TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「ザ・マジックアワー」



監督:三谷幸喜
脚本:三谷幸喜
美術:種田陽平
撮影:山本英夫
出演:佐藤浩市、妻夫木聡、深津絵里、西田敏行、綾瀬はるか、伊吹五郎、戸田恵子、小日向文世、寺田進

☆☆☆ 2008年/日本・東宝、フジテレビ/135分

    ◇

 一日のなかで、陽が落ちた直後のわずかな時間帯がもっとも美しく見える幻想的瞬間を、映画用語で「マジックアワー」と呼んでいる。

 そして
 「マジックアワーを見逃したら………」
 「明日、また見ればいいじゃない」
 この言葉が、ひとに勇気を与えるのだ。

 三谷幸喜監督第4作目は、映画を題材にした“人生のマジックアワー”が描かれ、誰もが心優しい気持ちになれる三谷コメディの傑作である。

 ノスタルジックで、どこか映画のセットのような港町。街のボス(西田敏行)の愛人マリ(深津絵里)と恋仲になった備後〈ビンゴ〉(妻夫木聡)は、命惜しさにボスが探している“伝説のスナイパー”デラ・富樫を知っていると、口から出任せで命拾いをする。
 が、5日間の期日が迫っても富樫を見つけることができない備後は、無名の三流役者村田大樹(佐藤浩市)を替え玉に仕立てるといった奇想天外な手にでる。
 映画の主役に浮かれる大樹は、すべてが映画の撮影だと思い込んで街にやってくる………。

 ピンチを脱するために嘘をつき、その嘘がバレないように嘘で嘘を膨らませていく………この三谷幸喜が最も得意とするパターンは、ドラマとして視聴率は悪かったが『合い言葉は勇気』という傑作があり、今回はそのテイストを映画の世界にてんこ盛りしたもので、面白くないわけがない。
 4作目にして初めて“三谷流コメディ映画”を完成させたと云ってもいい。

    ◇
 

 エンターテインメントは虚構性が強いものだ。
 『ザ・マジックアワー』の舞台になる街は、大通りをはじめ、波止場、ホテルやクラブの内装にいたるまで、三谷幸喜が敬愛してやまないビリー・ワイルダーの『アパートの鍵貸します』や、ジョージ・ロイ・ヒルの『スティング』のような“映画的風景”に満ち満ちており、世界に誇れる種田陽平の見事な美術セットだ。
 エンドロールでは、その巨大セットの建築風景を見ることができる。

 そのいかにもセット然とした街を、観客がいかに不自然さを感じないでいられるか。
 それは、映画のはじめにセットというネタばらしをして、“架空の街”をアリスのワンダーランドにしてしまったことで、映画のなかのリアリティが生まれている。

 “架空の街”に住む備後にそそのかされる大樹が、身の上に起こる事すべてが“映画”のなかの出来事と思い込んでいる可笑しさや、その大樹に騙される“架空の街”のボスたちがリアルに勘違いする間抜けさも、観客にとってはどちらも“映画的風景”なのだから、セットの世界だからこその面白さになる。これが“映画”なのだ。

 佐藤浩市が売れない俳優を演じる面白さは、大真面目なバカっぷり(仮面剥がしは究極)が三流俳優という設定で生きてくるから、佐藤浩市の弾け方が大爆笑になる。
 三谷監督が作品の出来を左右すると一番気にかけていた佐藤浩市と西田敏行が初めて対面するシーンは、佐藤浩市のコメディアンぶりが想像以上の効果をあげ抱腹絶倒だ。

 映画通の三谷でもあるから、劇中映画も見どころ。
 最後の姿となる市川崑監督の出番も、市川氏の映画『黒い十人の女』をパロッた『黒い101人の女』や日活アクション映画風『暗黒街の用心棒』も、その撮影現場が映画を愛する映画人たちへのオマージュとみていいだろう。

 唐沢寿明と佐藤浩市のシーンには、かつての映画界での大物俳優と大部屋俳優のワンシーンを想像させるほどほろ苦い一場面ではあるけれど、終盤の大樹のシーンに繋がっている。

 日活アクションの悪役で定評のあった榎木兵衛は、弾着の名人として味わい深く大活躍する。

 天海祐希の喪服で拳銃を構える姿には、石井隆の『黒い天使vol.2』がダブる。しかし、三谷監督が石井作品を観ているとは思えないので偶然だろう。

 ストリート・ミュージシャン役の某タレントはご愛嬌だし、ほかのカメオ出演のキャスティングにも無駄がなく、また、三谷組の梶原善や阿南健治、甲本雅裕が光っているのも嬉しい。

 これは銀幕のお話。
 絶対に、まずはスクリーンで観るべき作品である。


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Comment

ワトソン says... "びみょーです"
こんにちは~
そそられますね~。
『合い言葉は勇気』は役所さんの作品でしたね。
見てました。監督は知りませんが面白かったです。
この作品についても多分脚本は面白いと思います。
ただ三谷演出となると・・・。

2008.06.12 10:42 | URL | #- [edit]
mickmac says... "コメディの愉しみ方"
ビリー・ワイルダーの笑い
メル・ブルックスの笑い
ウディ・アレンの笑い
北野武の笑い
………………
いろいろな演出があって
演出の好き嫌いはどうしようもないけれど………

今回の三谷演出は
徹底して遊んでいるから
突っ込みどころはあるとしても
映画へのオマージュとして楽しめます
映画への愛を感じることができると思いますよ
2008.06.12 15:28 | URL | #- [edit]

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