TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「いつかギラギラする日」*深作欣二監督作品



THE TRIPLE CROSS
監督:深作欣二
脚本:丸山昇一
製作:奥山和由
出演:萩原健一、木村一八、荻野目慶子、多岐川裕美、石橋蓮司、千葉真一、樹木希林、原田芳雄、八名信夫、安岡力也、六平直政

☆☆☆☆★ 1992年/松竹/108分

    ◇

 1980年代には文芸作品の頻度が多くなった深作欣二が、90年代に入って、満を持して復活させたアクション作品はブッ飛びもんのギャング映画の傑作に仕上がった。

 1992年9月12日の封切初日「こんな邦画アクションが観たかったんだよ!」と、午前から午後まで館内に居座っていた。面白い映画は何度も観たくなる。入替え制が当たり前の昨今ではこんな欲求を満たすことはできないが、とにかく、ムチャクチャ格好よくて、面白いのだ。
 少しの不満があるから五つ星じゃないけれど、当然、星4つは今も変わらない。

    ◇

 銀行強盗など“タタキ”専門を生業にしている中年ギャングたち(萩原健一、石橋蓮司、千葉真一、多岐川裕美)が、1年ぶりの“シゴト”として北海道のホテルの売上げ金強奪を成功させる。
 しかし2億円のつもりが5,000万円しかなかったうえ、話を持ちかけた若者(木村一八)と共犯者(荻野目慶子)が強奪金をひとり占めして逃亡。
 ターミネーターさながらの不死身さで追い掛ける中年オヤジと、横取りを企てるヤミ金やくざ(八名信夫)とシャブ中の殺し屋(原田芳雄)らも加わり、三つ巴のチェイスが始まる。(英語タイトルが「トリプル・クロス」)

    ◇

 撮影日数131日、使用フィルム数150,000フィート、撮影カット数2,436カット、爆破火薬重量11屯、総破壊車両数126台…………当時の日本映画界にぶち込んだ衝撃は別格もので、確実に世界に通用するスケールだった。
 ただし、荒唐無稽なほどに銃撃戦やカーチェイスがダイナミックにスクリーンを疾走する深作監督の活劇映画は、ただドンパチとアクションばかりが派手な一点豪華主義的なハリウッドのアクション映画とはちと違う。それは、登場する多くの人物に命を吹き込んだ群像劇となり、映画の醍醐味が大きく膨らんでいることだ。
 これぞ、日本が誇れる“深作映画”である。
 
 ブルージーな空気が漂う雨上がりの路地裏。ひと待ち顔で佇んでいるショーケンが、寂れた産婦人科から出てきた多岐川裕美の肩を抱いて歩くオープニング。
 「知ってたの? ごめんね。油断しちゃった……」
 「10年一緒にいるんだ………また仕事をはじめる……」

 中年男女の生き様が香る。

 ひたすら中年男たちがダサくて、それでいてカッコいい。

 まずは何と云ってもショーケン。「若い女は好かねぇ」と、クールなギャングぶり。
 後半、鼻に絆創膏を貼ったショーケンの姿は『チャイナタウン』のジャック・ニコルスンを彷佛とさせる。



 ヨレヨレのトレンチコートを着てボルサリーノ紛いの帽子をかぶり並ぶ3人の中年オヤジたちは、まるでリノ・ヴァンチュラと、アラン・ドロンと、ジャン=ルイ・トランティニヤンの如くサマになっている。

 そのひとりで“オッさん”とショーケンに呼ばれる千葉真一は、若い愛人(荻野目慶子)に熱を上げ、挙句の果てに裏切られる中年男を好演。千葉真一が死ぬ間際にショーケンに呟く台詞「BLUESっぽい海の底で眠りてぇな。ROCKはもうイイや。」は、男の悲哀だなぁ。

 もうひとりの石橋蓮司の哀れさも見事だし、ショーケンに「分け前はいらないから、その百万円をください。それで夜逃げするまでしのげますから……」と、ねだる石橋の妻役の樹木希林のしたたかな存在感。

 ショーケンの情婦・多岐川裕美も、ワンシーンしか登場しない“靴屋”の安岡力也も、闇医者の六平直政も、ちゃんと人物像のバックボーンが見てとれる。

 不満のひとつはシャブ中の原田芳雄の扱いかな。もったいないくらいアッサリし過ぎ。だが、最後に見せ場をもっていくところはさすが。
 この殺し屋の存在は、のちに、プロデューサーの奥山氏が石井隆と組んだ『GONIN』『GONIN2』の、北野武&木村一八や鶴見辰吾に受け継がれていく。

 中年グループに対抗する若者ふたりは、キレまくりの木村一八と、あまりの狂いっぷりが見事な荻野目慶子。暴走気味と云われようと、中年vs若者の対比にはこのくらいのハチャメチャぶりがちょうどいい。

 ショーケンが死に際の木村一八に「24歳で死ぬんだ。好きな歌でも歌って死ね!」って言い捨てれば、木村一八は若い警官に「二十歳やそこいらで、そんなカッコして恥ずかしくないのか。ROCKしろよ。」と捨てゼリフを吐いて死んでいく。

 登場する俳優たちの多くが私生活でもスネに傷ある者たちだから、生きて(演じて)いくための壮絶さがギラギラと燃えたぎった映画になっている。

 『ゲッタウェイ』のような快感を残しながら、ショーケンが歌う『ラストダンスは私に』が軽快に流れて、映画は終る。

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Comment

tohjiro says... ""
『ラストダンスは私に』! そうでしたね、余韻があって素敵なラストシーンでしたw 荻野目慶子を使い切れる監督ってなかなか現われませんね。海潮音の彼女は素敵だったなあ。そろそろ決定打が欲しい女優さんですね。
2008.05.02 00:33 | URL | #- [edit]
mickmac says... ""
この手の映画は、ラストシーンこそキメて欲しいですからね。
ふたりのストップモーションは目に焼き付きます。

>荻野目慶子を使い切れる監督ってなかなか現われませんね。

スキャンダルが付いて廻った女優ですからねぇ。
この『いつかギラギラする日』が復帰の足掛かりでしたが、ショーケンの自伝によると撮影中もかなりアブナイ様子だったらしいです。

石井隆監督にでもお願いしましょうか(笑)。
2008.05.02 12:03 | URL | #- [edit]
showken-fun says... "早速来ました"
たまらんですね、このキャラクターでもう1本見たかったのになぁ。深作さんとの唯一の映画になってしまいましたね。こんなギャングになら、ついて行くわ~~と思ったものです(笑)。

そうそう、昔は劇場にお弁当持って行って、3回ぐらい居座って見てましたアハハ。どこも完全入れ替え制になってからは、観客動員数が実質的には増えているかもしれませんね。
2008.05.03 06:49 | URL | #jYykhXdY [edit]
tohjiro says... ""
>石井隆監督にでもお願いしましょうか
陽子とかやらせたいですねw 陽気なのに、いざとなると目が怖い陽子w

showken-funさんも書かれたように、感動冷めずに立ち去りがたく、
二度、三度とそのまま繰り返して観てしまうことが以前の劇場ではあり
ましたよね。熱狂にまみれたシンクロが今は自宅のDVDが担ってくれて
いるのでしょうが、その分劇場が冷めていっているようにも感じます。
あ、そういえば深作さんの四谷怪談も二度見しちゃったなあw そういう
パワーがある作品、多かったですねw
2008.05.03 07:53 | URL | #- [edit]
mickmac says... ""
showken-funさん

無理矢理お呼出しして相済みません(笑)。

返す返すも残念なのは、深作監督との映画製作がたった1本だったことと、言葉は悪いですが、ショーケンを使いこなせる監督がみんな故人になっていることです。
2008.05.04 00:24 | URL | #- [edit]
mickmac says... ""
tohjiro さん

陽子…………
『三つの吐息』なんかいいかもしれませんねぇ。

映画館のなかの空気が、作り手の熱気で充満したまま、席から動く事ができない作品は、いまでも数少ないとはいえ、あるんですよね。
最近では『人が人を~』でした。

2008.05.04 00:35 | URL | #- [edit]

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