TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「ピンクサロン 好色五人女」*田中登監督作品

poster._好色五人女

 本文は、単行本 【映画監督・田中登の世界】に掲載された作品紹介を大幅に加筆修正したものです。

監督:田中 登
原作:井原西鶴
脚本:いどあきお
出演:松田暎子、山下洵一郎、山口美也子、宮井えりな、大谷麻知子、青山恭子、砂塚英夫、奥村公延、中丸信、高橋明、島村謙二、八代康二、浜口竜哉

☆☆☆ 1978年/にっかつ/94分

    ◇

 ネオン花咲くころ、男たちの疲れを癒すピンクサロンが大盛況のなか、ライバル店に負けじと過激なサービスの「浪速女」が摘発を受けた。釈放されたホステスのミツ(松田暎子)、夏子(青山恭子)、そして一匹狼のピンクサロンの店長元伍(山下洵一郎)を迎えるのは開店屋の井原(砂塚英夫)。元伍と井原は再起を目指し、ホステス集めに奔走。元ストリッパーの万子(山口美也子)、人妻ツル(宮井えりな)、そしてナナ(大谷麻知子)、ルミ(相川圭子)、サナエ(梨沙ゆり)と陣営を固め、何度も警察の手入れを受けながら、その度に趣向を凝らしては営業を続けるが、何をやっても上手くいかない。次々とホステスたちは辞め、残ったのは曰くある五人の女たちだった。
 “好色五人女”の誕生に心機一転、元伍たちはマイクロバスで雄琴を目指すことに………。

    ◇

 『(秘)色情めす市場』『実録・阿部定』『江戸川乱歩猟奇館・屋根裏の散歩者』『発禁本「美人乱舞」より責める!』と、名作・問題作を送りだしてきた田中登といどあきおの最強コンビが最後の作品として放ったのが、井原西鶴へのオマージュ。
 江戸の浮世の恋物語に登場した女たちを、猥雑な現代に解き放し、人間味たっぷりに描いた傑作となっている。
 1979年の第2回日本アカデミー賞において田中登は、ロマンポルノの監督として最初の優秀監督賞を受賞しており(二人目にして最後の監督は翌年の神代辰巳)、受賞対象作品は室田日出男好演の『人妻集団暴行致死事件』とこの作品だった。

 本編始まって三分の二は軟派ムード一色で、情けない男たちを尻目にヴァイタリティあふれる女たちの“性”がスケッチされる。

 大島渚の『愛のコリーダ』で衝撃的なラヴシーンを演じた松田暎子は心中未遂の過去がある女で、男が死んで自分だけが生き残りただ惰性で生きてきた不安定感を醸し出し、「あんたが殺される前にわたしを殺して」と叫ぶ青山恭子は、婚約者を捨ててヤクザの清十郎を愛する。現在TVドラマで、絶対の敵役で知られる若き日の中丸新将が、とてもニヒルな男で魅力的だ。“生の温もり”を知らずに育ったコインロッカーベイビーの大谷麻知子は行きずりの過激派学生に心動かされ、サラ金に追われる夫を支える人妻宮井えりなは、何とも甲斐甲斐しい。そして、浮草稼業に疲れ安らぎを求める元ストリッパーの山口美也子。それぞれの個性が生かされたなか、山口美也子の存在感が抜きん出てる。

 当然ながら、ただ“性の謳歌”が描かれているのではなく、女たちの哀感や、純愛、虚無感が、次第に破滅的快楽のなかに蓄積され、エロティシズムの向こう側に“死の風景”が見え隠れする。
 すべてに行き詰まっていく元伍と5人の女たちが東京に見切りをつけ、マイクロバスで営業をしながら西へ西へと向かうロード・ムーヴィー的趣向も、西方浄土(極楽)を目指す集団道行きのようになっていく展開だ。

 深夜のサービスエリア、バスの屋根の上で中原理恵の「ディスコ・レディー」に合わせて踊る山口美也子の姿に目を奪われていると、場面は琵琶湖畔に佇む孤独な老人(奥村公延)と知り合う松田暎子に変わる。
 自分の心に空いた穴を埋めるために入水心中するミツと老人。浮気をしていた夫の目の前で自殺するツル。追い掛けてきた清十郎と貪るように愛を確かめた夏子は、目の前でヤクザ仲間に清十郎を殺されてしまう。

 追いつめられていく者たちや、傷ついていく者たちへの挽歌として作品にインパクトを与えているのがフラワー・トラヴェリン・バンドの「SATORI part2」と「Make Up」で、特にミツと老人のシーンは数ある挿入歌の中でも秀逸で印象的な使われ方だ。
 ほかに、山口美也子のテーマソングのように流れる「時には娼婦のように」をはじめ、「宇宙戦艦ヤマト」「銃爪」「君の瞳は一万ボルト」など、効果的に挿入される歌謡曲の数々には“生の讃歌”を感じさせる。

 失意の元伍、万子、ナナ、夏子。どこへ行くでもなくバスを飛ばし狂乱するなか、浮世離れしたピンク・レディーの「モンスター」で踊り狂う万子と、過激派学生の残した爆弾のタイマーをいれるナナ。
 「モンスター」が終わると同時に全部が無常の世となるラストは、最後に流れるフラワー・トラヴェリン・バンドの「After The Concert」の儚さとともに、70年代の展開として悪くない。

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