TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「傷だらけの挽歌」*ロバート・アルドリッチ



THE GRISSOM GANG
原作:ジェームス・ハドリー・チェイス(「ミス・ブランディッシの蘭」)
脚本:レオン・グリフィス
監督:ロバート・アルドリッチ
出演:キム・ダービー、スコット・ウィルソン、トニー・ムサンテ、ロバート・ランシング、アイリーン・デーリー

☆☆☆★ 1971年/アメリカ/128分

    ◇

 60~70年代にかけて、男くさいアクション映画を中心に撮ってきた職人といえば、このロバート・アルドリッチだろう。

 アルドリッチの作品で最初に劇場で観た『特攻大作戦』('67)は、アクの強い個性的な俳優陣(リー・マーヴィン、J・カサベテス、A・ボーグナイン、R・ライアン、C・ブロンソン、T・サバラス、ドナルド・サザーランドetc)を縦横無尽に暴れさせた戦争アクション映画の大傑作だったが、続いて観たこのハ-ドボイルド作品は、また違った味わいのある哀切のギャング映画に仕上がっていた。
 原作は、英国の作家ジェームス・ハドリー・チェイスの処女作「ミス・ブランディッシの蘭」('39)で、実話を基にしたハードボイルド小説だ。そのあまりに過激な暴力と性描写が反発を買い、初版本は発禁処分になっている。非情なラストも問題になり、現在発刊されているものはラストを書き変えた改訂版だ。
 当時、映画を観た後にこの原作を読んでいるのだが、30年以上も前のことなのであんまり覚えていない。原作の過激さより、映画の方が好みだったのかもしれないな。

 原作より人間描写に比重が置かれているのは、儚い恋をしたことで破滅へ向かう凶暴なサイコキラーと、誘拐された娘が彼に抱く人間的な関係、そして現実の非情さ。
 極限にいる人間同士、欲望に飢えた者たちの怒りや苛立ち、心の深いところでみんな傷ついている者たちを苛烈に活写している。

 ★以下、ラストシーンに触れます。
TheGrissomGang_pst.jpg

 1931年のカンサス・シティ。大富豪の娘バーバラ(キム・ダービー)を誘拐するちんぴらギャングの話から始まる。チャールストンをバックにしたチェイス・シーンは、キッドナッピング(誘拐)・クライムの世界へ誘う魔法のロードランナーだ。 
 そして、フィルム・ノワールの匂いを充満させながら、凶悪グリッソム・ギャングの出現で二重誘拐へと発展。
 女ボスのマー(アイリーン・デーリー)を筆頭にした冷酷なグリッソム・ギャングには、頭が少々イカレたマーの息子スリム(スコット・ウィルソン)がいて、マザコンで性的不能者のスリムがバーバラの美貌に惹かれ、バーバラの屈辱の監禁生活が始まるのだが、スコット・ウィルソンの迫真の演技で、この一方的な異常愛が哀しいプラトニック愛に変貌していく過程が凄まじい。

 バーバラの父が私立探偵フェナー(ロバート・ランシング)を雇い、独自の捜査でグリッソムの悪事が暴かれていく。
 探偵役のロバート・ランシングは、エド・マクベインのTVドラマ「87分署シリーズ」('62~)でスティーブ・キャレラ刑事に扮していた。ぼくの世代で海外ドラマ好きな人には見覚えのある俳優。タフな役柄にはぴったりだ。
 ついでの話だが、キャレラ刑事の聾唖の妻の役は「グロリア」のジーナ・ローランズだった。

 一番印象に残るのは、スリムが兄貴分エディをナイフで殺すシーン。悲鳴を上げるバーバラの姿と切り返しのカットで見せるローアングル・カメラとライティングの美しさ。その構図が際立っている。

 スリムとバーバラが逃げ込んだ納屋での一夜は、バーバラにとって初めて人間的な感情をスリムに感じた瞬間。
 警官隊にボロぎれのように銃撃されたスリムの死体にひざまずくバーバラに対し、父親が放つ痛烈な言葉は「そんなにしてまで生きていたいか? 私には永遠に判らんね」

 さて、原作で問題になったラストだが、この映画にも2種類のラストが存在する。
 テレビ放送や現行のDVDでは、虚しさと哀しさでボロボロになったバーバラが、探偵フェナーの運転するロードスターの助手席から、父親を振り返る顔のストップモーションで終る。
 そして、1971年の初公開時に観たものには続きがあった。
 フェナーに送り届けられる途中、川に身を投げるバーバラ。救いのない結末のようだが、ある種、崇高な恋愛映画として終っていた。

 アルドリッチ監督が本当に描きたかったのはどちらだったのか……。

 

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