TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「浪人街 RONINGAI」*黒木和雄監督作品



監督:黒木和雄
原作:山上伊太郎
脚本:笠原和夫
総監修:マキノ雅広
特別協力:宮川一夫
出演:原田芳雄、樋口可南子、石橋蓮司、杉田かおる、伊佐山ひろ子、賀川雪絵、絵沢萠子、水島道太郎、中尾彬、佐藤慶、長門裕之、田中邦衛、勝新太郎

☆☆☆☆ 1989年/日本・松竹/118分

    ◇

 吹きだまりに巣食っているアナーキーな素浪人たちが、お互いを干渉し合わずただ酒を飲むだけの関係にありながら、ひとりの女のために命を賭して修羅場へ飛び込んでいく姿を描いた傑作娯楽時代劇で、カメラマン宮川一夫が特別参加したラスト17分に渡る浪人4人vs悪党旗本120人の大殺陣はクライマックス・シーンとして血湧き肉踊る。


 江戸下町のはずれにある一膳めし屋には、夜鷹たちの用心棒をしている赤牛弥五右衛門(勝新太郎)、飲んだくれで風来坊の荒牧源内(原田芳雄)、刀の試し斬りで日銭を得ている母衣権兵衛(石橋蓮司)、帰参の夢を持ち鳥屋を営む土居孫左衛門(田中邦衛)といった行き場をなくした浪人や夜鷹たちが集まり享楽している。店の主人は夜鷹たちの面倒をみている侠客あがりの太兵衛(水島道太郎)。
 界隈には、この街で一番色香があり一目置かれているお新(樋口可南子)や、孫左衛門の妹おぶん(杉田かおる)と恋仲の佐吉らがいる。
 源内はお新のヒモのような生活をしており、そのお新に密かに心を寄せているのが母衣。そして太兵衛と赤牛にとって、街で夜鷹たちが次々に斬られているのが心配の種だった。
 憂さ晴らしの夜鷹斬りは旗本・小幡(中尾彬)一党の仕業で、それを嗅ぎつけた太兵衛は旗本たちに殺され、お新とおぶんが小幡らに立ち向かうが捕まってしまう。
 小幡は源内を誘い出す手としておぶんを逃がし、お新を衆人環視の中で牛裂きの刑に処することにした。
 飲んだくれの源内は佐吉に金で雇われ、母衣は恋するお新のために、孫左衛門は妹と己の存在を賭け、小幡一党が待つ子恋いの森へ駆け付けるのだった………。

    ◇

 黒木和雄監督の作品の中では、70年代の『竜馬暗殺』と『祭りの準備』の2本が優れた青春映画であり群像劇として、20代の時に観た映画のなかで強烈な印象を残している。『日本の悪霊』『原子力戦争Lost Love』『夕暮れまで』も観てはいるのだが結構内容を忘れているし、『夕暮れまで』においては主演の桃井かおりと黒木監督が撮影中に起こした大ゲンカの逸話しか記憶に残っていない。
 2000年に入ってからの黒木監督は『TOMORROW 明日』('88)にはじまる戦争レクイエムを連作し生涯を終えたが、全監督作品の中で娯楽映画と言えるのがこの『浪人街』で、“日本映画の父・マキノ省三追悼六十周年記念作品”として再映画化されたものだった。

 この映画が忘れられないのは、出演する俳優たちの存在感だ。

 原田芳雄は、むさ苦しいなりの女たらしで常に酔っぱらっている態だが、時には星座の書物を読んだりして想いを宇宙に馳せるインテリ男。
 ラストは5本差しの腰刀での大立ち回り。赤銅色に光る鍛えられた身体と散切り髪を振り乱しながら旗本たちを斬って斬って斬りまくる。無頼で体力まかせの破れかぶれなところが、いかにも原田芳雄のキャラクターである。

 勝新太郎は、金をもらい宮仕えができるなら旗本たちに犬扱いされるのも辞さない卑劣漢を演じるが、夜鷹たちに文字を教えたりする心優しい浪人の顔も見せる。
 長門裕之扮する屋台のうどん屋とのワンシーンも、心根の良さを醸し出している。重量感ある芝居はさすが勝新で、殺陣シーンはないが最後に見せ場をつくってくれる。

 田中邦衛は、上司の身替わりで浪人になってしまった気弱な侍。愚痴が多く卑怯なところもあるが憎めない。この手の役はやはり巧いなぁ。

 四人の浪人のなかで一番格好いいのが石橋蓮司で、ニヒルな素浪人を演じる。
 酒の飲み方もクールで居合いの腕前も凄いのに、一大決心で樋口可南子を抱こうとすれば「心が欲しいなら私を連れて逃げて」と云われるや、何もできなくなってしまうナイーブな男の純情さを見せてくれる。
 ラストの修羅場では、居合い抜きで何十人もの旗本たちを斬りまくり、白装束を鮮血で真っ赤に染める。田中邦衛が甲冑姿で騎馬戦をする可笑しさに対して、何と格好いい見せ場のことか。

 大人のオヤジたちが活躍するのも彼等の原動力になるのはイイ女がいるからで、夜鷹の樋口可南子はとにかく色っぽい。ろくでなしの原田芳雄とのくされ縁に翻弄されてはいるが、凛としたイイ女っぷりだから男たちは立ち上がるのだ。


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