TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

歌謡曲外伝【阿久悠・やさぐれ編】

 思いつきで不定期に掲載している「歌謡曲外伝」。
 【日活ロマポ編】【東映スケバン編】【美脚編】につづいて、1年ぶりに復活させてみよう。

 今回は【阿久悠・やさぐれ編】。
 阿久悠の数ある“やさぐれ歌謡”のなかから、たまたまヒットはしなかったが「これぞ」と言える楽曲を選んでみた。

    ◇



杏 真理子◆ さだめのように川は流れる/涙の空に虹が出る 1971年

 1970年「ざんげの値打ちもない」が歌謡界を震撼させた異色作であることは周知の話で、それに続いて北原ミレイが歌った「棄てるものがあるうちはいい」「何も死ぬことはないだろうに」が“やさぐれ歌謡3部作”と云われてはいるが、この時期に書かれたもうひとつの大傑作として「ざんげの値打ちもない」に勝るとも劣らないのが、この杏真理子の「さだめのように川は流れる」だろう。

 杏真理子のブルージーな声が、けだるくふてぶてしく歌う歌唱法と相まって、いちど聴いたら耳から離れないソウルフルな楽曲である。

 2枚のシングルとアルバム1枚を出した彼女だったがヒットとは縁がなく、活動としては千葉真一主演の『やくざ刑事 俺たちに墓はない』('71)にクラブ歌手の役で出演しているくらいだろうか。
 阿久悠作詞はこの1曲だけだったが、同じ年に出た2枚目のシングル「理由ある旅」は哀愁あるトランペットが印象的で、B面もカンツォーネ風の小林亜星の楽曲が耳に残る傑作なのだが…………。

 阿久悠自らが「さだめ」と云う言葉を使用したことを悔いてしまうほど、過酷な人生を歩んでしまった杏真理子。
 夢破れた彼女はアメリカへ渡ったのだが、運命は残酷。遠い地で殺人事件の被害者となった彼女は享年23(25歳と云う説もある)の若さで人生に幕を下ろしてしまった。

 この曲は阿久悠のフェイヴァリット・ソングでもあり、これまでCD化は14枚組の大全集でしか聴くことができなかったのだが、9月に発売された『続・人間万葉歌 阿久悠作詞集』(CD5枚BOX)で手軽に聴くことができるようになったのは嬉しい。

    ◇



荒木ミミ◆ スキャンダル/失恋 1973年

 先日発売された「続・歌謡曲番外地~恋のコマンド」には同じく阿久悠作詞の2作目「ボロボロ天使」が初CD化されたが、こちらは荒木ミミのデビュー曲で両面とも作曲は中村泰士。
 
 荒んでいく少女の情景が歌われる。

 バカ バカ………
 らしくない弱気が嫌になる

 ミミのアルトヴォイスがからみついてくる傑作だが、ジャズっぽいブルースに乗せてミミが彷徨うB面も隠れた名曲。

    ◇



水沢夕子◆ 無口な女の話/東京悲しや 1971年

 これも両面とも阿久悠・中村泰士コンビの楽曲だが、とても荒んでいる。
 「ざんげの値打もない」のようにひとりのおんなの人生が語られるもので、「つまんない話よ きく?」と独白から始まる劇画演歌である。

 どっと落ち込むくらいに暗い。
 おんなはこの後、いかれた男に惹かれ都会に出て、棄てられ、手首を傷つけながらも生きている。疲れて帰った故郷には既に親もいなくなり、アニキも行方が知れず。おんなは、相変わらず無口だった。

 60年代の終りから引きずるシラケ世代の空虚感。彷徨いたどり着くところに希望を灯さない冷たい情景だけが残る歌である。
 西田佐知子を思わせるB面の「東京悲しや」は、強がるおんなのロッカバラードの佳曲。

 水沢夕子はこの後、東映の杉本美樹主演の映画『恐怖女子高校』('73)に出演している。

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