TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「狼と豚と人間」*深作欣二監督作品

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監督:深作欣二
脚本:佐藤純彌、深作欣二
音楽:富田勲
出演:高倉健、三國連太郎、北大路欣也、江原真二郎、中原早苗、岡崎二朗、石橋蓮司、志麻ひろ子、室田日出男、八名信夫

☆☆☆★ 1964年/東映/95分/B&W

    ◇

 貧民窟で生まれ育った黒木3兄弟。
 長男の市郎(三國連太郎)は、有り金持って家族を捨て新興ヤクザの幹部になった。二男の次郎(高倉健)も、長男の後を追うように母親を棄ててアウトローの世界に身を投じた。ひとり残された末っ子の三郎(北大路欣也)は、チンピラの仲間たち(岡崎二朗、石橋蓮司、志麻ひろ子)とスラムで暮らしながら病気の母を看取った。

 ムショ帰りの次郎は、かつての仲間の水原(江原真二郎)とともに組織の金と麻薬、総額4,000万円を強奪する計画をたてる。そして、必要な人数を揃えるために三郎たちチンピラを仲間に引き入れ、見事に金品強奪に成功する。
 金を一人占めして情婦の杏子(中原早苗)と海外脱出を考えていた次郎。
 一方、水原も同じ思惑を胸に潜めていたのだが、三郎が金とブツをどこかに隠してしまい意外な展開になる。三郎の、自分と母親を棄てた兄たちへの憎悪の表れだった。
 次郎と水原の執拗な拷問にも一切口を開かない三郎。壮絶な貧乏と、云われなき差別の中で育ってきた若者たちは、仲間たちとの信頼を絆にしていた。

 自分の立場を脅かす弟たちの行動に焦る市郎。
 主犯格らを突き止めた組織は次郎たちが隠れる廃工場を取り囲み、市郎は弟たちの説得を始める………。
 
    ◇

 組織に自分を売り飼われた豚と、誰も信頼しない一匹狼と、そんな二人にはなるまいと抵抗する人間。
 三國連太郎、高倉健、北大路欣也の三人が世代間闘争を繰り広げる人間ドラマは、常に、組織からはぐれた人間の抵抗を描いてきた深作映画の初期の大傑作である。

 健さんは、一匹狼だからと云ってクールなんかじゃなく粗暴な男。三國連太郎は、生き残ることに執念をもつ孤独な男。北大路欣也は、この映画がデビューとなる岡崎二朗や石橋蓮司らとともに躍動感にあふれている。
 江原真二郎の悪党ぶりも、中原早苗のクールな佇まいも、とにかく凄いエネルギーで画面に引き込まれる映画だ。

 いま観てみると、いろんな映画のシーンがこの作品のなかに思い出される。
 タランティーノの「レザボア・ドックス」は確かにこの作品の影響を受けているだろうし、チンピラたちが野犬を喰うために追い駆け回すゴミの山は「灰とダイヤモンド」だろうか。
 次郎たちが仲間割れするシーンは「いつかギラギラする日」と同じような廃工場の中で繰り広げられる。ましてやそこには、若き日の石橋蓮司まで居るのだから。この時、石橋は23歳。北大路欣也と岡崎二朗が21歳。

 三郎とチンピラ仲間が、水門のある堤防から母親の遺骨箱を放り投げる。波に揺られなかなか沈まない遺骨を見ながら「街を出たい」と歌い出す。「ウエスト・サイド・ストーリー」風のミュージカルになるのにはビックリするが、北大路、石橋、岡崎らが歌い踊る姿は悪くない。

 井の頭線の渋谷駅で行われた現金略奪シーンは、後の実録ものに見られるような手持ちカメラで撮影され、リアルな緊張感に包まれとても印象に残る。

 東映らしからぬ横書きの活字書体がデザイン的に配置されるタイトルバックがカッコよく、また、渋谷の道玄坂辺りのジャズ喫茶にあふれるジャズや、高倉健と中原早苗の情事の後に流れるジャズ・サウンドなど、全編に醸されるジャジーな音楽も雰囲気満点である。

    ◇

 さて終盤の廃工場の中。組織に寝返ろうとする水原を射殺する次郎は、いつしか三郎との血の繋がりを感じるようになる。三郎はいまこそ兄弟がひとつになる時だと、市郎に対してこちら側に戻ってこいと招く。しかし、動こうとしない兄。突入してきた組織の銃撃に、次郎も杏子も、三郎も仲間たちも、廃屋のなかで息絶える。
 金品の所在も分からないまま、ひとり残された市郎。敗残者となった市郎は、遠巻きに見守っていた貧民窟の住人たちに石をもって追われる。

 全編に漂うのは飢餓感。這い上がることがままならない者たちの叫びだ。

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Comment

ごろ寝の人 says... ""
こんにちは!いつも楽しませてもらっています。
これは、見たいですねえ。
北大路欣也21歳ですか!?
日本語字幕付DVDはないと思いますが、
DISCUSに発注しま~す!
2008.11.19 12:57 | URL | #- [edit]
mickmac says... ""
ごろ寝の人さん はじめまして。

楽しんでいただけて嬉しい次第です。

この作品は、娯楽性より作家性が強くて興行的には大失敗。
深作さんが暫くホサれていた、曰くある映画です。
しかし、以後の深作映画の礎になったのですから必見です。
ただし、かなりヘヴィーなシーンもありますので………念のため。
2008.11.20 00:11 | URL | #- [edit]

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