TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「任侠外伝 玄海灘」*唐十郎監督作品



 本文は、Hotwax誌 [vol.8]に掲載した作品紹介を大幅に加筆修正したものです。

監督:唐十郎
脚本:石堂淑朗、唐十郎
音楽:安保由夫
主題歌:「夢は俺の回り燈籠」
挿入歌:安藤昇「黒犬」
主演:安藤昇、李礼仙、根津甚八、小松方正、宍戸錠、真山知子、天津敏、南州太郎、天竺五郎、石橋蓮司、嵐山光三郎、十貫寺梅軒、常田富士男、不破万作、大久保鷹、唐十郎

☆☆☆☆ 1976年/唐プロ・ATG/122分

    ◇

 唐十郎の第1回監督作品は、ヤクザ抗争を交えた近親相姦が生みだす因果話だ。

 密航してきた韓国の女 たちを売りさばく一匹狼の近藤(安藤昇)とやくざの代貸・沢木(宍戸錠)は、学生時代の朝鮮戦争の最中に犯した暗い秘密で結ばれていた。
 釜山の貧しい農家で沢木が女を絞め殺し、死んだ女を近藤が犯していたのだ。その時の怨みを込めた女の顔が美しく、近藤の脳裏に焼き付いていた。
 密入国の女たちに紛れ込んだ一人の美しい女・春仙(李礼仙)と若い男(根津甚八)の純愛。そしてそこに近藤が入り交じり、果てに近藤と沢木の関係に決着がつけられる……。

 亡霊に憑かれながら彷徨う安藤昇の風貌は、本物の修羅場をくぐり抜けてきた男が持つ翳りある凄みで他を圧倒し、『仁義なき戦い・完結編』で凶暴さを印象づけていた宍戸錠も、さらに徹底した凶悪さで新境地を見せている。

 宍戸に殺され安藤に死姦される李礼仙は、息を吹き返し産み堕とされた娘との母娘二役を演じる。生 きていくことの痛みを知っている女の、業と哀しみに妖怨を漂わす容姿は圧倒的な存在感である。
 その李に惹かれながらも女を抱けない若き根津甚八は、小便塗れになりながら、ドブ川で眼光鋭く妖しい色気を振りまく。
 このふたり、鉄橋の上から海に飛び込んだり、ヘドロ塗れになったりと、身体を張った熱演を繰り広げている。
 さらに、恋人の李礼仙を目の前で犯され、憤怒の形相で玄海灘を渡って来た小松方正は、涙の数だけの怨みを成就させようとする鬼の顔で画面をさらう。

 こんな凄い奴らの映画、そうはお目にかかれない。

 ………………

 「おい、糸のないギターを弾いてくれ………」

 クライマックスで流れる安藤昇の「黒犬」の冒頭台詞が印象深く、このあと、死闘を繰り広げる安藤と宍戸は遥か朝鮮半島に背を向け息絶え、それを見届けた小松は玄界灘に身を投げ、李礼仙は安藤昇に成り済ました大久保鷹の銃弾に倒れる。
 そして、重油や廃棄物だらけの河口に半裸姿で浮かぶ李礼仙の屍を、ヘドロ塗れになりながら抱きしめ慟哭する根津甚八の姿は、鬼畜地獄八景で身悶える純 愛として目に焼き付くのだ。

 映画の主題曲であり、たびたび劇中にも流れる唐十郎の歌詞で歌われる作曲者不詳のメロディが、切なく耳に残る。

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