TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「ハサミ男」*池田敏春監督作品

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監督:池田敏春
原作:殊能将之
脚本:池田敏春、香川まさひと
   (協力/長谷川和彦、山口セツ、相米慎二)
音楽:本多俊之
出演:豊川悦司、麻生久美子、阿部寛、石丸謙二郎、斉藤歩、小野みゆき、二木てるみ、寺田農、柄本佑

☆☆☆★ 2004年/メディアボックス/119分

    ◇

 美少女で頭の良い女子高校生が、喉元に鋭利なハサミを突き立てられ連続で殺された。マスコミが連続猟奇殺人鬼“ハサミ男”と騒ぎ立てるなか、犯行をくり返そうとする安永(豊川悦司)と知夏(麻生久美子)のふたり。
 そんなある夜、第3の標的に選んだ女子高校生がふたりの前に死体で転がっていた。“偽ハサミ男”が現れたのだ。挙げ句の果て第一発見者になってしまった“ハサミ男”は、警察の追求が及ぶ前に“偽ハサミ男”を探す羽目に………。

 ★以下、ネタバレや結末が想像できる記述となっています。
  ☆     ☆







 原作は、1999年に突如現れた異才の新人作家が放ったサイコ・ミステリーで、[叙述トリック]を巧妙に使ったこの作品は、第13回メフィスト賞を受賞し、その年のミステリー・ベスト10にも選出されている。

 [叙述トリック]とは小説の文章事体にトリックを仕掛け読者をミスリードする手法で、この活字だからこそできるトリックを、池田敏春監督は何なくネタ晴らしをしておいて、映像ならではの仕掛けを張り巡らした。

 “映画の中の演技は、どう巧妙にウソをつくか” 
 映画が“すべてはまやかし”ならば、この作品は、その映画の策術を見事に再現している。

 いきなり、犯人の安永(豊川悦司)と知夏(麻生久美子)を登場させる。
 なるほど!この手できたか…と納得できるほど大胆。別人格を同一画面に登場させ会話をさせた手法は、後半ふたりの会話がシンクロするシーンで効果をあげる。
 豊川悦司の存在感にも増して麻生久美子が素晴らしく、ふたりの関係がネタバレされたあとの演技に注目である。
 このトリックは原作未読の観客にも序盤で想像できるように提示し、“偽ハサミ男”の正体を終盤まで引っ張ることに成功している。

 クライマックス、知夏が同じ目撃者の日高(斉藤歩)の部屋に連れてこられたシーンでは、不安定なカメラと幾重にも繋げられるカットの数々が、その後の不気味さを見事に予感させる。

 不安定な感情をかき立てる本多俊之のサックスや、無機質なピアノの音で映画全体を不穏な旋律で包み込むサウンドは、極めて秀逸で印象的。

 ラストは原作と大きく違う。さらなる始まりを予感させる原作の終わり方に凡庸さを感じていたので、主人公の心の彷徨いにひとつの終止符を打ったこの映画版は、“ハサミ”という十字架で“贖罪”を求める少女の心の闇を解放した作品として、池田敏春監督を支持したい。

    ◇

 しかしこの作品、どうも不評だったようだ。問題は、2004年にして池田敏春監督は何も変わっていなかったと云うことだろうか。
 いまどきアフレコはないだろうって?
 映画をダメにした時代のショぼい感覚だって?
 
 1993年のサイコ・サスペンス映画『ちぎれた愛の殺人』から流れは変わらず、堂々たるB級サスペンス の画面づくりと懐古な雰囲気が受け入れられなかったようだ。
 これまでに見られた血まみれなショッキングシーンの多用を避け、色彩処理や映像効果を施しながらもミステリアスなサスペンス演出を貫いているのだが、その姿勢はいつだってクール。土砂降り&雷鳴シーンの絵作りなんて、好きな人にはたまらないのだが……。

 長谷川和彦、相米慎二らが脚本に協力していることや、ミステリー好きの映画評論家塩田時敏、北川れい子、秋本鉄次ら3氏が特別出演し、池田監督へエールを贈っていることは見逃せない。

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Comment

tohjiro says... ""
へえ、そうだったんですか。見逃せない、ですね!観たほうがいいですか?w

2008.02.20 19:19 | URL | #- [edit]
mickmac says... ""
tohjiroさんだったら自信を持ってお勧めできます(笑)。
ネタバレ読んでしまってますが、楽しめると思いますよ。
ふふっ、きっと分かってくれるでしょうね………。
2008.02.21 00:30 | URL | #- [edit]
tohjiro says... ""
ひゃあ、それはwww 了解ですw 少し暇になったら観ますねw
2008.02.21 00:34 | URL | #- [edit]

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