TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「一条さゆり 濡れた欲情」*神代辰己監督作品



監督:神代辰己
脚本:神代辰己
撮影:姫田真佐久
出演:一条さゆり、伊佐山ひろ子、白川和子、粟津號、高橋明、小沢昭一、絵沢萠子、中田カウス・ボタン

☆☆☆☆★  1972年/日活/69分

 本文はHotwax誌 [vol.6]に掲載した作品紹介を、大幅に加筆修正したものです。

    ◇

 関西ストリップ界のジャンヌ・ダルク一条さゆり本人が出演し、彼女十八番の舞台“緋牡丹お竜”“ローソクショー”や、引退興行での警察の手入れを再現しながら、社会の底辺で蠢く大衆芸の世界の女たちの、バイタリティあふれる生き方と、そこに棲むヒモたちの悲喜こもごもを描いた傑作。

 1970年前後に、大衆娯楽のストリップで観客を楽しませることに徹し、9回の“公然ワイセツ罪で検挙された一条さゆりは、全共闘世代やウーマンリブの活動家から“反権力への象徴”と祭り上げられたり、芸人としては俳優の小沢昭一や文化人らの称賛を得ていて、1972年の引退興行での逮捕では“ワイセツか芸術か”の法廷論争の主役にもなっていた。

 さて作品の主題は一条さゆりだが、映画のヒロインは一条にライバル意識剥き出しの若いストリッパーのはるみを演じる伊佐山ひろ子だ。嫉妬のあまり、一条と自分の人生を同化して生きている女の役なのだが、映画も、実像の一条と虚像の伊佐山を重ねて描くことで、ドキュメントな部分と虚構が混じり合い、不思議な錯覚を感じさせる。
 再現される一条さゆりの世界より、伊佐山をはじめとする虚構のキャラクターの世界の方がリアルだ。

 蓮っ葉で小悪魔的な顔立ちの伊佐山ひろ子は、派手なミニのワンピース姿でカラフルな日傘をさし、ヒモを従え颯爽と街なかを闊歩する。
 ヒモがいなくなれば、すぐにも次の男に乗り換えるしたたかさと、芸に対する一途さと健気さも持ち合わせる魅力的な女として、圧倒的な存在感だ。

 白川和子とレズビアン・ショーを演じるも、「レズなんて芸やない!」と花電車の芸に挑戦。強がりを見せながらも、悔し涙の泣き顔が愛らしい。
 ♪なかなかなんけぇ なかなんけぇ 頭の真ん中 皿がある……と高橋明が唄う猥歌。高橋明の唄もさることながら、衣装トランクの中で猥歌を口ずさむ伊佐山ひろ子の軽妙さと、その後の、野田の交差点のド真ん中に半裸姿で飛び出す伊佐山の潔さも忘れ難い。

 何度となく映される伊佐山が傘をさして闊歩するシーンをはじめ、警察署を釈放された伊佐山と白川和子がヒモたちと街中を言い争いながら歩くシーンなど、大阪阪急野田の辺りをオールロケしたシーンはどれも印象的だ。
 「思い上がった権力に唾を吐きかけたかった」と語る神代辰巳の反権力性は、淀川警察署の前で伊佐山が全裸になることでクライマックスを迎える。
 そして、ミルクを含ませた脱脂綿が伊佐山の股間から飛び出すラスト・カットは痛快!

 1972年度キネマ旬報ベストテンにおいて第8位。主演女優賞には、同年のデビュー作『白い指の戯れ』とともに伊佐山ひろ子が受賞した。

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