TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「夜の終る時」

原作:結城昌治
脚本:鎌田敏夫
監督:真船 禎
出演:岸谷五朗、余貴美子、鳥羽潤、京本政樹、寺田農、西岡徳馬、甲本雅裕、ウド鈴木

放送:2007年12月10日/TBS「月曜ゴールデン」

    ◇

 富士見署の菅井(岸谷五朗)は叩き上げのベテラン刑事。強行班係の最前線でいくつもの事件と戦ってきた。その菅井刑事が恐喝事件で逮捕状が出ている元暴力団員の関口(樽沢勇紀)を取り逃した。誰かが関口に警察の動きを教えていたのかも知れない。富士見署では大沢課長(西岡徳馬)や腰木刑事(寺田農)、瀬尾刑事(京本政樹)らの疑いの目が徳持刑事(根本博成)に向けられた。関口と徳持は高校の同級生だった。正義感の強い徳持は自らの潔白を証明しようと聞き込みに走った。
 その徳持が全裸死体で発見された。現場はビジネスホテルの一室。それは関口がチェックインした部屋だった。
 やはり徳持を殺したのは関口か?…
 妻子を亡くしている菅井は、恋人の千枝(余貴美子)に向かってそうつぶやいた。千枝は過去に菅井が逮捕した強盗犯・宮坂(平井賢治)の妻で、その宮坂を悪の道に引きずりこんだのも関口だった。
 菅井たちは全員で関口を追い、ついに身柄を拘束したがなかなか口を割らない。そんな時、関口の弟分・千葉(ウド鈴木)が富士見署に差し入れを持って現れた。
 しかし、その菓子を食べた途端関口は苦しみ出し、悶死する。数日後、千葉も死体で発見される……。《TBS公式サイトより引用》

    ◇

 和製ハードボイルド小説の先駆者である結城昌治の初期の代表作がドラマ化され、12月10日に放映された。2005年に撮影され、お蔵入りになっていた2時間ドラマだった。

 1963年に日本推理作家協会賞を受賞したこの小説は、ハードボイルドと云うより推理小説の傑作にあたる。
 高校生の頃、エド・マクベインやミッキー・スピレインなどの海外ハードボイルド小説が並ぶ父の書棚の中から、国内の作家として結城昌治を見つけた。そして、直木賞受賞の『軍旗はためく下に』や『あるフィルムの背景』『虫たちの墓』『殺意の軌跡』ら中から、一番タイトルに惹かれたのが『夜の終る時』だった。
 今回、ドラマ化を聞いたあとに再度読み直したのだが、いま読んでも実に面白い。人間が生きている。
 小説は二部構成になっていて、本格推理として書かれた第一部のあと、第二部では倒叙形式で犯人の独白でストーリーがカットバックしながら進行。大機構の警察内部の腐敗を描きながら、中年男の哀しさが見事に描かれている傑作です。

 今回の映像化は、かなり忠実に小説の世界がなぞられていた。悪い奴らがのうのうと生きる社会の矛盾に突き当たりながら、何も報われない刑事という職業の虚しさと、正義ゆえに陥る落とし穴に嵌まり、もがき苦しむ刑事の姿。
 そしてドラマは、堕ちていく男と女に主眼を置き、濃厚な人間ドラマとなった。
 
 自分が逮捕し刑務所に送った犯人の妻と情交を重ねる菅井警部(岸谷五朗)。
 キャリア組を軽蔑し常に自分の足で現場を踏み、地取り捜査に執念を燃やしながら、幾つもの表彰を受けてきたベテラン刑事が陥ったのは、孤独という暗闇だ。
 同じように、地道に働いていた夫が強盗犯に姿を変えたことで、悲しみに打ちひしがれた女、千枝(余貴美子)が彷徨ったのも孤独。
 メロドラマ的な陳腐なきっかけとはいえ、男と女が惹かれあい、互いを求め合い癒しあえば、社会の道徳など見えなくなる。

 後半、小説の第二部にあたる箇所では、哀れな男・岸谷五朗と、寂しさだけで生きてきた女・余貴美子の、存分に堕ちていく姿から目を離せなくなった。

 小説の千枝は二十代の女。第二部の菅井の独白は、離れることができない若い女への疑問と不信の念から、中年男の痴情が綴られる。待ち合わせに来ない女への未練。そして裏切られる菅井。声に出ない叫び声で終っている。
 
 ドラマの方は、男女の痴情がより鮮明に描かれていた。小説での若い躰に溺れた中年男といった図式を、それ以上に哀感憂うような世界に変えた脚本の妙と、それに応えた余貴美子と岸谷五朗の情感ある演技に何度も感動。

 闇という夜の終るとき、大都会の真ん中で、虚しく響く女の絶叫と、男の怒号。
 鳥肌が立つほどの悲哀だ。

 エンドタイトルロールの途中、一瞬見せる岸谷五朗の表情が忘れ難い。

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Comment

stars says... "ご訪問ありがとうございます"
訪問履歴からきました。
とても、わからやすく説明された記事ですね。
熟読しそうになりまりましたが、お出かけムードのため、さらっと読みました。
スゴイ、2005年からブログしているんですね。
今度、時間があれば拝見させて頂きます。


うつ病生活24時

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http://utudayo.com/
2008.01.03 18:24 | URL | #4iUGLb02 [edit]

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