TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「コンフィダント・絆」



◆脚本・演出:三谷幸喜
◆音楽・演奏:荻野清子 
◆出演:中井貴一、寺脇康文、相島一之、堀内敬子、生瀬勝久
◆上演時間:160分
◆観劇:2007年5月25日 大阪・シアターBRAVA! 1階M列34番

    ◇

 三谷幸喜の新作は、19世紀末のパリに住む芸術家たちの青春物語だ。

 モンマルトルにある古ぼけたアトリエに集まる若き日のゴッホ、スーラ、ゴーギャン、シュフネッケルと、モデルのルイーズ。彼らが織りなす物語は、これまでの三谷幸喜の作品とは少し趣が異なるシリアスな空間であった。もちろんコメディであり、大いに笑わせてはもらうが、徐々に味付けが辛くなる。
 4人の男たちの関係を、ひとりの女性を投入させることで微妙に変化させていく様は、さながらサスペンスのようにハラハラさせられるが、そこに浮かび上がる男の妬み、芸術家としての嫉妬、そして欲望や挫折が一気にラストで集約され、深い悲愴感が漂うのだ。
 そして、そんな最悪なパズルが描かれたあとのエンディングに、“希望”というピースをはめ込むが如く、味わい深い余韻が残される。
 この三谷幸喜の構成の緻密さが気持ちいい。

 脚本は、役者にアテ書きする三谷幸喜の作風が見事なほどに生かされていて、個々のキャラクターが丁寧に書き分けられている。それに応える役者陣の的確な芝居も、実に決まっているのだ。

 点描画法の先駆者で、理数系で物事を考える理論家のジョルジュ・スーラに中井貴一。
 生真面目で育ちが良いのだが、友人にさえ素を見せない冷たい性格が見え隠れしたり、お茶目で狼狽する可愛い男にもなるスーラ役にぴったりはまっていた。
 4人の中で一番成功している画家であるのに、無名のゴッホの絵に嫉妬するシーンが秀逸。

 安定した生活を捨て、パリにやってきた色男ポール・ゴーギャンに寺脇康文。
 冷静に他の3人を見つめ、何かとゴッホに頼られることに文句を云いながらも、ゴッホの才能には敬意を持って接していた男。このカッコ良さは、寺脇康文で申し分ない。

 絶対的な天才フィンセント・ファン・ゴッホを演じる生瀬勝久は、常に自信喪失なふりをしながら、実は、自らが天才であることを認識している底意地の悪さを見せる。
 繊細であることで対人関係に問題があり、感受性豊かな天衣無縫ぶりを演じるには最適な役者だ。

 誠実で温厚、常に妻子を愛する美術教師であるクロード・ミシェル・シュフネッケルに相島一之。このお人好しは、相島一之だからこその役柄。
 最後のシークエンスでの彼の演技で、この作品の真の主役がシュフネッケルであり、相島一之だったのだと理解する。

 そして紅一点、カフェ“ムーラン・ド・ラ・ギャレット”の踊子志望のウェイトレスで、アトリエ専属のモデルになったルイーズに堀内敬子。
 それぞれの画家たちとのシークエンスで、本音を曝け出し傷つく男たちに『大丈夫~♪~』と歌い慰めるルイーズは、4人のアイドルでありミューズだった。
 何と云っても堀内敬子の素晴らしさは、劇団四季出身だけあっての麗しき歌声。初めて参加した三谷作品『12人の優しい日本人』でのオバちゃんキャラから、一転しての本領発揮だ。
 そして、物語の語り部でもあるルイーズの、可愛らしさと温かさを持ち備えた女性としての魅力に溢れていた。三谷組では戸田恵子に匹敵する、実に器用な女優と感じた。

 4人のミューズだったルイーズが、唯一哀しみに包まれる。ロートレックのモデルを断られアトリエに戻ってきたとき、強がりを見せながらも涙にくれるルイーズ。その時4人がとった行動……これは、息の合った見せ場だった。

 さて、この舞台にはもうひとり人物が上がっている。
 舞台下手でピアノの生演奏をする荻野清子は、オープニングの年老いたルイーズのダミ声シャンソンの伴奏からはじまり、各登場人物の彩りを音楽で奏でる重要なピアニストだった。
 時折、アドリブ的に5人がピアニストに絡むのが面白い。

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