TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「女タクシードライバーの事件日誌4」

~殺意を運ぶ紙ヒコーキ~
脚本:瀧本智行
演出:猪崎宣昭
出演:余貴美子、織本順吉、高田敏江、萩原聖人、光石研、洞口依子、北村総一郎、斉藤洋介、佐藤二朗、肥後克広、村田雄浩、田中健

放送:2009年3月9日 TBS「月曜ゴールデン」

    ◇

 夫・晴彦(田中健)の死後、タクシードライバーとして働く衿子(余貴美子)。業務を終え営業所に帰ってきた衿子を整備工の本橋幸太(萩原聖人)が待っていた。幸太はバツイチ子持ちの千尋(粟田麗)と結婚間近だ。そんな幸太のもとに両親が上京してくるという。衿子は幸せになろうとしている幸太を祝福する。
 そして、幸太の両親・幸造(織本順吉)と芙美(高田敏江)が上京してきた。しかし待ち合わせ時間になっても幸太は両親の元に現れない。幸太の現住所を知らない幸造たちは仕方なく勤め先である営業所を訪れる。営業所でも幸太が無断欠勤していることが話題になっていた。携帯電話も繋がらない。所長の大城(北村総一朗)と相談し、衿子は両親を幸太の自宅に送り届ける。すると彼の家では千尋が心配そうに待っていた。幸太不在のままぎこちない挨拶を交わす千尋と幸造たち。
 そこに警察がやってきた。昨夜殺人事件が起き「モトハシコウタ」と名乗る人物から犯行をほのめかす電話があったというのだ。絶句する千尋。そして幸造はショックで倒れてしまう。幸造が倒れたとの報を聞き、大学准教授で幸太の兄・中井幸雄(光石研)と起業家の姉・本橋由美子(洞口依子)が病院に駆けつけた。由美子は幸造の身体より幸太が自分の会社に悪影響を及ぼすことを心配するばかり。現在はまじめに働いているものの、以前の幸太は素行が悪くひき逃げ事件を起こして収監された前科もあった。そのこともあり、家族までが幸太が殺人を犯したと思い込んでいる。しかも幸太と被害者が同じ時期に刑務所に入っていたこともわかる。しかし衿子は彼の無実を信じ、幸造夫婦と千尋を励ます。《TBS公式サイトより引用》

    ◇

 2時間ドラマ『女タクシードライバー』シリーズの4作目。

 本シリーズは、過去の3作品でハード ボイルドな香りを漂わせ、主人公の衿子が抱える孤独と事件に関わる人間たちの心情が共鳴し合い、痛みや哀しみを過去という重い鎖でひきずりながら生きる人間たちを活写してきた。
 ハード ボイルド的なのは、オープニングの春成衿子 (余貴美子)のモノローグに強調されるように、余貴美子の声質と喋り方に深い人生の孤独感が染み込んでいるからだ。

 ただし今回は、衿子のハードボイルド感は少し薄れていた。
 夫の謎の死により心に傷を負い都会の片隅でひっそりと暮らしている衿子が、今迄のように事件を探求するでなく、真相に気付いたときでも当事者らを問いただすことなく、ただ傍観者のまま、自分と同じように傷を負った者たちへいたわりと優しさで接することに徹底している。

 心に傷を抱えている者たちの人間模様は、レギュラー陣はもとよりゲストの俳優らの深みのある演技にかかっているのだが、今回、一番印象深いのは織本順吉といえるだろう。

 織本順吉扮する厳格な父親と、光石研、萩原聖人、洞口依子3人の子供たちとの確執は、いつの時代にも存在する一番深刻な親子関係だろう。誰も心底親を捨てたいわけではないし、子供の自立を喜ばぬ親はいない。ただ、ちょっとした歯車の噛み合わせが狂ったことで、親子だけでなく子供どうしの関係も泥沼に嵌ってしまう。
 前科を背負った萩原聖人に対する家族関係は、否応なく周りの人間たちにも波及し闇に放り出されてしまうのだが、更正を始める子供に対する親の思いは、いくら父親が勘当したことでも断ち切れるはずもなく、そんな父親の心情を織本順吉はベテランならではの味わいを見せてくれた。
 『仁義なき戦いシリーズ』で強面を演じていた頃の雰囲気を垣間見せたシーンもあったし、不肖息子の萩原聖人が選んだ女性の子供に対する好々爺ぶりといい、そして酷く辛い結末のあと、庭で遊ぶかつての子供たちを想い、崩れ落ちる父親の姿には胸を締め付けられる。

 さて、シリーズの魅力のひとつに劇中に流れる歌がある。
 第1作『殺意の交差点』ではちあきなおみの【ルージュ】、第2作『作られた目撃者』では坂本九の【上を向いて歩こう】、第3作『届かなかった手紙』では山口百恵の【秋桜】が、社会の片隅に生きる様々な人間たちを歌い描いてきたが、今回は、井上陽水の【人生が二度あれば】である。
 
 仕事だけに明け暮れた父親と、家事と子育てに休みなく追われた母親が、人生は誰のものだったのかと振り返る歌だ。

 冒頭、衿子のタクシーのラジオから流れる【人生が二度あれば】に、乗客の徳井優が「もう一度、やり直すことができれば……」と嘆く。いくつもの何気ないスケッチのひとつだが、このエピソードが絶妙な導入部となり、ドラマは静かに“家族のあり方”を浮き彫りにする展開へと走り出す。
 終幕、事件の真相が明らかになり、解決したことを示すニューステロップとともに流れる【人生が二度あれば】。この4 分54秒の歌の中に、家族の哀切感が盛り込まれ、歌の力を存分に見せつけられる。

 孤独に生きてきた者たちの切ない人間ドラマとして、完成度は高い。

 赤のミニクーパーを乗り回す姿と、モノローグでのハスキーな声が相変わらずカッコいい余貴美子であった。

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Comment

ちゃーすけ says... ""
これはさっき、録画してあったのを見ました!
余貴美子さんが好きだから楽しみにしてました。
余さんの声、あの口調が好きです。
一昨年の松本清張の「わるいやつら」の連続ドラマなど、余さんの演じる女将・チセを一生懸命見てました(笑)。

今回も深みのある内容でしたね。
衿子が毎日見ている様々な人生のワンシーン、衿子の深い心の傷。
その衿子ならではの心遣い。

子供たちが仲良く登っていた木に、息子と結婚するはずだった女性が連れてきた子供を登らせる父親の姿で終わった時はちょっと涙が…。
久々に良い2時間サスペンスを見たと思いました。
2009.03.11 00:11 | URL | #a2H6GHBU [edit]
mickmac says... "Re: タイトルなし"
余さん主演の2時間ドラマは久々でしたが、十二分に余さんの魅力を堪能できましたね。
余さんと猪崎宣昭監督との2時間ドラマは常に質の高い作品なので、安心して見ていられます。

ミニクーパーの運転席から張り込みの刑事を睨むところが、今回唯一ハードな表情でしたが、この顏が好きなのです。
 余さん主演で、サラ・パレツキーの「V.I ウォーシャースキー」シリーズを原作にしたハードボイルドを見たいと思っているのですがね………年をくっててもいいじゃないですか(笑)。
ちょうど緒形拳さんが「名無しのオプ」を演じたように、渋い女探偵なんていかがですか………。

4月から、松本清張の新ドラ『夜光の階段』に余さんが出演します。
また一生懸命に見てください(笑)。

ところで、ちゃーすけさんも余さんのファンでしたら、ぜひ、ぼくが管理している『Y's Passion』へお越しください。(右のリンクより)
昔の作品のレヴューや楽屋訪問など、楽しんでいただけると思います。
2009.03.11 14:52 | URL | #- [edit]
ちゃーすけ says... ""
いいですねえ、私もウォーショースキーをやるなら余さんでお願いしたい、というか、是非みたいです!
私も張り込みの刑事を睨むシーン、いいなあと思いました。
その後、刑事が「いい女ですね」って(笑)。

余さんのハスキーな声と、あのゆっくりした口調がいいんですよねえ。
「夜光の階段」、主演の木村さんより余さんを一生懸命見てしまいそうです。
2009.03.12 09:34 | URL | #a2H6GHBU [edit]

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