TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「オリヲン座からの招待状」



監督:三枝健起
原作:浅田次郎(集英社刊『鉄道員』より)
脚本:いながききよたか
メインテーマ:上原ひろみ
音楽:村松崇継
出演:宮沢りえ、加瀬 亮、宇崎竜童、田口トモロヲ、中原ひとみ、樋口可南子、原田芳雄

☆☆☆☆  2007年/日本・東映/116分

    ◇

 閉館する映画館の館主が、ゆかりのある人にしたためる最後の上映会の招待状。
 別居中のある夫婦(田口トモロヲ・樋口可南子)の心に蘇るのは、子供のころ遊び場にしていたこのオリヲン座と、そこを守り続けてきたふたりの男女のことだった。

 昭和30年代初め、京都・西陣。映画隆盛のこの時代、小さな映画館“オリヲン座”も大繁盛していた。
 口数が少なくぶっきらぼうだが、誰よりも映画を愛している映写技師で主人の松蔵(宇崎竜童)と、甲斐甲斐しく働くトヨ(宮沢りえ)のところに、ある日、戦争孤児の留吉(加瀬 亮)が一文無しでやってくる。ただで映画を見せてもらった後、この“オリヲン座”で働かして欲しいと頼み込んできた。
 はじめは青年に訝しい思いのトヨだったが、松蔵の「心配いらん。あいつは大丈夫や」という言葉どおり、青年は一生懸命に働き、映画の魅力にのめり込んでいく。
 そこには、穏やかで、ささやかな幸せに満ちた三人の生活があったのだが、数年後、松蔵が病に倒れ亡くなる。

 映画館を閉めようと言うトヨに対し、留吉は「オリヲン座をほかしたらあかん」と、松蔵の意思を継ぎ映画館を再開する。
 しかし、口さがない周囲の噂と、テレビの急速な普及により、映画館へ足を運ぶ人も少なくなっていく。
 それでも、大事なものを愛し、先代との忠義を守るために、半世紀ものあいだ映画をかけつづけた留吉とトヨ。

 人とひとがお互いを大切に想い合うことの幸福感。人がものを大切に思い続けることの素晴らしさ。この映画は、そんな当たり前なことを、静かな口調で淡々と綴ってゆく。
 映画への愛と、映画を愛した人との約束を守るために、世の中に引きずられることなく、ずっと長い間、変わらず続けることの尊さが伝わってくる。

 儚げで、甲斐甲斐しく、健気に振る舞う女性を演じる宮沢りえが素晴らしい。CMでもお馴染みだが、京都弁の優しさがとても似合っている。
 そんな宮沢りえを見守る加瀬 亮もハマリ役。プラトニックな愛情表現を切なく演じてくれる。

 宇崎竜童もイイ。
 トヨが夕食の支度をしているそばで黙々と鰹節を削っている姿にしても、缶入りピースの煙をプカプカ燻らし(ぼくの父親が、生涯この両切り煙草を吹かしていたのを思いだした)、ぶっきらぼうにしゃがれた声で話す様にしろ、まるでブルースマンのような憂いさを醸し出しているのだ。

 セットやディテールのノスタルジックさだけでなく、観るものの琴線に触れてくるものに“音”がある。
 松蔵が居る「鰹節を削る音」
 トヨのこころが弾む「自転車のベル」
 師弟の義が結ばれる「映写機の回る音」
 トヨのこころに刺さる「傘を叩く雨の音」…………
 そこに存在するひとの、息づかいが浮かび上がってくる音。
 胸を突かれる巧妙な演出となっている。

 老齢になり、現代に生きる留吉とトヨを演じる原田芳雄と中原ひとみの佇まいも見事。
 ラストの映写室のなかでのふたりに、もはや言葉もない。

 原田芳雄が、ラスト上映会の舞台で挨拶する言葉に涙……………


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Comment

ワトソン says... "泣ける作品は惹かれます(^^;"
こんにちは~
この作品きになってましたが、未見です。
宮沢りえさんの声が好きなので観たいのですが、
浅田次郎作品は話の展開が苦手で迷ってます。
(作りすぎていなければいいのですが・・)
ご紹介記事がすてきなので観たくなりました。

2007.11.22 15:21 | URL | #- [edit]
mickmac says... ""
ワトソンさん こんばんは。

浅田次郎作品が苦手と言われるのは、何となく分かるような気がします。

>作りすぎていなければいいのですが……

逆にあっさりとしているので、盛り上がりに欠けるといった声も聞かれます。
トヨと留吉と松蔵との三人の微妙な関係と、トヨと留吉のプラトニックな緊張感に切なさを感じることができる作品ですが、不満は、現代に生きる夫婦のエピソードが弱いことかな……。
同じ昭和30年代を描く東宝の大作のジオラマより、こちらのような作品が好みなのでご承知おきください(笑)。
2007.11.23 00:46 | URL | #- [edit]
ワトソン says... "CMのりえさんの京都弁がいいです。"
こんにちは~
あっさりで好いんじゃないですか。
最近の邦画で面白いのはそんな感じの作品しか無い気がします。
ストーりーは予想つくし、逆に出演者がみんな繋がっていたなんて
展開よりも自然です。
大作というのは「続三丁目~」でしょうか。私もあの手は勘弁です。
漫画の方はその昔、読んでましたけど(^^;
深作監督亡き後はこのラインしか面白いのが無い気もします。

「キサラギ」のノベライズ本は傑作でした。早くDVDが観たいです。
2007.11.26 10:37 | URL | #- [edit]
mickmac says... ""
ワトソンさん こんにちは。

『三丁目の夕日シリーズ』は、日本人の原風景を描いているのが受けたのでしょうね。そして、老若男女が安心して見られるように作ってあるのが……。

大衆が“人情喜劇”…………『寅さん』を求めているのだと思います。
これは好き嫌いの問題になるのでこの手の映画を否定はしませんが、各エピソードの結末が簡単に想像できる安心感なのかなぁ(笑)。

ジオラマの見事さは、さすが東宝でした。
これは、家のテレビ画面で見るのではつまらないです。
ネタばれは出来ませんが、まるで『寅さん』のオープニングのような冒頭シーンは、東宝でしか叶えられないサプライズで面白かったです。
2007.11.26 13:01 | URL | #- [edit]

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