TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「ジバク」山田 宗樹




 『嫌われ松子の一生』の山田宗樹の書き下ろし最新作がとても面白く、一気に読み終えた。

 …………………

 42歳の麻生貴志は、外資系投資会社で年収2000万円を稼ぐファンドマネージャー。セレブに憧れる美しい妻・志緒理と1億4000万円のマンションを購入する予定を立てていた。
 自らを“人生の勝ち組”と自任する貴志は、高校の同窓会でかつての憧れの女性ミチルと再会する。ミチルに振られた過去を持つ貴志は、自分の虚栄心を満たすためにミチルにインサイダー情報を提供し、大金を得たミチルに対して征服感を味わいながら、肉体関係も持つようになる。
 ある日、貴志の元にミチルとの情事の写真が送られてくる。

 脅迫、解雇、離婚………それが、転落のはじまりだった。

 未公開株詐欺に手を染め、同棲する女に保険金目的で焼き殺されかけ、挙げ句の果て、交通誘導員の仕事中に車にはねられ左足を失ってしまう………

 …………………
 
 “『嫌われ松子の一生』男性版”と惹句に書かれていたように、救いのない男の話である。

 一度転がるように堕ちてしまった人生を、立て直すことがどれだけ困難なことか。坂道を転がるようにして、あらゆる所にぶつかりながら、辿り着くところが自分でもわからなくなる。分相応をわきまえる自己を持ったものから見たら、自業自得な男の転落劇だが、どこにその落とし穴があるか、誰にも判らないのだから笑えない。

 松子の不幸な一生は、本人にとっては幸せな転落人生だったように見えたが、この中年男の転落はどこまでも愚かだ。女の度胸と開き直りに比べ、ただ惨めなだけである。堕ちてしまった男と女の違いがよく判る。
 
 『松子』のときもそうだったが、この作者の小説は画面転換がスピーディーで、情景描写や語り部分が映画を見ているように読み易い。だからといって文章が軽いわけではなく、逆に、ちょっとした登場人物の描写さえきわめて魅力的に描かれている。

 終章で描かれるいかにも愚かな男の行動が、女との差なのかもしれない。

    ◇

ジバク/山田 宗樹
【幻冬舎】
定価 1,600円(税別)

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