TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「女地獄 森は濡れた」*神代辰己監督作品



監督:神代辰己
原作:マルキ・ド・サド「新ジュスティーヌ」より
脚本:神代辰己
撮影:前田米造
出演:伊佐山ひろ子、中川梨絵、山谷初男、山科ゆり、絵沢萠子、高橋明、堀弘一

☆☆☆★  1973年/日活/65分

 本文はHotwax誌 [vol.6]に掲載した記事に加筆修正したものです。

    ◇    ◇

 原作はマルキ・ド・サドの『ジュスティーヌ』の翻案で、悪徳の限りを尽くし、反道徳性と猟奇性に満ちたユートピアの世界を観念的に描いている。

 ざわめく森、日常と非日常の世界を結ぶ山中のトンネルで、淑女が少女をたぶらかす幕開け。
 時代は大正。森の中に建つホテルで、絶対的な権力を持つ主人(山谷初男)と美しい妻の洋子(中川梨絵)。ある日、“女主人殺し”の無実の罪で逃げ廻っている貧しい少女の幸子(伊佐山ひろ子)を拾う洋子。表の世界では人格者の衣を着る夫婦に、犯罪者として追われる少女が飼育される。
 それは、密室的世界では悪と善の立場が 逆転する構図。訪れた旅人たちを迎える異空間に、強姦・男色・鞭打ち・死姦の快楽と猟奇に満ちた悪徳の宴が催される。
 犯される伊佐山ひろ子の可憐さは、無垢と狂気、エロスとモラルが混沌とするなか、日常の地獄から非日常の“善のヒロイン”へと変わる鏡面の美となって咲き誇っている。

 乱交のなか、相手を射殺し返り血を浴びながら死姦する中川梨絵は、鞭打たれながら秋田音頭を口ずさむ官能の表情がとても美しい。
 シーンごとの変幻自在な声色も、イントネーションも、彼女らしい存在感で魅惑的。これぞ中川梨絵の十八番。

 殺戮のあとは大テーブルに死体を転がしての宴。
 フェリーニやパゾリーニを思わせる“食”と“性”と“死”への欲望は、道徳や法律への嫌悪。
 「この世に普遍的な正義なんて絵空事。善も悪も、とるに足らないもの」と、権力を誇る男が声を荒げるその狂気。山谷初男の怪演ぶりは凄い。
 そして「悪い世の中になって……」と、外の世界の絵沢萠子は呟く。

 森のざわめき、夕陽、ローソクの灯り、大正琴、尺八、春歌、ゴンドラの唄、秋田音頭、そして終幕のラジオ体操。
 非日常世界のなかの日常が、空恐ろしい。

スポンサーサイト

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://teaforone.blog4.fc2.com/tb.php/350-fb11faf0