TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「東京島」桐野夏生



 桐野夏生の新刊を読んだ。

 女探偵・村野ミロのシリーズからの読者として、『OUT』や『柔らかな頬』『グロテスク』に比べると濃密さに欠けるかもしれないが、ノンストップの疾走感とエンターテインメントさでは、滅茶苦茶面白い。

 無人島に漂着したひと組の夫婦。3ヶ月後に23人の日本の若いフリーターたちが流れ着き、その後、11人の中国人グループが加わる。
 死んで行くものを除いて31人の男ばかりの閉塞された地で、たったひとりの中年女が生き抜いていく物語だ。

 生きていくために剥き出しにされる人間の醜さ、猜疑心、そして食欲や性欲の感情に圧倒されながら、どんどんページを捲るのが楽しくてしょうがなかった。

 無茶苦茶だが魅力的な登場人物たち。
 桐野夏生の書く人物って一筋縄ではいかない人間ばかりだ。

 島でただひとりの女は、島で一番太っている46才。若くないところがリアルで、島に君臨するためには何でもする小狡さや身勝手で根性悪は最たるものだけど、タフで、したたかな清子にはゾクゾクさせられる。

 「ざまぁみろ、生きていくってぇのは生易しいもんじゃねぇぞ」て具合にキレてる女に比べ、極限の中で仮想の世界に逃避したり、キチ●イになるしかない男たちが哀しいが、それも、生き抜いていくための術か。
 だから、記憶喪失のGMことユタカ、亀の甲羅を背負うワタナベ、ゲイになる最年少の犬吉、小説家志望のオラガ、“セックスマシーン”のカスカベさえも、愛らしい奴らばかりだ。

 棘を持った人間がそこら中に毒を振りまいてばかりで、とてもじゃないが感情移入がし難いかもしれないが、これが人間の本質だろうな。
 無人島での“力”関係が、コロコロ変化していく様が面白い。
 
    ◇

東京島/桐野夏生
【新潮社】
定価 1,470円(税込)

    ◆

 よくぞこんな話を書いたものだと思いきや、これは、大平洋戦争末期の昭和19年にサイパン付近の孤島“アナタハン島”で実際に起こった事件がモデルのようだ。
 名匠ジョセフ・フォン・スタンバーグが監督・撮影をした日本映画「アナタハン」('53)として有名で、主役は、2008年3月に亡くなった根岸明美。妖艶な悪女役が多かったが、どんな映画でも印象に残る女優のデビュー作だった。

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Comment

藍色 says... "No title"
はじめまして。
こちらの記事にトラックバックさせていただきました。
実際に起こった事件をモデルにしてたんですね。

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2008.06.23 03:53 | URL | #- [edit]

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東京島 桐野夏生
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