TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

せつなさこそ名美物語

 石井隆の“名美物語”を久々に観てからというもの、ここのところ心地よい呪縛に捕われている。
 我ながら呆れるのは、新作の某サスペンス・スリラーを観ていても、主人公の女性と彼女を慕う男との関係性や、そのふたりのラストシーンに名美の世界を当てはめていたこと。分かるひとには分かってもらえるプロットなのだ………。

 当地の映画館では「人が人を愛することのどうしようもなさ」の上映が4週目に入った。石井隆作品としては嬉しいロングランになるのだが、配給の東映サイドの要求がいつまでも『花と蛇』路線だとしたら何とも哀しい。
 今回の喜多嶋舞の熱演に水を注す気は毛頭ないのだが、ヒットを支える観客の目的が、『花と蛇』路線だけとは思いたくないのだ。石井隆映画の代名詞が『花と蛇』路線だけでは寂し過ぎる。若いファンには『GONIN』や『黒の天使シリーズ』のアクションを求める声が多いようだけど、それも良し。ただ、いつまでも緊縛や拷問のイメージではないはず。
 この名美復活のヒットから、震えるほど切ない名美の物語を、新たな女と男の愛の世界を描いていって欲しい。亡くなったM.アントニオーニ監督が描いてきた“愛の不毛”を、大胆に受け継いでいけるのは、石井隆監督しかいないと断言したい。

 今回の「人が人を愛することのどうしようもなさ」に愛の対象として村木を登場させなかったことで、今後、名美と村木の物語を危惧する必要はない。なぜなら、名美が愛する男は村木しかいないからだ。
 「人が人を愛することのどうしようもなさ」では、名美が最後まで愛して止まない男は、夫の洋介でしかなく、だから、洋介こそ村木哲郎なのだ。無償の愛を捧げる岡野は、常に名美の呪縛に捕われた恋慕の男。ただし、恋慕する男もまた、村木的な男でもあり、この辺りの石井隆描く男の存在が微妙なところ。
 『ヌードの夜』の村木がその恋慕の男だったが、名美の切ない愛の物語は、この三角関係があるからこそ成り立つのだ。


☆reviewはこちら☆
「人が人を愛することのどうしようもなさ」

★彷徨う名美ふたたび★

    ◇

 ファンなら誰もが描いてみる自分なりの名美のキャスティングをしてみよう。
 名美役って難しい。新人なら新人でもいいけれど、美人なだけではダメ……もちろん演技力を求めたい。個人的には、いつまでも余貴美子さんしか存在しないのだが、『歌謡曲だよ、人生は』のなかの一遍「ざんげの値打ちもない」では、“その後の名美”みたいな雰囲気に感激した。まだまだ充分に、名美に成り得ます(笑)。 

 さて、30代の女優で考えてみて、木村多江はどうだろう。
 彼女の写真集『余白、その色。』の表紙には、ゾクっとする程、そこに名美の姿を見いだすことができる。「日本一死体が似合う女優になりたい」と発言している彼女には、憂いと不幸が似合い過ぎるかな。
 “名美と村木と川島の物語”の三角関係を描いた長編劇画の名作『雨のエトランゼ』(1979)あるいは『赤い微光線』(1984)をモチーフにした作品を、佐藤浩市と椎名桔平か北村一輝で観てみたいなぁ。

    ◇

 覚え書きとして、これまでの土屋名美登場作品のキャスティングを列記しておく。

    ◇


・女高生 天使のはらわた(1978)
 土屋名美=大谷麻知子

・天使のはらわた 赤い教室(1979)
 土屋名美=水原ゆう紀:村木=蟹江敬三

・天使のはらわた 名美(1979)
 土屋名美=鹿沼えり:村木=地井武男

・天使のはらわた 赤い淫画(1981)
 土屋名美=泉じゅん:村木=阿部雅彦

・団鬼六 少女馬責め(1982)
 土屋名美=西川瀬里奈:村木=下元史朗

・縄姉妹 奇妙な果実(1983)
 村木=北見俊之

・ルージュ(1984)
 土屋名美=新藤恵美:村木=火野正平

・ラブホテル(1985)
 土屋名美=速水典子:村木=寺田農

・夜に頬よせ 過去を抱いた女(1986)TV
 土屋名美=紺野美沙子

・赤い縄 果てるまで(1987)
 土屋名美=岸加奈子

・天使のはらわた 赤い眩暈(1988)
 土屋名美=桂木麻也子:村木=竹中直人

・死霊の罠(1988)
 土屋名美=小野みゆき

・月下の蘭(1991)
 橋川名美=余貴美子

・ガッデム!(1991)
 土屋名美=安原麗子

・死んでもいい(1992)
 土屋名美=大竹しのぶ

・ちぎれた愛の殺人(1993)
 村木名美=余貴美子:村木=佐野史郎

・ヌードの夜(1993)
 土屋名美=余貴美子:村木=竹中直人

・夜がまた来る(1994)
 土屋名美=夏川結衣:村木=根津甚八

・天使のはらわた 赤い閃光(1994)
 土屋名美=川上麻衣子:村木=根津甚八

・人が人を愛することのどうしようもなさ(2007)
 土屋名美=喜多嶋舞 (劇中劇としての村木は山口祥行)

    ◆

 土屋名美の相手役として村木姓ではなかった男優は

『女高生 天使のはらわた』深水三章
  少年の名前は哲郎だが、名字は劇画ではお馴染みの“川島”

『赤い縄 果てるまで』阿部雅彦
  これも劇画ではお馴染みの名前“陽介”だった

『死霊の罠』本間優二
『月下の蘭』根津甚八
 名美と最多の3度共演している根津甚八は、
 最初のこの作品では“村木”姓ではなかった

『ガッデム!』小沢仁志
  ここに登場する“岡本”姓も、よく使われる男の名前

『死んでもいい』永瀬正敏

    ◇

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