TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「東方見聞録」岡崎京子



 1990年ころに初めて岡崎京子の『pink』を読んで以来、彼女の単行本を買い集めはじめた。
 これは、岡崎京子の未単行本化だった初期の作品で、1987年『ヤングサンデー』誌(月2回刊)に連載されていたもの。

 ハワイに住む海外育ちの女の子キミドリが、大金持ちのお婆ちゃんの結ばれなかった恋の相手の孫の男の子・吉太郎と、東京のいろんな場所を巡りながら写真を撮ってお婆ちゃんに送る。

 東京タワーにはじまって、銀座・原宿・吉祥寺・神田・国立・江ノ島etc……快楽的都市空間とは懸け離れたトコロにシニカルな視線を向けた、80年代の岡崎流東京見聞録である。

 同じ頃に書かれていた『くちびるから散弾銃』が、バブルに浮かれた世相観と物欲主義の3人組を描いていたのに対して、この作品は、バカ騒ぎなんて無縁な、ほんわかとした、ポップに弾けた感覚で青春を描いている。90年代に入って出現する“無表情な主人公”は、まだいない。

 90年代の岡崎作品は“性と暴力と死”“愛の空虚感”“ユートピアの渇望”“ノン・リアリティ”…………………「pink」「リバーズ・エッジ」「ヘルター・スケルター」などのような作品ばかりではなく、こんなハッピーエンドの青春ものも、また愉し。

 ストーリーよりも、岡崎京子の東京への思いが詰め込まれた雑感的展開が魅力かな。

    ◇

東方見聞録~市中恋愛観察学講座/岡崎京子
【小学館クリエイティブ/小学館】
定価 1,200円(税別)


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