TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「人魚伝説」*池田敏春監督作品



監督:池田敏春
原作:宮谷一彦
脚本:西岡琢也
音楽:本多俊之
撮影:前田米造
水中撮影:中村征夫
出演:白都真理、江藤潤、清水健太郎、宮下順子、宮口精二、青木義朗、神田隆、関弘子

☆☆☆★ 1984年/ATG・ディレクターズカンパニー/110分

    ◇

 日活を退社した池田敏春が、日活同期の根岸吉太郎に誘われて参加したディレクターズカンパニー(※)の本格劇場映画の第1作目で、原子力発電所の誘致に揺れる漁村を舞台に、推進派に夫を殺された海女がたった一人で復讐に立ちあがり、原発推進派を皆殺しにするヴァイオレンス活劇である。

 夫を殺した相手に捨て身で身を任せるヒロインを、白都真理が血まみれのオールヌードで熱演し話題になったのだが、興行的には失敗。しかし映画としての評価は高く、ヨコハマ映画祭では監督賞や撮影賞を獲得している。

 鮑の猟を生業にしている啓介(江藤潤)は、ある夜、釣り人が殺される現場を目撃する。死体も上がらず事件にもならないことを気にする啓介に、新妻で海女のみぎわ(白都真理)は自分が潜って確かめてくると海に入る。
 海に潜って間もなく、突然みぎわの目の前を銛で射抜かれた啓介の死体が海底深く沈んでいく。みぎわ自身も水中銃で狙われ、失神。気付いた時は断崖の岩場に打ち上げられていた。ここまでが導入部。

 水中写真の第一人者であるフォトグラファー中村征夫の水中撮影が素晴らしい。
 人魚と見紛う女人の姿をとらえ、美と神秘に漂いながら命の輝きを放ち、そして対照的に、堕ちてくる死体の不気味さ。息を飲む映像となっている。

 夫殺しで指名手配になったみぎわは、離れ小島の淫売バーのママ夏子(宮下順子)のもとに身を寄せ、そこで事件の顛末を知る。
 町の実力者が海岸一帯をレジャーランドにしようと買い占めていた用地を、密かに原子力発電所建設の候補地として電力会社と地元出身の代議士らとで画策していた。反対派のリーダーを殺し、また、それを目撃した啓介を殺したのも、原発反対派を一掃するためのものだった。

 宮口精二扮する島民のじいさんとの束の間の和み。長い髪を裁ちバサミでざくざくと切り、その髪の毛を線香代わりにして夫を弔うみぎわ。このあたりジワっとくる。
 
 淫売宿の2階で刺客を殺すシーンでは、狭い部屋の中を白都真理がもんどり打ちながら血まみれになる壮絶さは、その後の静寂さとともに圧巻。
 画面が真っ赤になるほどの血をほとばしりながら、海に飛び込み逃げるみぎわ。
 海底で亡き夫の腐乱死体と出逢った人魚は、静かな海で荒々しい鬼神へ変貌する。

 クライマックス、手作りの銛を片手にみぎわひとり原発竣工パーティが催されている海底展望台へ乗り込み、7分間の大立ち回りを繰り広げる。見事なほどの大殺戮、皆殺し。
 「何人殺しても、次から次へと悪い奴らが出てきよる」
 駆け付けた機動隊の大軍に囲まれ「何人殺したら終わるんやろ」と呟くみぎわに、大企業や国家権力に虫けらのように殺された者たちの怒りが納まることはないのだな。
 “荒唐無稽”は承知のうえ。この荒っぽさが美しく、白都真理の激しい息遣いが、やがて妖しく聞こえてくるくらい艶っぽく、みぎわの“哀しみ”で満ちた海が“力強さ”で綺羅綺羅光る幻想的な終幕は神々しい。

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 音楽は『マルサの女』で注目を浴びたジャズ・サックス奏者の本多俊之。最初の映画音楽にあたる。海底シーンでのリリカルな旋律が耳に残る。

 原作の宮谷一彦は、60年代後半から70年代に圧倒的な支持を得ていた伝説の漫画家であり劇画家で、何冊か単行本を所蔵している好きな作家。
 1976年「漫画サンデー」に『密漁の白い肌』(全5章)というタイトルで連載されたこの話は、1978年に『人魚伝説』(全8章)に書き改められた。



 映画は、この『密漁の白い肌』をベースにして『人魚伝説』の第2章あたりまでをまとめたもので、原作の持つ不条理でシュールな感覚を排し、ヴァイオレンスな部分も仁侠映画的な殴り込みシーンに置き換え、非常に分かりやすい活劇ドラマに仕上げられた。

※ディレクターズカンパニーは、1982年に当時36歳の長谷川和彦監督を筆頭に気鋭の監督たち(相米慎二、高橋伴明、根岸吉太郎、池田敏春、大森一樹、井筒和幸、石井聰亙)が集まり発足された映画製作会社。

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