TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

CHICAGO the musical



 舞台にひとりの女性が現れ、口上を告げてからショーは始まる。

  MURDER,GREED,CORRUPTION,VIOLENCE,EXPLOITATION,ADULTERY,TREACHERY.....
All Those Things We Hold Near and Dear To Our Hearts.
 「殺人、貪欲、汚職、暴力、横取り、不貞、裏切りの物語……そして、これは、誰もの心の奥深くにあるもの」

 オープニングとエンディングに銀幕が垂れるだけの簡素なセット。真っ黒な舞台の中心には、正面を向いて置かれたスタンドに座る15人程のジャズバンド。
 シーン転換は小道具だけ。例えば、ダンサーがカメラやメモを握れば新聞記者。いくつもの椅子が並べられて裁判所内。舞台端のハシゴが絞首刑台。20人足らずの出演者は入れ替わり立ち代わり、必ず舞台のどこかに立つなり椅子に座るなりしていて、まるで稽古場のリハーサル風景のよう。映画「オール・ザット・ジャズ」をご存知ならあんな雰囲気。衣装はひとりを除いて全員がセクシーな黒装束。そのひとり、マリー・サンシャインにアッと驚く。

 「真実は、必ずしも目に見えているとは限らない。」

 ムダのない演出と、キレのあるダンスこそボブ・フォッシーの見どころで、フォッシーダンスとは「分離の踊り」。右手と左手が顔や肩の動きとバラバラな、それでいてスムーズで繊細な動きをする独特なもので、それがとてもセクシー。

   ◆    ◆

 さて、帰国前日に観た1年ぶりのブロードウェイ「CHICAGO」。
 この舞台の要はロキシーとヴェルマのバランスで、今までに数々の有名人がロキシーやヴェルマを演じ、2003年の夏はロキシーを映画女優のMelanie Griffithが演じたのが有名だが評判はいまひとつ……。今年の2月には看守長“ママ”モートンにR&BのベテランPatti La Belleがスペシャル・ゲストとして扮している。これはスゴイ! 観たかったぁ。

 で今回は、ロキシーは去年と同じCharlotte d'Amboise。見栄っ張りでキュートな悪女ぶりはなかなかのもので、コメディエンヌぶりもよく、しっかり笑わせてもらった。反対に、ヴェルマに扮した黒人のBrenda Braxtonがイマイチ。たしかに歌唱力は凄い。しかし、肝心のダンスに魅力を感じなかった。ダイナミックさに欠け、ロキシーと並んだときの貫禄が全然ないのには困った。

 ヴェルマは、UTE LEMPER(上記写真の上段真ん中)のような女性の方がいいと思う。Marlene Dietrichのような容姿容貌で、パワフルで大スター性のある悪女でなくては、小ずるいロキシーとは張り合えない。

 また、“ママ”モートンがアンダースタディ(代役)のBelle Calawayが演じていたのだが、これも迫力不足。ベテランの彼女は日本公演でロキシーを演じていたと思うのだが、“ママ”モートンのイメージではなかった。
 エイモスやビリーといったロキシー以外の主要人物も、去年とは違う役者が演じていたのだがそんなに悪くはなかった。特に、サンシャインのR.Loweのカウンターテナーばりの声には拍手喝采だ。

 映画版が公開され日本でも大ヒットしたことで日本人の観客が多くなったのだが、映画の絢爛豪華さと比べてしまう観客もいるようだ。
 フォッシーの世界は、ミュージカルに付きものの明るく楽しいハッピーエンドな世界とは無縁だ。退廃的で、不健康で、寂しい人間たちをデフォルメした虚構の戯言が多いのだから、そのつもりで…………。

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