TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「灰とダイヤモンド」☆アンジェイ・ワイダ



POPIOL I DIAMENT
監督:アンジェイ・ワイダ
脚本:アンジェイ・ワイダ、イエジー・アンジェイエフスキー
音楽:フィリップ・ノヴァク
主演:ズビグニエフ・チブルスキー、エヴァ・クジジェフスカ、アダム・パウリコフスキー

☆☆☆☆ 1958年/ポーランド/102分/B&W

    ◇

 ポーランドの詩人ノルヴィトの詩から得た『灰とダイヤモンド』というタイトルが、何とも想像力をかきたてられる。

 永遠の勝利の暁に
 灰の底深くには
 星のごとく輝くダイヤモンドの残らんことを


 灰のように簡単に消え去ってしまうものの中に、本当にダイヤモンドのような煌めきが存在したのだろうか。

    ◇

 ドイツが無条件降伏した1945年5月8日、ヨーロッパの各地で祝典が催された日の朝から翌日の朝までの時間、愛国心に満ちた青年の孤独な“生”と“死”が描かれる。

 共産党系と自由主義系のふたつの抵抗組織があった第二次大戦下のポーランドは、ドイツ降伏のあとソヴィエト支配下で新政府が作られたが、自由と独立を目指す者たちはテロ行為という手段で社会主義に激しく抵抗をしていた。戦争が終っても、ポーランド国家再生のために同胞たちの闘いは終りが見えない状態だった。

 ポーランドのある街はずれの教会の前に、自由主義を唱えるマチェク(ズビグニエフ・チブルスキー)と同士アンジェイ(アダム・パウリコフスキー)は共産党系新政府の要人シチューカ(バクラフ・ザストルジンスキー)を待ち伏せ、自動車で通りかかったところを襲撃し射殺する。しかしそれは人違いで、殺したのは工場労働者だった。
 その夜、身を隠すために訪れたホテルでは、折しも新政府樹立の祝賀パーティが開かれ、要人たちが集うなかシチューカの姿もあった。

 ホテルのバーでマチェクとアンジェイが、ワルシャワ蜂起の時に地下組織で闘ってきた仲間たちの名前を挙げながら死を悼む。
 「あの頃のみんなは、目的を持って死んでいった」
 「いまは、ただの死だ。希望がない」

 同様にシチューカと戦友のひとりも、スペインやフランスでのドイツとの戦いに思いを馳せながら現状を嘆く。
 地下組織から押収した弾丸は、ドイツ製の弾もあれば英国製もある。
 「どちらでも死ぬのは同じだ」

 自分たちの国を作りたいという思いの者たちが、選択の違いで敵味方に分かれてしまった悲劇であり苦悩。どちらにも正義がある。
 祖国とは何か。戦いとは何か。生きるとはどういうことなのか。

 シチューカの部屋の隣に潜り込んだマチェクは、ホテルのバーで働くクリーシャ(エヴァ・クジジェフスカ)と親しくなり逢い引きをする。
 命を張った毎日のなかで、束の間の愛情を感じるマチェク。
 ふたりは夜の街を彷徨いながら、教会の墓地でノルヴィトの詩が刻まれた碑文を見つける。
 “永遠の勝利の暁に 灰の底深くには 星のごとく輝くダイヤモンドの残らんことを”と暗唱するマチェク。
 「人生は面倒だ」と云っていたマチェクの気持ちが変化していく。
 間違いで罪のない労働者を殺したことへの悔恨。逆さに吊り下げられたキリスト像を前に吐露する姿が印象的。
 「人生をやり直したい。普通になりたい。昨日、このことに気づいていたら……」
 ワルシャワ蜂起の失敗による大きな挫折感で身を持ち崩したマチェクは、クリーシャと出会ったことで生きていくことの目的を見いだすのだ。

 しかしマチェクには、シチューカを暗殺する道しかなく引き返すことはできなかった………。

    ◇

 映画のテーマとは別に記憶に残るシーンがいくつかある。

 真っ白なシーツがはためく広場で、包まったシーツに血が滲み、自分の血の匂いを嗅ぐシーン。
 シチューカを撃ったマチェクがヨロヨロと歩み寄るシチューカを抱きしめてしまうシ-ンでは、後方で戦争終結を祝う花火が上がる。理想の社会主義を目指す男と自由を求める青年が抱き合う悲劇性を象徴するシーンだ。
 そして、ゴミ溜め場で胎児のように身体を丸めて死んでいく若者の虚しさ。

 スタイリッシュな映像が数々の映画作家に影響を与えてきた。
 TV『傷だらけの天使』の最終回のラストシーンでゴミの山に亨を放っぽらかすのも、石井隆が『人が人を愛することのどうしようもなさ』で廃病院の屋上情事をシーツだらけにするのも、ブライアン・デ・パルマが『ミッドナイトクロス』でサリーの死に花火を打ち上げるのも、どれもこの映画のイメージを継承している。

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Comment

蟷螂の斧 says... "無題"
>祖国とは何か。戦いとは何か。生きるとはどういうことなのか。

太平洋戦争末期の特攻隊。
ヴェトナム戦争の若い兵士達。
祖国の為に死んでいった若者達はどんな心境だったのでしょうか?

>シチューカを撃ったマチェクがヨロヨロと歩み寄るシチューカを抱きしめてしまう

あの場面はいつまでも心に残りますね・・・。
2013.02.10 16:03 | URL | #HMPKSmtQ [edit]
mickmac says... "Re: 無題"
蟷螂の斧さん 

> あの場面はいつまでも心に残りますね・・・。

印象的なラストシーンは、以後、いろんな作家に影響を与えました。
2013.02.12 15:13 | URL | #- [edit]
蟷螂の斧 says... "ハッピーエンド"
僕は、ハッピーエンドって結構嫌いなんですよね。
この映画のようなラストの方が好きです。

またズビグニエフ・チブルスキー自身の最期もあっけなかったんですね・・・。
2013.02.12 21:00 | URL | #HMPKSmtQ [edit]
mickmac says... "Re: ハッピーエンド"
蟷螂の斧さん 

アメリカン・ニュー・シネマで育った者としては、アンチ・ハッピーエンドが心地よいものとしてありますね。

「カウボーイたち」も「ギャングたち」も「狼たち」も「カッコーたち」も「案山子たち」も「バイク乗りたち」も、反逆児たちが永遠になるにはハッピーじゃだめですもん(笑)。

「卒業」も決してハッピーエンドじゃないからこそ、深い作品と思います。
2013.02.13 13:00 | URL | #- [edit]

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