TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「天使のはらわた・赤い淫画」*池田敏春監督作品



監督:池田敏春
原作・脚本:石井隆
撮影:前田米造
出演:泉じゅん、阿部雅彦、伊藤京子、鶴岡修

☆☆☆★ 1981年/にっかつ/67分

    ◇

 新宿のデパートに勤める土屋名美は、ある日、同僚からモデルのアルバイトを頼まれるが、それはビニール本の撮影だった。名美の本意とは別に本は業界で爆発的に売れ、有名な作品となってしまう。以来、名美の周辺には無言電話やストーカーの影がちらつくようになる。
 やがて不倫関係の上司には裏切られ、職場を追われる名美は、自分のことを一途に思ってくれる青年に希望を託そうとしたが………。

 石井隆原作「天使のはらわた」シリーズ4作目。
 大都会の闇のなかに堕ちていく女・名美と、名美に魅せられる青年・村木の淡いメロドラマを、“鮮血の使者”池田敏春監督自身4作目の作品として、シリーズ一番のハードコアとして描かれた傑作で、石井氏と親交のあった池田監督の才能が十分に発揮された作品だ。

 そのとんでもなく大雑把なストーリー展開こそ劇画の世界であり、劇画誌面での大胆なコマ割りやアングルに負けないシャープなカメラワークは、何をおいても70年代石井劇画の猥雑さと、淫靡な香りを見事に甦らせている。

 地下鉄のホームを駆ける名美を映すカメラが、逆方向に流れるスリリングな映像。
 土砂降りの雨が叩き付けるジャングルジムと、横たわる名美を無情に捕らえる俯瞰カメラ。
 家主の女を見つめる村木のストップモーション画面に、村木が夢想する映像をオーバーラップさせたりと、そのインパクトある映像表現の中に、社会からはじき出された女と男のどうしようもなさが画面いっぱいにまとわり付き、とてもクールだ。

 清楚な女性から次第に自分の中の淫らな性に目覚める名美役を、冷めた表情で演じる泉じゅんが素晴らしい。“女の欲望と性の強迫観念”に捕われるやるせない女性を好演する。

 「明日の夜7時に、新宿のデパートの坂の前で」待ち合わせるラストシーン。
 「もう一度だけ男の言うことに賭けてみよう」と決意した名美の前には、理不尽な濡れ衣で瀕死の重傷を負った村木が辿り着く。
 絡み合う視線。初めて笑みを見せる名美。赤い傘を差し出しながら崩れ落ちる村木に、駆け寄る名美がブレて、ストップモーション。

 希望というバトンが断ち切られる哀切ある終わり方だが、実はこのラストシーン、準備稿では撃たれた村木がデパートの裏で血まみれになり息絶える。
 待ちわびた名美がその場を去り、現場の人だかりを「何?」と覗くところで終わったらしいのだが、正月作品で人が死ぬのはダメとクレームがつき、会社方針に折れた石井隆だった。

 その反対に、別の事案で会社と衝突した池田敏春は退社。
 この作品が日活での最後の仕事となったが、この後、長谷川和彦率いるディレクターズ・カンパニーに参加した池田敏春は、ヴァイオレンス・ムーヴィーの傑作『人魚伝説』を世に送り出し、また、石井隆とはサスペンス作品3本でタッグを組んでいる。

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Comment

キリヤン says... ""
ジャングルジムと炬燵中の赤外線が印象に残ってます・・・
初めて観たロマンポルノ・・・
2008.02.15 13:34 | URL | #- [edit]
mickmac says... ""
初めて観たロマンポルノがこの作品でしたか……
何とも………!(笑)

本文には書きませんでしたが、あの炬燵シーンはどれも強烈でしたね。
画面いっぱいに広がる赤外線の赤色は凄過ぎます。
2008.02.15 17:43 | URL | #- [edit]
tohjiro says... ""
>とてもクール
ほんとうにそうでしたね。「人魚伝説」「ミスティ」独特の空気が池田作品には
ありますねw 

>やがて不倫関係の上司には裏切られ、──自分のことを一途に思ってくれる青年に希望を託そうとした
この物語の流れは『ラブホテル』や『人人』にも連なって見えますね。
ちょっと引っかかりますww

炬燵のシーンは池田監督イジワルだから、音がほとんど無くなるんですよねw 劇場で唾呑み込めず困ったことが、今は懐かしく思い返されますw
2008.02.15 20:05 | URL | #- [edit]
mickmac says... ""
「ミスティ」は見逃しているのです。
どんなでした? 

2008.02.17 00:02 | URL | #- [edit]
tohjiro says... ""
かなり前に観たので記憶があやふやですw
今この年齢になって観直すと面白いのか、それとも…w

冒頭、永島敏行さんが電車を降りてホームを歩くスローモーションなんか、音楽にばっちり合って快かったことを思い出しますw

人魚伝説、久々に見たくなりましたw お葬式のシーンとか良かったなあw
2008.02.17 12:46 | URL | #- [edit]
kuzumochikuzuko says... "天使のはらわた・赤い淫画の中の曲について。"
はじめまして。

「天使のはらわた・赤い淫画」を検索して
こちらに辿りつきました。

早速で恐縮ですが、この映画の中で
終始流れている女性ボーカルのブルース
(JAZZ?)の曲名をご存知でいらっしゃいますでしょうか?

この曲は「野良猫ロック・セ●●スハンター」
の中でも使用されており、ずっと前から、
もし既存の曲であれば、CDなりレコードで
聴いてみたいと思っておりました。

もしなにかご存知でしたら、お教えいただければ幸いです。

どうぞよろしくお願い致します。
(●●の部分をそのまま書いてしまうと、不正投稿ということで
書き込み出来ませので、どうかご了解下さい。)
2013.12.18 00:41 | URL | #6/eqahNw [edit]
mickmac says... "Re: 天使のはらわた・赤い淫画の中の曲について。"
>kuzumochikuzukoさん
はじめまして。


 お尋ねの『天使のはらわた 赤い淫画』の挿入歌、所謂《名美のテーマ》ですが、『野良猫ロック セ××スハンター』の《ママ・ブルース》と同じですね。
 『赤い淫画』は、過去の作品に使用されたストック・テープを使用した訳ですが正確なところが判らないのが実情です。
 ぼくはこのBluesは、鏑木創さんのオリジナルと思っています。黒人ヴォーカリストみたいに歌っていますが案外日本人のヴォーカリストにも聴こえたりしますし……。
 もしくはジャズナンバーに原曲があり、著作権の関係で日本のアーティストが録音し直したものとも考えられます。
 音源CDですが、鏑木創氏のサントラ盤として『野良猫ロック セ××スハンター』がリリースされていますが、不覚にもぼくは所持していませんので確認が出来ません。申し訳ありません。

 ロマンポルノにおいては予算の問題で使い回しをすることはよくあることですし、『赤い淫画』の音楽担当の甲斐八郎という名は変名とも云われています。
 どちらにせよ、あのBluesを切ない《名美のテーマ》に使用した『赤い淫画』は、池田敏春監督のセンスが光った傑作ということになります。

 さて、あと1週間で池田敏春監督の命日となります。クリスマスが近づくと監督を思い出すようになるのは哀しいことです………。
2013.12.19 16:46 | URL | #- [edit]
kuzumochikuzuko says... "ありがとうございました。"
mickmac 様

こんにちは。早速のご返信、
ありがとうございます。

原曲があって、日本人女性が
歌っているんだとばかり
思っていたのですが、
「オリジナル」という可能性も
あるわけですね・・・。
そこには気づきませんでした。

実は、「野良猫ロック」から「赤い淫画」に
繋がったのは、ごく最近のことなんです。
偶然古本屋さんで「別冊新評 石井隆の世界」を見つけ、
久しぶりに「赤い淫画」が見たくなり、DVDを購入。
そして、映画が始まって間もなく、この曲が!

以前見た時には、炬燵やら生卵やらに気を取られ、
恥ずかしい事に、この曲は全く印象に残って
いなかったんですね。
自分でも信じられませんでした・・・。

そこから、シナリオを探し、ネット上を漂流し、
こちらにたどり着いた次第です。
(その途中で、池田敏春監督の最期のことも
知りました。)

この曲の真相(!?)、ますます気になってきました。
これからも引き続き、探し続けて行こうと
思っております。

色々と教えて頂きまして、
どうもありがとうございました。
2013.12.19 18:55 | URL | #6/eqahNw [edit]

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