TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「赤い鳥逃げた?」*藤田敏八監督作品

1973_Akaitorinigeta?_pster
監督:藤田敏八
脚本:藤田敏八、ジェームス三木
挿入歌:「赤い鳥逃げた?」「愛情砂漠」安田南
    「愛情砂漠」原田芳雄(コーラス:大門正明、桃井かおり)
出演:原田芳雄、大門正明、桃井かおり、白川和子、穂積隆信、殿山泰司、地井武男、内田朝雄、戸浦六宏、山谷初男、青木義朗

☆☆☆★  1973年/日本・東宝/98分

    ◇

  やることが無くなりゃ、ジジィだろ。
  誰も、俺たちを探しちゃいない。
  誰も、俺たちを待っちゃいない。
  このままじゃ俺は、29歳のポンコツだ。
  中年を飛び越えて、いっぺんにジジィになっちまうぜ!


 60年安保や70年安保といった大学紛争と反体制運動は、1972年のあさま山荘事件により集結を迎えたのだろう。そしてそれは、無頼と反逆に青春を送った時代の漂流者たちを多く生み出した。この原田芳雄の台詞が、若者たちの閉息感を語っている。
 自分たちの存在を確かめたくもがき苦しみ、ひとりでは何も出来ず、鬱積した心情を爆発させ、自滅していく若者たち。藤田敏八監督が描くのは、そんな若者たちのカッコ悪さ。
 『野良猫ロック・シリーズ』『八月の濡れた砂』で破滅の若者像を描くも、日活が閉鎖。ロマンポルノとして歩み出した日活で『八月はエロスの匂い』『エロスの誘惑』を監督した後、初めて他社で撮った作品だ。

    ◇

 無頼に青春を過ごしてきた宏(原田芳雄)は、時代に取り残されたかのように自分の居場所と目的を失っていた。彼を慕う卓郎(大門正明)は、この時代特有の“なるようになるサ”と足元しか見ていない楽観主義な若者だが、宏が居ないと何もできない半端なチンピラだ。
 不動産会社の社長夫人不二子(白川和子)と情事を重ねる卓郎と、それを金にする宏。
 映画は、いきなりロマンポルノを連想する白川和子の喘ぎ顔から始まる。
 この年、白川和子は翌週公開の『実録白川和子 裸の履歴書』を最後に結婚のためロマンポルノを引退しており、この映画が初の一般映画出演になっている。
 
 不二子の夫から金をふんだくる際に傷害を犯す宏は、卓郎が寝起きしているガールフレンドのマンションに転がり込む。マコという名の少女(桃井かおり)は、いつも上半身裸で九官鳥と暮らしていた。彼女も自分の居場所を求めている。映画の全編で裸身を魅せるポッチャリとした若き桃井かおりである。
 原田芳雄がギターをつま弾きながら、ボソボソと「愛情砂漠」を口ずさむ。桃井かおりの眩しさと同様に、この虚無な感じが妙に記憶に残るシーンである。
 これに続く安田南の「赤い鳥逃げた?」は、卓郎とマコの自転車の相乗りシーンに軽快に流れ、『明日に向かって撃て!』を思わすワンシーンとなっている。

 成すこと全てが腑甲斐無い男たちは、マコを連れて宛のない旅に出る。
 行き着いた先はひなびた温泉街。しかし、ここでも白けた時間が過ぎていく。未熟な卓郎とマコの白黒ショーではゼニにもならない。
 やり場のないうっぷんを車の暴走で晴らす宏と、卓郎とマコのセックス・シーンがシンクロする画面には、安田南が歌う「愛情砂漠」が使われる。これは、先の記事【サントラ盤「赤い鳥逃げた?」初CD化】において、記憶違いの記述があったので訂正しておく。この安田南の「愛情砂漠」は、サントラ盤には収録されていない。

 マコが誘拐話を持ちかける。マコの本当の名前は石黒京子といい、大富豪の令嬢だった。マコ自身を誘拐する計画に、3人は久しぶりにゾクゾクと胸が騒ぐ。
 しかし、東京に戻った3人を待っていたのは、大人たちの思惑と思い通りにいかない現実だった。
 みっともなく不様な主人公たちがいて、恰好悪い大人たちがいて、傍観する群衆たち。パトカーに追跡され、3人の乗る車は自分たちの死に場所へと暴走する。

 埋め立て地に集まる野次馬のなかには、助監督時代の長谷川和彦の顔が見える。また、同時期に撮影されたロマン・ポルノ『エロスは甘き香り』で桃井と競演した伊佐山ひろ子が、歩行者天国のシーンに顔を出している。

    ◇

 アメリカン・ニューシネマの如く、体制に楯突き全員が死んでしまう主人公たちこそ時代のシンボルでもあるのだが、シナリオ段階で別のラストシーンが存在したような記述が残されている。
 映画のサントラ盤のライナーノーツや当時の某映画評論家の文章からは、本編とは趣の違った終幕が見えてくるのだ。

 「最後の銃撃戦にマコの姿はない。宏たちは、横浜桟橋のコンテナ置場でまんまと身代金をせしめ、別の場所で待ち合わせをしているマコの元へ逃走するが、途中で警官隊との銃撃戦の末、宏と卓郎はあえない最後をとげる。
 待ちぼうけをくったマコは、イライラと痴漢防止ブザーの紐を引くと、夜空に不快音だけが響き渡る…………。」

 実際に公開された映画の前半部には、戸浦六宏扮する制服警官がマコのマンションに現れ、痴漢防止ブザーを押し売りするシーンがある。何とも奇妙で、滑稽なシーンだけが残されていた。

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