TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「夜の終る時」結城昌治



 刑事課捜査係第一係の徳持刑事は、ヤクザの幹部になっている幼馴染みの関口との間で癒着が疑われていた。その徳持刑事がふいに消息を絶ち、翌日、ホテルで死体となって発見される。同僚の死に対して必死の捜査をつづける刑事たちは、ついに容疑者の関口の逮捕にこぎつけるのだが……。

    ◇

 第17回日本推理作家協会賞を受賞したこの作品は、和製ハードボイルド小説の先駆者である結城昌治が1963年に書下ろした初期の代表作で、ハードボイルドと云うよりミステリー小説の傑作である。
 警官殺しの謎を追いながらの本格的な警察小説は、時代設定の古さを感じさせない緊迫感が詰まっていて、いま読んでみても引き込まれる魅力を持っている。それは、描かれる人間たちの痛みを感じとれるからだ。

 悪徳警官物の先駆的なストーリーは斬新な2部構成となっており、本格推理として書かれた第1部のあと、第2部では倒叙形式で犯人の独白でストーリーがカットバックされる。
 
 若い女の躰に溺れた中年刑事の、女への痴情と不信と未練。そして裏切り。
 大機構の警察内部の腐敗は、悪い奴らがのうのうと生きる社会の矛盾に突き当たりながら、何も報われない刑事という職業の虚しさと、正義ゆえに陥る落とし穴に嵌まり、もがき苦しむ刑事の姿。
 ラスト数行は、声に出ない悲痛さに震えるだろう。

    ◇

 2007年には鎌田敏夫の脚本で岸谷五朗と余貴美子主演でドラマ化がされており、現代社会を舞台にかなり原作に忠実な映像化で、堕ちていく男と女の濃厚な人間模様となっていた。
 原作との大きな違いは、中年刑事(岸谷五朗)が溺れる若い千代の役を中年女(余貴美子)に置き換えたこと。それにより哀感憂うような世界に変わり、哀れな男と、寂しさだけで生きてきた女が、存分に堕ちていく。男女の痴情がより鮮明に描かれ、鳥肌が立つほどの悲哀が見られた秀作ドラマであった。

    ◇

 ところで現在なかなか手に入れにくい結城昌治作品だが、2008年に光文社から『結城昌治コレクション』の刊行が始まった。現在まで、スパイ小説の代名詞『ゴメスの名はゴメス』や会心の悪漢小説『白昼堂々』など5作品が出ているのだが、今後の刊行作品が楽しみだ。

夜の終る時/結城昌治
【中央公論社】絶版

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Comment

ちゃーすけ says... ""
このドラマ、見た覚えがあります。
なんたって余さんですから。
千代を余さんが演じることによって、物語に深さがでましたよね。
2009.03.27 00:12 | URL | #a2H6GHBU [edit]
mickmac says... "Re: タイトルなし"
ちゃーすけさん

映画「ヌードの夜」やサスペンスドラマの名作「冬の駅」のように、哀しみに浮遊する切ない女性を演じる余さんには、孤独に生きてきた女の過去がリアルに感じられるので、惹き込まれるのですよね。
本当に素晴らしいです。
2009.03.27 12:58 | URL | #- [edit]

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