TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「魔性の香り」*池田敏春監督作品

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監督:池田敏春
原作:結城昌治
脚本:石井隆
出演:天地真理、ジョニー大倉、高橋長英、風祭ゆき、鰐淵晴子(友情出演)、青木義朗、斉藤洋介

☆☆☆ 1985年/ディレクターズカンパニー/90分

    ◇

 フリーライターの江坂(ジョニー大倉)は、秋子(天地真理)という名の女と同棲していた。三ヶ月前の土砂降りの日の明け方、五反田近くの目黒川沿いで増水した川に身を投げた女だ。
 彼女には、嫉妬深く暴力を振るう夫がいるが、離婚できないことで大阪から東京へ逃げて来たという。
 ある日、江坂が原稿書きをしていた喫茶店で、よく見かける桑野(斉藤洋介)という男の談笑を耳にする。若い美人の人妻との逢引きの話だったが、女の名前がアキコというのが気にかかった。
 翌日、桑野が自宅のバスルームで殺された。部屋に落ちていた名刺から、滝村豊(高橋長英)という男が参考人として浮かび上がった。彼は、秋子の夫だった。
 江坂は滝村を訪ねると、彼女が話したことが正反対だったのを知る。嫉妬深いのは秋子の方で、滝村と愛人の三代江(風祭ゆき)に暴力を振るっていたのは彼女だったのだ。
 江坂は、桑野を殺したのは秋子ではないかと疑い始める………。

    ◇

 愛するあまり、嫉妬と憎悪が……。
 大都会に棲む男と女が繰り広げる哀しき人間模様。
 男を貶めるために、行きずりの男を殺して罪を擦り付けようとするが、女はその行きずりの男を愛するように………。

  1982年『小説新潮』に発表された結城昌治の短編ミステリーを、石井隆が脚本を書き池田敏春が映像化したエロティック・サスペンスは、70年代の超アイドル天地真理2度目の復帰作として企画された。

 結城昌治の悲劇的な愛憎の諸相は“名美と村木”に通底するものがある。だから出来上がった映像は、どこをどう見ても石井隆の世界に変貌している。 
  
 「秋子」と「アキコ」ふたりの女の存在……“虚実”に振り回される男と“落下するヒロイン”。池田監督の発想にヒッチコックの名作『めまい』があったようだが、それより、石井隆たるところは、短編小説をほぼ原作通りに組み立てるなか、まっしぐらにラストの“落下するヒロイン”へ行き着くために、大胆にも秋子以外に真犯人を登場させた。それにより、秋子の、愛する男への絶望の深さがより深まった。

 オープニングの雨振る線路沿いの橋げた、バスルームでの残殺シーン(今回は粒子の粗いモノクロ映像)、江坂が見る悪夢のシーン………そして、クライマックスのオフィスの芝居は、まるで劇画『雨のエトランゼ』を絵コンテにしたような構図。池田監督は石井隆の世界を知り尽くしている。

 原作の最後の1頁にこんな文章がある。
 「秋子はかすかに笑った。眼も唇も、もう何も夢みていない寂しい笑いだった。」
 秋子の名前を名美に置き換えなかったのが不思議なぐらいだ。

    ◇

 『天使のはらわた・赤い淫画』でのトラブル以来、池田敏春がディレクターズカンパニーに参加したことでいくつかの企画が上がったものの、石井と池田のタッグは長いこと叶わなかった。
 後に、石井隆自らが監督をして一躍その名前を世に知らしめた『死んでもいい』の原作西村望の小説「火の蛾」の脚本も、この時分に池田監督との間で既に書き上げられていた。
 この企画も1985年のお盆映画で始まったものの、紆余曲折して正月番組になった曰くがある。

 嗚呼、それにしても残念なのはストーリーも演出も及第点なのに、寂しさも、憂いもなく、“魔性の香り”さえ漂ってこないヒロインではどうしようもない。
 どこまでも不憫な作品である。





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Comment

キリヤン says... ""
i-80「赤い淫画」、借りました
「ラブホテル」、見直しましたが、名美が働く事務所で、相米監督が映ってるところ、分かりませんでしたよi-183
2008.03.01 10:25 | URL | #- [edit]
mickmac says... ""
キリヤンさん どうも、です。

『ラブホテル』の件ですが、萬田久子さんが衣装合わせ出演されている箇所で、カメラがパーンしていく最後、尾美としのりさんだったかが劇中監督に近付く箇所なのですが、横顔が見えたところが相米監督に似ているだけの話なのです………(汗・謝・笑)

キリヤンさんなら、ご本人だったのかどうか、知っているかなと思いました。
また、ソックりさんなら、そのチャメっ気が気になるところで………

この「魔性の香り」の秋子役、キリヤンさんで観たかったなぁ。
2008.03.01 11:03 | URL | #- [edit]
キリヤン says... ""
萬田さんが出てるとこ、観ました・・・
横顔しか見えませんね・・・
多分、違うと思います・・・
2008.03.13 08:43 | URL | #- [edit]
mickmac says... ""
キリヤンさん  

最近は、すっかり石井隆作品づいていますね♪

あの劇中監督は、あえて似せているところが相米監督のシャレだと思っているのです(笑)。
2008.03.13 16:04 | URL | #- [edit]
mickmac says... "Re: 貴方は不憫な御仁です"
>天地真理我命さん

なるほど…天地真理さんにこのような熱烈ファンがいらっしゃり、現在でもファンクラブが存続しているのは存じ上げてはいましたが…別に、彼女を貶めるために書いたわけではないのですが、稚拙なものは稚拙。
そのために、彼女の台詞は最小限にとどめる工夫もされているので、エロスを感じる人には感じてもらえばいいわけです。
ただ、石井隆&池田敏春の世界を楽しみたい者には、かなり物足りなかった作品だということです。
2014.06.23 00:25 | URL | #- [edit]

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