「雨の殺人者」と「赤い風」「真珠は困りもの」は短編からのタイトルで、「大いなる眠り」「湖中の女」「さらば愛しき女よ」「かわいい女」「長いお別れ」「プレイバック」がフィリップ・マーロウ物だ。
 
 そして、唯一チャンドラーに関連はしていないがハードボイルドな男にぴったりな「ローリング・オン・ザ・ロード」は、さきに紹介したように『野獣刑事』のエンディングに流された名曲。宇崎竜童、沢田研二、大野克夫、井上堯之、井上大輔、安岡力也、BOROらをバックコーラスにしたアルバムヴァージョンを、そのままTV『夜のヒットスタジオ』(1982年4月放送)でもこの軍団を従えての凄い画を見せてくれたのを思い出す。

 録音された1981年の裕也さんは『ヨコハマBJブルース』『嗚呼!おんなたち 猥歌』へと役者稼業が続いた年で、このあと、『水のないプール』『十階のモスキート』『戦場のメリークリスマス』と、ますます映画の世界で泳ぎだしていくのだが、俳優として決して上手いわけではなく、演技というより存在感で語られる御仁なわけで、何をしようが、どこに居ようが、裕也さんは裕也さんでしかなく、そのパワーに圧倒される唯一無二のひとだ。
 2~3年前に汐留の某ホテルのエレベーター前でお見かけし、圧倒されながらも、気軽に握手をして頂いたときのことは一生忘れられない。

 さて、もちろんROCKの世界ではロッケンロールに殉じた御仁。
 声量のない裕也さんではあるが、世界観はきっちり表れていて、このチャンドラーの世界では、歌い演じている。
 なんて切ない声。まさにハードボイルド。
 大人のROCKを感じずにはいられないのだ。
 

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Comment

志木 says... "再リリースを待ちながら"
はじめまして。
このアルバムのことを書かれている方がいるのだなと、うれしくなってしまいました。「クール」という言い方は、言葉本来の意味をひろげてよく使われますが、この作の肌触りは、リリースされた時代、まさに「クール」でした。CDの中古盤では一万超えの価格。早く再リリースされないかなと思う名曲揃いです。ただレコードの時から、最後の曲だけは、ダメでした。ハードボイルドの根に「孤高」というものがあるのなら、仲のいい友達が集まってコーラスをするというスタイルのどこが、ハードボイルドなのか、と思う。チャンドラーの小説に出てくる魅力的な人物たち(悪役の女性含め)の体内に、そんな「仲良く合唱する血」は流れていません。そこだけがなあ、と、いいながらも、愛してしまう名盤。
2011.01.04 09:09 | URL | #- [edit]
mickmac says... "Re: 再リリースを待ちながら"
志木さん  はじめまして

ニッポンROCKの大黒柱ユーヤさん………世間では必ず「シェキナベイベー」と揶揄されるのですが、ヴァラエティー番組に取り上げられても、何事にも動ぜず己の道を歩むユーヤさんの、洒落を心得る懐の深さを感じずにはいられません。
すべてに熱い存在だからこそ「クール」って言葉がピッタリなユーヤさんです。

>ただレコードの時から、最後の曲だけは、ダメでした。ハードボイルドの根に「孤高」というものがあるのなら、仲のいい友達が集まってコーラスをするというスタイルのどこが、ハードボイルドなのか

“自由とひきかえに 孤独の人生をゆく I'm Happy Man I've too Many Friends”

ぼくは、1982年4月放送の『夜のヒットスタジオ』で聴いた「ローリング・オン・ザ・ロード」が、この仲間たちとの姿とともに忘れられないシーンとして脳裏に焼き付き、単純にアルバム収録をよろこんだので、当時から「ローリング・オン・ザ・ロード」はボーナストラックのような存在と思っていました………。

けだし名曲!
2011.01.05 15:27 | URL | #- [edit]

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