TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「チックタック」ディーン・クーンツ



チックタック/ディーン・クーンツ
訳:風間賢二
【扶桑社文庫】
上巻:定価 720円(税込)
下巻:定価 740円(税込)

    ◇

 久しぶりにクーンツを読んだ。

 スティーヴン・キングとともに、モダンホラーの世界を構築してきたディーン・クーンツだが、日本では帝王キングより知名度が低い。
 80年代には『ファントム』('83)『ウィスパーズ』('80)が日本でも爆発的なヒットとなり、邦訳ラッシュになり、そのめちゃくちゃハッタリを効かせたB級的ストーリー展開で面白さの虜になったファンは多いはず。
 帝王に負けるものといえば、同じように映像化作品が多いわりに、出来のいい映画が少ないからかもしれない。
 77年公開の『デモンシード』、81年公開の『ファンハウス/惨劇の館』、89年公開の『ウィスパーズ』、そして『ファントム』も98年に公開されているのだが、B級映画ファン向けの作品ばかり。それはそれでいいのだが……。
 TVミニ・シリーズとして作られた『Mr.マーダー』(98年製作)と『生存者』(2000年製作)は充分に見応えがあった。
 原作『生存者』は悪しき超訳でしか読むことができないので、ビデオ発売されている映像版をお勧めする。
 
 さてこの作品は1996年に本国アメリカで発刊されたもので、邦訳としては2008年に入って『対決の刻』('01)につづいて発売された。
 80年代の『ファントム』や『戦慄のシャドウファイア』('87)のようなジェットコースター・サスペンスの面白さを堪能できる。

 アメリカン・ドリームを叶えた主人公に、突然一体の作りかけのぬいぐるみの人形が襲い掛かる。コンピュータの画面には「デッドラインは夜明けまで」の文字。
 執拗に追い掛けてくる人形は、徐々にその姿を変え巨大になっていく。
 たった一夜の逃亡劇。

 そしてヒロイン登場。一匹の犬とともに、今度は、超常現象の中をふたりのドタバタな会話で進行するといった、これまでには見られなかったほどのコメディセンス。
 スリリングな展開を忘れても、意味あるふたりの会話が面白い。

 90年代からクーンツの書くテーマは「家族愛」が基本。どの作品も「愛と正義は必ず勝つ」のが信条。
 どんなに過酷な人生でも、前進するしかない。運命を変えることはできない。だからこそ、その先にある安住の地を求めて、怒濤のように突っ走る。

 煌めくような、ロマンティック・コメディを見るようなエンディングが素晴らしい。
 フランク・シナトラの歌を聴きたくなった。

 ぬいぐるみの正体も、ヒロインの正体も、犬の存在も、『雷鳴の館』('82)のような大ハッタリを楽しめればOK。
 この荒唐無稽なプロットを、最後まで楽しませてくれるのがクーンツ。

 “エンタテインメント”を一点に、どこまでも奇抜に、そして、スピーディに展開させる“クーンツスタイル”がこれだ。

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