TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「歌謡曲だよ、人生は」



 昭和という時代の歌謡曲には、歌があった。
 誰でもが、どこかで聞き覚えがあり、老若男女が同じように記憶の隅に止め、同じように口ずさむことができた歌である。
 昭和30~40年代の、今よりずっと輝いていた歌謡曲と日本映画には、かつて歌謡映画なる青春ドラマがあった。そこに描かれた愛と希望こそ、日本人総ての青春時代であったような気がする。

 この映画は、その昭和の時代に燦然と輝いていた歌謡曲の名曲12曲をモチーフにして、11人の監督が個性豊かに映像化したオムニバスだ。それぞれの監督が、それぞれの曲への思い入れを、どう表現してくれるのか楽しめばいいのだが、《大胆に発想し、自由な感性で創りあげた》にしては“歌”に囚われ過ぎた感があったりはする。逆に云えば、それだけ昭和の歌に力があるということだろう。その偉大な力と格闘しながらも作り上げられた映像は、青春もの、SF、コメディもあれば、ヴァイオレンスやハードボイルド、そして哀感たっぷりな叙情ものとヴァラエティに富んでいる。
 昭和の懐かしさが少し蘇り、心地よい気分にさせてくれる。

 連絡船にひとり佇む青年が発する「チッチッ」で始まる『僕は泣いちっち』は、昭和30年代の日活青春映画を彷佛とさせ、そこにある恋と夢の挫折は、いつの時代の人が見ても胸に痛いだろう。
 時空を越えた運命と恋心を描いた『ラブユー東京』のシュールさも悪くないが、とんでもなく過激な『いとしのマックス/マックス・ア・ゴーゴー』の痛快さにはぶっ飛ぶ。大胆な発想でいえばこの作品が一番。蛭子能収の本領発揮だ。
 “過ぎ去りし恋”を描いた『乙女のワルツ』に主演のマモル・マヌーはゴールデン・カップスの元ドラマー。エディ・藩のチョイ役や、彼らのレパートリー『ウォーキン・ブルース』が劇中演奏されるのが何とも嬉しいね。

 男と女の愛憎劇として、余貴美子演じる過去ある女のハードボイルドな世界を描いた『ざんげの値打ちもない』。
 中年の純愛が今ではストーカー扱いされてしまう哀しさと、その顛末にリリカルな思いを抱かせる『逢いたくて逢いたくて』。
 同年代として、ノシタルジックな思いが溢れる『みんな夢の中』。
 この3作品がマイ・ベストかな。

 『ざんげの値打ちもない』には、かの石井隆の世界を感じた。台詞らしいせりふがない展開での余さんの演技を見ていると、自然と、あの『ヌードの夜』の土屋名美を思い起こされても不思議ではない。廃屋での濡れ場は、年齢を感じさせない余さんの堂に入った演技にくらり。雨……廃屋……オートバイ……70年代の石井劇画がちらつき、“名美と村木”を想像する展開にニヤリ。

 『みんな夢の中』で、人懐こい笑顔で登場する鈴木ヒロミツには感慨深いものがあった。
 
    ◆

オープニング「ダンシング・セブンティーン」(オックス)

第一話「僕は泣いちっち」(守屋浩)
監督・脚本:磯村一路
出演:青木崇高、伴杏里、六平直政、下元史朗

第二話「これが青春だ」(布施明)
監督・脚本:七字幸久
出演:松尾諭、加藤理恵、池田貴美子、徳井優、田中要次

第三話「小指の想い出」(伊東ゆかり)
監督・脚本:タナカ・T
出演:大杉漣、高松いく

第四話「ラブユー東京」(黒沢明とロス・プリモス)
監督・脚本:片岡英子
出演:正名僕蔵、本田大輔、千崎若菜

第五話「女のみち」(宮史郎)
監督・脚本:三原光尋
出演:宮史郎、久野雅弘、板谷由夏

第六話「ざんげの値打ちもない」(北原ミレイ)
監督・脚本:水谷俊之
出演:余貴美子、山路和弘、吉高由里子、山根和馬

第七話「いとしのマックス/マックス・ア・ゴーゴー」(荒木一郎)
監督・脚本:蛭子能収
出演:武田真治、久保麻衣子、インリン・オブ・ジョイトイ、矢沢心、希和、長井秀和

第八話「乙女のワルツ」(伊藤咲子)
監督・脚本:宮島竜治
出演:マモル・マヌー、内田朝陽、高橋真唯、山下敦弘、エディ藩、鈴木ヒロミツ、梅沢昌代

第九話「逢いたくて逢いたくて」(園まり)
監督・脚本:矢口史靖
出演:妻夫木聡、伊藤歩、ベンガル、江口のりこ、堺沢隆史、寺部智英、小林トシ江

第十話「みんな夢の中」(高田恭子)
監督・脚本:おさだたつや
出演:高橋惠子、烏丸せつこ、松金よね子、キムラ緑子、本田博太郎、鈴木ヒロミツ、田山涼成、北見敏之、村松利史

エンディング「東京ラプソディ」(渥美二郎)
監督・脚本:山口晃ニ
出演:瀬戸朝香、田口浩正

☆☆☆★ 2007年/日本/130分


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Comment

路傍の石 says... ""
mickmacさんのベストは拙とほぼ同じですね。
逆に若い人が見たら何をベストに挙げるんだろうかと想像するとまた興味深いですが。

> 『みんな夢の中』で、人懐こい笑顔で登場する鈴木ヒロミツには感慨深いものがあった。

そうそう。鈴木ヒロミツさんが出てたんだ。晩年のヒロミツさん、いい顔してたなぁ~。拙も60過ぎたらあんな顔になりたいな。
2007.07.10 19:23 | URL | #3UG7ZRW. [edit]
mickmac says... ""
路傍の石さん こんにちは。

若い人たちの記事を少し見てまわってみました。
やはり「逢いたくて逢いたくて」をお気に入りの人が多いですね。妻夫木クン人気もあるかもしれないけど、完成度の高さから云っても当然でしょうね。
逆に「僕は泣いちっち」や「乙女のワルツ」の評判がイマイチで、「これが青春だ」「女のみち」のようなコメディの人気が多かったですよ。
原曲の歌詞を知っている人間と、曲を初めて聴く人がストーリーだけで感じるものとでは、かなり受け取り方が違っていて面白いです。
2007.07.11 14:55 | URL | #- [edit]

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