TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「チェンジリング」



CHANGELING
監督:クリント・イーストウッド
脚本:J・マイケル・ストラジンスキー
音楽:クリント・イーストウッド
出演:アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・マルコヴィッチ、ジェフリー・ドノヴァン、ジェイソン・バトラー・ハーナー、エイミー・ライアン、コルム・フィオール、マイケル・ケリー

☆☆☆☆☆ 2008年/アメリカ/142分

    ◇

 1928年のロサンゼルス。シングル・マザーのクリスティン・コリンズ(アンジェリーナ・ジョリー)は、電話会社で働きながら9歳の息子ウォルターを育てている。
 ある日、突然ウォルターが行方不明になる。
 5ヶ月後、警察からウォルターを発見したと知らせがくるが、連れられてきた少年は見知らぬ子供だった。クリスティンは再捜査を懇願するが、警察はクリスティンを精神障害だとして精神病院に強制入院させてしまう。
 息子を見つけるまで決して諦めないと、様々な圧力と闘うクリスティン。そこにまた、過酷な報せが届く……。

    ◇

 アメリカ史の暗部として残る実話の映画化。
 世界恐慌の前年。腐敗と堕落で塗れた“天使の街”に張り詰める空気をリアルに感じさせるのが、“銀のこし”の現像処理に似た画面の色調づくりだ。
 モノクロとカラーの中間画調でカメラが移動する冒頭から、クリント・イーストウッドのクールな語り口が品格と風格を漂わせ、見事なまでに惹き込まれてしまうのだ。

 その格調高い演出に見事に応えているアンジェリーナ・ジョリーは、気品と気丈を兼ね備えた不屈の女性を熱演している。
 権力の不当な弾圧に対して、どんなに過酷な状況であれ、不屈の闘志を燃やすのは、ただ息子を想う強い愛情だけ。はじめは真っ赤なルージュと濃いめのアイシャドウで派手な印象を与えてはいるが、次第に、なりふり構わない母としての心の強さが伝わってくる、素晴らしいヒロインだ。

 映画の前半は、ヒロインと腐り切った警察権力との攻防なのだが、彼女が警察から受ける不条理な扱い(本当の出来事だったとは信じ難いような酷さ)に、観ている者は大きな苛立ちと怒りを覚えてくる。イーストウッド監督が、そんな社会を声だかに糾弾するのではない分、現実の恐ろしさをしっかり味わうことになる。

 そして、意外な方向へ展開する後半。クリスティンの新たな悪夢がはじまるのだが、クリスティンを苦しめる一人の男(ジェイソン・バトラー・ハーナーのパラノイアぶりは凄い)の言動に揺さぶられ、彼との直接対面では、これまでの彼女には見られなかったような、常軌を逸する姿を目の当たりにする。
 ここでのアンジェリーナ・ジョリーの叫びが悲痛で、つづく、寒々とした絞首刑の部屋での沈黙の姿との対比が見事。

 過酷な運命に翻弄されるクリスティンのラストの一言は、映画の後味とは別に、決して救われる言葉ではないと思う。




イーストウッド監督自身がスコアを書いた、エレジーで、ノスタルジーで、官能的なメロディは、相変わらず素晴らしい。


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Comment

シリウス says... ""
きのう、推奨された「チェンジリング」を観てきました。心に深く響く重厚な映画であった。
mickmacさんの粗筋・解説が参考になり、映画を見るとき役に立ちました。

時代背景であるアメリカの1928年前後は、禁酒法が施行されていてこの法に絡んだ警官の汚職が各地で日常的にあり、大都市「シカゴ」ではギャング団の縄張り抗争が激しくなっていて「血のバレンタイン事件」も発生していた暗黒世相の時代であった。

その時代に、一般人で平凡に生きているシングルマザーの子供の行方不明事件で警察に再捜査を懇願しても、組織の一部が腐敗していたロス市警は自分たちの体面を保つために聞く耳を持たないし、逆にむごい仕打ちを被害者側の彼女にする。
(警察の説明に同意しないと、精神病院に強制入院になることが恐ろしい。医師、看護士などの患者に対する扱いが無慈悲で冷酷である)

腐敗した警察に絶望して、息子を取り戻したい一心で自ら行動を起こし、市長とロス市警を告発して、裁判に勝利するが、彼女の息子は戻ってこない。

エンディングはかなり長いが、殺人鬼と対面し詰問もし、公開処刑に立ち会ったりするが、彼女の心に救いは無かった、

追記
警察から5ヵ月後に返された子どもと、その子の背後関係者(犯人側)との接点がよく分からなかった。
(具体的な描写が無かった?)

時代考証は、実物とセットとCGの合成?だと思うが、良く出来ている。
画面の色調も良い感じであつた。

主役のクリスティン(アンジェリーナ・ジョリー)は容貌・容姿、風格などがシングルマザー役にピッタリで、不屈の精神で腐敗した警察と闘う強い姿勢に共感を覚えたし、素晴らしい演技であった。

クリント・イーストウッド監督の作品は、2007年に観た「硫黄島からの手紙」以来の久しぶりですが、彼は正しく現代の巨匠監督の1人です。

今年、公開される多くの洋画の中で、名作と評価される1本に数えられるアメリカ映画だと思います。
2009.03.06 09:37 | URL | #- [edit]
mickmac says... "Re: タイトルなし"
シリウスさん

クリント・イーストウッドが監督する作品は、どんなに人間くさいドラマでも、監督の優しさが感じられるからいいです。
老練な手腕は、まぎれもなく巨匠と呼んでもいいでしょうね。

2009.03.06 19:29 | URL | #- [edit]

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