TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「裏切りの明日」結城昌治



 幼いころ飢えを経験している沢井は、不正を憎み正義感に燃え職務への誇りを持った刑事だった。しかし、ある事柄をきっかけに、金銭の欲望にとらえられ、心が歪み、悪の道を歩みはじめる。
 汚職に塗れた沢井は、さらに深い穽(あな)に堕ちていく………。

    ◇

 本篇は『夜の終る時』につづく悪徳刑事が主人公の犯罪小説で、一代で築きあげられた製粉会社を舞台に、横領、背任、乗っ取り、手形詐欺など魑魅魍魎な人間たちが蠢く会社犯罪と、そこにつけ込もうと自分の欲望のまま突き進む悪徳刑事の姿が描かれる。
 物語の半分は、会社乗っ取りのテクニックや総会屋の実態、手形パクリの犯罪などがリアルに語られ、経済小説としても読むことができ、これがとても面白いので一気に読み終えた。
 
 元刑事の牛窪、経済やくざの矢藤、総会屋の阿久津など悪徳刑事に関わる人間関係が印象深く、特に、沢井の情婦トシ子と製粉会社社長の愛人佳代は、笑うと寂しい顔になる三十路を越えた子持ち女と、男の客に笑い馴れた笑い顔をする美人女将といった対照的な女たちで、沢井の心を安らぎと欲望で乱す存在として魅力的だ。

 1965年に書下ろされた時のタイトルは『穽(あな)』と付けられていたと云う。著者としては納得がいかない題だったようで、その後、1975年の文庫化に際して『裏切りの明日』と改題されたそうだが、本篇を読み終えればこのタイトルの意味合いが一層深くなる。
 犯罪小説として印象鮮やかなエンディングは、絶妙な結末だ。

    ◇

 映像化は2つある。
 1975年にTBS「金曜ドラマ」において、脚本早坂暁、出演原田芳雄と倍賞美津子でドラマ化(全9回)されたものは未見だが、ふたりともイメージに合ったキャスティングと云える。特に倍賞美津子のトシ子役は見たかった。
 もうひとつは、これが原作とは知らなかったのだが1990年の東映Vシネマで萩原健一が演じている。工藤栄一監督の作品だったので興味はあり、最近、やっとビデオを見つけた。

    ◇

結城昌治コレクション
裏切りの明日(あす)/結城昌治
【光文社文庫】
定価 552円(税別)

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Comment

なるときよし says... "いつも"
マイブログに訪問ありがとうございます。

このショーケンバージョンは
「・・・・・」でした。
なかなか感想が書きづらかったです。
・・なんでそうなるのかなあと。
2009.03.27 21:07 | URL | #- [edit]
ちゃーすけ says... ""
ショーケンのVシネマは工藤栄一さんなので、悪くはなかったと思いますが、TV版は脚本が早坂暁さん!
それなら、絶対そちらの方が雰囲気が出せたかと思います。

早坂暁さんは「必殺」や松田優作氏の「熱帯夜」など、こういうダークな面を描く脚本は絶対うまいですから。
工藤栄一さんは男性を描くのはうまいのですが、女性がイマイチおろそかな感じがします。
なので、これはおそらく早坂暁さんの方が良かったと思います。
さすがに早坂暁さんは未見なので、独断ですが。
2009.03.27 22:40 | URL | #a2H6GHBU [edit]
mickmac says... "Re: いつも"
なるときよしさん

いつも“男前”な文章を楽しませていただいてます(笑)。
このショーケンドラマ、工藤監督でありながら未見だったのですが、原作を知って急に興味が湧いたのです。
で、………なるほど。
2009.03.28 00:34 | URL | #- [edit]
mickmac says... "Re: タイトルなし"
ちゃーすけさん

確かに!!! 
原田芳雄と倍賞さんというだけでも見たいのに、早坂暁さんのドラマと知れば、是が非でも見たくなりますよね。
「熱帯夜」のようにDVD化されないかなぁ………
ムリでしょうね。

工藤監督は、この後に撮った「赤と黒の熱情」がイマイチでしたが………。
2009.03.28 00:35 | URL | #- [edit]

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