TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

スティーヴン・キング「ザ・スタンド」



THE STAND
原作:スティーヴン・キング
脚本:スティーヴン・キング
監督:ミック・ギャリス
主演:ゲイリー・シニーズ、モリー・リングウォルド、ジェイミー・シェルダン、ローラ・サン・ジァコモ、ルビー・ディー、オジー・デイビス、ミゲル・フェラー、コリン・メネック、アダム・ストーク、レイ・ウォルストン、ロブ・ロウ
【特別ゲスト】キャシー・ベイツ(レイ・フラワーズ)、エド・ハリス(スターキー将軍)、スティーヴン・キング(テディ)、ジョン・ランディス(ラス)、サム・ライミー(ボビー)、ミック・ギャリス(ヘンリー)

☆☆☆ 1994年/アメリカ・ABC-TVミニシリーズ/358分

    ◇

 アメリカ政府の秘密兵器として開発されたウィルス“キャプテン・トリップス”が、ある日漏えい事故を起こす。“スーパー・フルー”と名付けられたこのインフルエンザ・ウィルスは致死率99%の死のウィルスで、瞬く間にアメリカ全土に蔓延しほとんどの人々が死に絶えてしまった。
 しかしそんな中、先天的に免疫を持ち生き残った人たちがいた。
 生存者たちは、廃虚と化した世界を彷徨いながら、それぞれが“善”の共同体と“悪”の共同体へと導かれていく。
 そして、“善”のもとに集まった勇気ある者たちは、“闇の男”ランドル・フラッグに対して命を懸けた戦いに挑んでいくのだが………。

    ◇

 スティーヴン・キング・ファンの間では人気No.1にして最高傑作の呼び声高い『ザ・スタンド』の映像版がやっとDVD発売された。

 キング流のハルマゲドンが描かれたこの『ザ・スタンド』は、キングの長篇第4作目として1978年に出版されたのだが、全1200ページという途方もない大長篇のため、発行時は400ページの削除を強いられていた。
 1990年、ベストセラー作家となったキングはオリジナル通りの完全無削除版をあらためて世に送りだし、同時に、ジョージ・A・ロメロ監督による映画化が進められたのだが紆余曲折の末に頓挫。そして1994年、TVドラマとして全4回シリーズで放映されたものがこの作品。

 日本では少し遅れて字幕版のビデオとレーザー・ディスクが発売されたのだが、小説の翻訳はまだされていなかったので『ザ・スタンド』の初見はこのビデオだった。

 生存者たちのそれぞれのエピソードが、次々とひとつのことに向かっていく前半はドキドキさせられるし、後半、選ばれた4人の男たちが旅をするシーンには、死を覚悟する連帯意識と人間賛歌が謳われる。

 ただ『ザ・スタンド』は、ファンの間で人気ナンバーワンの作品であると同時に“最も映像化して欲しくない作品”でもあるらしい。それは、読者各人に出来上がった人物像があるからだ。
 原作との比較で物足りなさを感じるファンが多いのも致し方なく、それはこの映像版を見たあと原作を読んでみて理解できた。ほぼ原作通りの進行ではあるのだが、原作のキャラクター描写があまりにも膨大過ぎて、放送時間6時間にしてその面白いエピソードのディテールがなくなり原作のダイジェストにしか成っていないのだから、唐突に見えるのは当たり前。いかなるときにも賛否両論に湧く作品といえる。

 キングの映像化作品は、少ない例外(それも非ホラー物が多い)を除いて出来の良いものが少ないのが実情であり、映像化が本当に難しい。
 だから、終末世界を描いたこの作品をSFホラーとして見ていくとドツボに嵌ることになる。“善”と“悪”との対決だけを期待してしまった人には、完全に肩すかしを喰らわす結末だろう。カタルシスがない。それが評価を落としているのは間違いないのだが、映像として目に“見えてしまうモノ”と小説を読んで“感じるモノ”との差ともいえるだろう。
 闇の男の変身が稚拙だなんてことは、本当にどうでもいいことなのだ。
 希望に頼る映像版のラストが原作とは微妙に違い、ハッピーエンドではないエピローグが加えられた原作こそキングらしい。

 だから、ドラマを観たひとは、原作も読むべし。


 ◆以下、原作本について

    ◇

 『ザ・スタンド』の日本での放送は、1996年の春NHK-BS2にてアメリカと同じ全4回シリーズで放映された。そして、いよいよ日本語訳本の告知もされたのだが、翻訳作業にかなりの困難を来したようで実際に単行本が出版されたのはそれから4年後の2000年の年末、まさに 20世紀末最後の贈り物だった。



訳:深町眞理子
(1990年完全無削除版)
【文藝春秋】
上巻:定価 3,210円(税込)
下巻:定価 3,210円(税込)

 上下2巻は通常の単行本より大きいA5サイズの2段組文字。上巻だけで800ページ近い電話帳並のブ厚さだった。
 大長篇と聞いてはいたが、当時、これを通勤電車の中で読んでいたなんて考えると、何ともとんでもない日常だったのだ。
 現在は、文庫版の全5巻で読むことができる。



【文春文庫】
全5巻:定価各 900円(税込)

    ◇

 低所得層のブルーワーカーのスチュー、妊娠中の女子大生フラン、キングを投影したようなデブで嫌われ者の文学少年ハロルド(映像版はハンサム過ぎた)、大人になりきれないロック歌手ラリー、含蓄ある社会学者グレンとアイリッシュ・セッター犬コジャック、聾唖者ニックと知的障害者のトム、孤独な老女マザーと“闇の男”フラッグ、その彼に見初められたナディーン、放火魔〈ゴミ箱男〉に殺人者ロイド、ラリーとともにニューヨークを脱出する中年女リタ(映像版ではナディーンと同一化していた)、“闇の男”フラッグに毅然と立ち向かうディナ、そして狂人〈ザ・キッド〉。
 
 映像版では体感できない、じっくりと書き込まれたキャラクターたちが魅力的だ。

 そして、新たに付け加えられたエピローグによって、ダークファンタジーの様相がはっきりしている。
 “闇の男”はこのあとも、いくつかのキング作品に登場することとなる。


 

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Comment

ワトソン says... "ミスキャスト感も有ったです"
こんにちは~
原作が読みたくなりました。
文庫本2冊を購入済です。
キングは情景描写が面白くて
好きです。
2008.11.08 08:53 | URL | #- [edit]
mickmac says... ""
ワトソンさん どうもデス。

原作を先に読んだひとには、ドラマのキャスティングは不満だらけでしょうね。
フラッグはもとより、フランとナディーン、ハロルドはイメージが違い過ぎますからね。
でも、ロイドやニックなんかはピッタリな感じ。

そういえば人気の米TVドラマ『LOST』は、この『ザ・スタンド』のキャラクターを参考にしたと公言していますね。
2008.11.09 00:44 | URL | #- [edit]

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